山火事、竜巻、洪水、ハリケーンなど自然災害が増えている近年、米国の保険会社は、保険ビジネス経営の真価を見直し初めている。11月4日の『ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)』によると、保険会社はこのような災害が発生する度に保険支払請求に数十億ドルの支払義務がある。ハリケーン被害のコストが増加していて、特に、人口密度の高い沿岸地域では不動産の被害請求が毎年増大していると、保険会社はいずれも共通の意見を述べているようだ。
NPRによると、今後数年間でより頻繫に、より厳しい気象現象が発生するかどうかについては保険会社の意見は様々である。グローバル企業の為のジオ・リスク研究センターの所長ピーター・ホッピ氏は、ハリケーン・サンディが発生する直前、北米は、「一部の温室効果ガス排出に起因する自然災害の増加に直面する」ことを警告した報告書を提出していたことが判明。ホッピ氏は「気候変動は大きな問題であり、将来、損失の引き金になる」と話している。また、ハリケーン・サンディは気候変動が原因であると断言できる証拠はないが、保険会社が人工的原因による気候変動を信じるかどうかは別問題であると述べている。彼の報告によると、過去30年間、北米で天候に関連した事故はほぼ3倍に増大している。今後更に増え続けると、保険料が長期的に増加するようになるとし、間違いなく、50年、100年後にはビジネス形態は変わり、「長期的には保険に加入できないことになるかもしれない」と述べている。
しかし、業界全体がこのような見解を受け入れているわけではない。長年リスク管理コンサルティングに従事している専門家のカレン・クラーク氏は、どれだけ我々がハリケーン災害を経験し、どれほど多くのハリケーンの記録があるのか疑問であると述べている。文書化されたハリケーンの中で最も経済的損失が高かったハリケーン・カトリーナの災害後、「温暖化サイクルはより強大なハリケーンを発生させると予測されたがその予測は外れた」と指摘。
米国のリスク・モデリング主要会社の社長ビル・キオ氏は、現在ハリケーンの活動は統計的には低い期間にある。しかし、カトリーナ後、強力なハリケーンが幾つか米国に上陸したと語っている。つまり、サンディは、保険会社が天候リスクを評価する方法を左右しないと言っているわけではないとし、リスク・モデルは常に変わっていて、情報がある時は変わるとキオ氏は述べている。今回のサンディは、過去幾つかのハリケーンと同様、海の方向に進行せず、V字型の内陸である北東部を襲ったため、珍しいことであったと述べた。キオ氏によると、サンディから得た情報は、将来のリスク可能性の見方を形成したが、今後5年間で、何回ハリケーンが発生し、どれくらいの被害を蒙るのかだれも予測できないと指摘。
ハリケーンは保険会社にとってコストの観点から最大の関心事になっているようである。確かに、今回のサンディはカトリーナに比較して被害総額は約半分であり、死亡者数も約1800対100人と規模は違う。言語学者のノーム・チャムスキー氏をはじめ、天候変動に関する議論が米国の政治に欠如しているとする批判の声が昨年から起きている。チャムスキー氏は基本的には、米国はこのような課題の科学分野に無知だと述べている。特に10月20日前後は、11月26日からドーハで開催される国連の地球温暖化サミットを前にして、多くのメディアは一連の選挙キャンペーンで、候補者らが天候変動の課題を殆ど提起しないことを指摘している。米国は、気候変動の努力に関し、世界的に遅れているのは確かである。サンディの被害を目前にしたニューヨーク市長のブルンバーグ氏は、天候変動に対処する政策の強化をオバマ氏に期待しているようである。必ずと言っていい程、毎年どこかで竜巻や山火事が発生し、更に最近の異常気象、頻繫に発生する旱魃と洪水などに直面する米国は、気候変動にもっと真剣に取り組む時代に直面している。保険にさえ加入できないような時代になってからでは遅い。