医療保険改正法の撤廃騒動

驚くことに、28日合憲となったばかりの医療保険改正法を執拗に拒絶する共和党議員らは、7月に撤廃の投票を行うと発表した。ロムニー氏は、判定後のコメントで、「昨日悪い政策だったものは、今日も悪い政策で、昨日悪かった法は今日も悪い法だ」と述べ11月の大統領選に勝利したら「真っ先にオバマケアを撤廃する」と公言した。しかし、複数の共和党議員らは、選挙日の翌日まで待てない様子で、7月11日に下院で投票することを決めたようだ。これを、有権者に対する演技だと言う人達もいる。なぜなら、彼らは撤廃の投票をしても、そう簡単には成功しないことを知っているからだ。

現在、下院は総計435名、上院は総計100名の議員で構成されている。党別の内訳は、下院の民主党議員255名、共和党議員179名、空席1名である。一方、上院議会は、民主党議員56名、共和党議員42名、無党派2名である。撤廃のプロセスは、下院で投票し、218名〔2分の1プラス1名〕以上の投票があった場合、下院で可決したことになり、次ぎに上院に持ち込まれる。上院でも51名〔2分の1プラス1名〕の投票があれば通過するが、可決に至るには、上院議員60票のクローチャー(Cloture)と呼ばれる動議可決に至る必要がある。下院で218票以上の過半数を獲得する可能性はあるが、民主党でコントロールされている上院で60票を得ることは相当難しい。仮に、両院で可決しても、大統領には拒否権があるため、オバマ氏の在職中は署名には至らない。この拒否権を覆すためには、更に、下院270票、上院67票が必要になる。

医療保険改正法の撤廃に向けた下院での最初の投票は、2011年1月にすでに実施されていて、下院で245対189票で通過している。しかし、一度も上院で投票に至ったことはない。彼等は、ロムニー氏が当選しなりかぎり、撤廃に追い込むことは、ほぼ不可能であることを熟知しているのである。従って、日程まで早々と決めて、「撤廃」、「撤廃」と騒いでいるのは、28日の最高裁の判定に落胆した有権者に対する一種の演技である。たとえ、ロムニー氏が大統領に就任し、本人が率先して撤廃に追い込む努力をしても、上院議員60票の動議可決に至ることは難しいだろう。

また、医療保険改正法はすでに2010年には法として一部が施行されているため、ロムニー氏が撤廃した場合、コストがかからない予防的診断や治療などを含む他のメリットがすべて奪われることになる。更に、子供は26歳まで親の保険に加入できる条項、病気を患っている人に対する保険会社の差別を禁止する条項は、すでに効力を発揮しているため、これを撤廃するとなると、現実的にはかなりの混乱が生じるはずだ。ロムニー氏は、マサチューセッツ知事時代にオバマ氏の医療保険改正法と似たような「ロムニーケア」を制定している。頻繁に立場を変える傾向のある本人は、最終的には、何らかの修正を加える程度に落ち着くのではないかとの楽観的な見方もある。この法を支持する議員らは、アメリカのように豊かな国が国民全員に医療保険を提供できない状況は世界の恥であるとして、合憲に至ったことを「任務は全うされた」という表現で、撤廃の動きを一喝している。

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