オバマ大統領と下院議長ジョン.ベイナー氏は、双方とも、財政の崖の危機を脱するため、何とか年内に決着をつけたい一心で、ほぼ独断的な交渉をすすめたが、お互いの駆け引きに失敗し、結局、なんの進歩もないまま、 クリスマスを迎えることになった。
富裕層トップ2%の増税について、長い間、合意に達しないため、お互いにあせりがあったと思われる。ベイナー氏は、最初、全ての国民に対する増税はゼロを主張していたが、今週火曜日、年間収入100万ドル以上の富裕層に増税するプランBに変更した。このプランなら、約99%の国民は影響を受けないとして、下院議会の共和党議員には十分支持されているため、下院で通過させると自信満々であった。20日の『AP通信』によると、ベイナー氏はこのプランBにより、今後10年間で3,000億ドルの歳入を推定していて、更に1兆ドルの出費削減を提案していた。しかし、20日の夜、 共和党の支持数を十分得られなかったため、下院で投票することさえ不可能になり、プランBを突然キャンセルするという、面目丸つぶれの茶番劇をみせた。
オバマ氏も、当初、高所得者に対する増税は、年間所得250,000ドル以上をターゲットにしていたが、切羽詰まったあげくの妥協策として、これを400,000ドル以上の所得者に切り上げた。また、税収の目標を最初の1.6兆ドルから1.2兆ドルに減少させた。更に、メディアケアとメディケイド、公園などの公共施設、輸送、教育などの幅広い分野で連邦政府出費の削減を10年間で 8000億ドル提案していた。20日の『ワシントン.ポスト』によると、 オバマ氏は、もうひとつの重要な妥協案として、社会保障制度に連鎖方式による消費者物価指数を導入することを提案していた。これは、インフレーションによる物価調整方式であり、例えば、1935年に生まれ、2000年に65歳で退職した人に適用した場合、2013年に支払われる 社会保障額は、この方式を導入しない計算では年間総額23,832ドルであるが、導入した場合22,560ドルに減少する。これは5%以上の削減で、経時的に削減率が上昇するシステムであるとのことである。しかし、オバマ氏のこのような妥協案も民主党から批判されていた。
ブッシュ減税が12月31日で期限切れになるため、自動的に国民全員が増税に直面する「財政の崖」を避けるため、ベイナー氏は21日までにプランBを下院議会で通過させ、次に上院の民主党議員を説得して通過させることで、年収100万ドル以上の所得者を除く全国民に対して、引き続きブッシュ減税を延長させることができると、ベイナー氏は楽観的であったが、結局多くの共和党議員が反対したため、全てが水の泡になった。
オバマ氏も、ベイナー氏のプランBには同意しなかったため、仮に、下院、上院議会で通過しても、オバマ氏が拒否権を発動すると民主党議員らはコメントしていた。 オバマ氏の拒否の理由は、10年間で2兆ドルの赤字削減をするという協定に対して、ベイナー氏の税制計算は、数百億ドルのギャップがあるため、望ましい経済回復は予測できないと主張したためである。民主党は、何が国民のためにベストなのかを考慮していない独断的なゲームで時間を無駄にしているとベイナー氏を批判した。 上院多数派院内総務のハリー. リード氏は、ベイナー氏の案は受け入れられないとコメントし、「無意味な政治的妨害」であると批判した。一方、ベイナー氏は、自分ができることはやったが、オバマ氏は我々が直面している国の大きな問題で自分の党に立ち向かうことに不本意であると批判。
クリスマス前に合意に達することが目標であったが、その後、オバマ氏とベイナー氏は、お互いに顔を合わせておらず、今後の交渉スケジュールも予定していない。ベイナー氏は共和党のリーダーシップを失い、全て機能不全のパターンになったようである。昨日、夕方の記者会見で、オバマ氏は、 「救いのない楽観主義者だと言われても構わない」と語り、中流家庭の増税を防ぐため、200万人の失業保険を守るため、経済成長と赤字減少に向けた土台を整えるため、議会と共に前進しなくてならない。それは達成可能なゴールであり、今後10日間で、成し遂げると語り、「誰もが100%望み通りにはいかない」と述べた。 ほぼ独断的な両氏の妥協案は、ほとんど白紙にもどり、財政交渉の茶番劇は拍手ひとつなかった幕をひとまず閉じた。オバマ氏は、クリスマス休暇のため、昨夜家族と故郷のハワイに旅立った。今後10日間で解決するとは思えない状況である。