日間の共和党全国大会の様子は、米国の午後4時から10時位までの範囲でテレビ放映された。最終日の30日は、会場が最も熱気に溢れているような印象があった。最後の登壇となったロムニー氏の共和党大統領候補受諾スピーチの内容は、スピーチ・ライターが作成した、見事に洗練されたものであることが明確に伝わった。
最初に共和党大統領候補に認定されたことを光栄であるとし、それ以上に責任は重い、と語った。また、家族とのふれあい、夫婦間の強い絆と愛、伝統的な家族の重要性、特に、両親に受けた愛情と影響力について、モルモン教との深い関わりなど、個人的な人生と体験を通して、家族、共同体、信仰の強さが自分の人生の基盤であることを時間を割いて語った。更に、すべての世代の人々が人生の向上を願って生きていると語り、宗教、心の自由、人生の自由などを強調し、「アメリカ人は常に未来に特別な思いを馳せている」と語った。そして、米国は移民の国であり、移民はこのアメリカの地でより良い人生を築くことができることを信じていた。しかし、希望に満ちてスタートしたオバマ氏の当選後に比較し、現在、アメリカ人はより良い未来を築くことができるのかどうか不安であり、現在の状況は、我々が期待したものを得ていないと述べた。また、オバマ大統領は約束を果たさず、「失望と分裂への道を与えた」と述べ、「アメリカを正しい方向に導かなかった」と批判した。また、最初に小さな会社の設立から開始し、投資会社ベイン・キャピタルを設立したことなど、自分のビジネス経験についても語った。しかし、「オバマ氏はビジネス経験がない」、また、大統領再選キャンペーンは、ロムニー氏の「ビジネスの成功を攻撃している」と述べ、自己守備的な批判を展開した。
更に、オバマ氏の医療保険改革法〔オバマケア〕、メディケア、雇用、エネルギー政策などが、経済成長を妨げるとして、オバマケアを撤廃し、1,200万人の雇用拡大を予定していると語り、その経済政策として、次の5つのステップを打ち出した。
(1).2020年までに、自国で利用できる石油、石炭、ガス、原発、再性可能エネルギーなどを最大限に活用し、北米は輸入に依存しない。(2).仕事の技術訓練の機会を提供する。全ての両親は子供達の学校の選択が可能であり、すべての子供に教育の機会を与えるべきである。(3).新たな貿易協定を増やすことで、ビジネスを促進する。貿易の不正慣行を躊躇しない国は、紛れもなく影響があるはずである。(4).アメリカは米国に投資する全ての起業家と雇用主を保護し、ギリシャのような崩壊を防ぐため、赤字を減少し、予算調整を可能にする。5.中小企業を擁護し成長を促す。そのためには、企業に減税し、中小企業に障害となっている規制を簡素化または近代化させる。その手段として、費用のかかるオバマケアを撤廃し、代替えを行う。
また、中絶や同姓愛結婚の社会問題に関しては、「生命の尊厳を重視する」とし、伝統的な結婚を名誉とし、宗教の自由を保証すると語った。外交政策に関しては、オバマ大統領は、オサマ・ビンラディンを打倒したが、イランの核兵器脅威を解消していないため、アメリカはまだ安全ではないと述べた。また、キューバのカストロに対する制裁を緩和したが、イスラエルのような同盟国を投げ捨てたと批判。更に、中国からの借金を否定した。最後の瞬間では、声のトーンが高く、早口で、アメリカ合衆国は貧困者と病人を大事にし、年配者を尊敬し、援助の手を差し伸べると述べた。大統領に選出された場合、よりよい未来のために精魂こめて尽くすと語った。
ロムニー氏のスピーチは概して守備的であり、従来、弱い分野と言われていた女性、移民、弱者、中流家庭を意識して準備されたものであるとの印象があった。人間としての自分自身をオープンにし、次期大統領として、経済の回復、雇用の拡大を可能にする自信をアピールすることが主旨であったと思われる。最初の段階で、家族や地域の磐石さが米国の強さの原点であることを強調した点は、伝統を重んじる保守派に受けたはずである。一方、数回の世論調査で、国民がロムニー氏に親しみを感じていない、オバマ氏の方を良く理解できるなどの評価を含め、「世間離れ」している「弱者に関心がない」と、否定的な印象があるため、弱者や中流家庭の支持も得たい意志が感じられた。
オバマ氏のビジネス攻撃のコメントに関し、歴史上、全ての大統領および副大統領候補者は、積極的に過去10年以上の納税申告書を提出しているため、オバマ氏は、数週間前、「せめて、5年間の納税申告書を提出してほしい」と交渉を試みた。しかし、メディアのインタピューに応じた妻のアンは「納税申告書を多く提出すればするほど、攻撃されるので出来ない」ときっぱり断った。結局、既に公表された2010年の所得申告書と今後提出される2011年の2年間分だけという結果になっている。このアンの発言に対して、なぜ、過去の所得申告書の公開が、更に攻撃の的になることを予測できるのか、疑問視する声がある。
ロムニー氏の5つのステップの政策は、(1)を除いて、ほとんど期間を明白にしていない。また、(2)の教育に関しては、理想論を述べただけで具体案を提示しなかった。(3)の貿易に関し、「不正を行う国」とは、中国に対する牽制であると思った。(5)の説明では、オバマケアを撤廃した後、どのような医療保険制度と置き換えるのか、その具体性は示していない。
また、ロムニー氏は「オバマと違って、僕は中流家庭には課税しない」と述べたが、「中流家庭に課税しない」のはオバマ氏の政策である。この発言に関し、大会後のメディアは、その点を指摘した。億単位の財産を所有していると言われるロムニー氏が考える「中流家庭」とは一体どの程度の所得基準を意味するのか疑問である。中絶と同姓愛者の結婚に対しては、反対の意志を明確にした。外交政策では、世界のリーダーとしての米国の強い立場を維持させたい意志を表示し、イラン核兵器脅威に対抗し、およびイスラエルを強く支持する立場を明白にしたスピーチであった。