米国にはある特殊な環境下で生きている若い世代が存在する。見かけは一般の若いアメリカ人と大差はないが、ひとつだけ大きく違うのは、市民権がないことだ。なぜなら、彼等は幼少の頃、米国に移住した不法移民の親に育てられたからである。親が不法移民であっても、米国で誕生した子供は自動的に米国の市民権を取得するが、生誕数ヶ月後に、乳幼児として不法移民の親に連れられ入国し、米国で成長した子供達には市民権はない。彼等の殆どは成長すると、米国が自分の国であると信じるようになる。そんな彼等にとって、不法移民のレッテルを貼られることは、究極の苦痛であるはずだ。
最近、ニューヨークでは、こういう境遇で育った数百万の学生らが、低賃金の仕事を探すため、苦戦していることが報じられている。彼等は、学生ローンの申し込みにさえ困難をきたしているため、仕事を探している状況であるようだ。しかし、現実はただでさえ失業者が多い現在、職を得るのは、かなりの至難であり、市民権のない学生達の生存競争は尚更厳しい時代だ。彼等の中には、ドリーム法案の制定に向けて、ロビー活動を行っているグループもいる。ドリーム法案は、2001年に数名の上院議員に提案されたものであるが、未だに議会を通過していない。この法案は、制定以前に最低6年間米国で生活しており、勤勉で高等教育の卒業者または、一定の期間に軍隊で奉仕した者に永住権を与えることになっている。この法案が制定に至らない理由も含めて、オバマ政権下の不法移民政策は各方面から批判されている。
オバマ氏は、2011年1月の一般教書演説で、不法移民流入を防ぐため、境界線の警備の強化を支持する一方で、不法移民の子ではあっても、米国で高度な教育を受けている若者につい ては、その将来を保護する声明を行い、憲法を支持する立場を明確にしている。また、「才能もあり、米国の国旗に忠誠をつくしている若者は、国を豊かにす る」と考えていて、「国外追放して、米国と競争する立場に追いやるような意味のないことをするより、研究分野や新たなビジネスの開発に貢献させる方が賢明である」と述べ、「国外追放するのはやめよう」と呼びかけ、オバマ氏の不法移民問題に対する立場を明確にした。
あの演説から、約1年半が経過した今日、このような不法移民のレッテルを貼られる学生に同情的な移民支持者は、ある種の危惧を抱いている。共和党にコントロールされているオバマ政権が、かってないほど不法移民の追放に厳しい政策をとっているため、場合によっては、彼等も国外追放のターゲットにされてしまう危険性を指摘している。『米国移民関税執行局(ICE)』によると、2011年度の不法移民国外追放は約40万人で、歴史上最大数に達したと報じている。この中の55%は〔殺人、放火、強盗〕などの重罪または軽罪で有罪に問われたケースである。2008年に比較すると、このような不法移民の犯罪者の国外追放は89%増えているらしく、不法移民の辛酸な状態が米国の経済状態を反映する鏡になっている。