不明な点が多いボストン爆破テロの捜査は着々と進んでいるようであるが、日増しに被害者の数は増え、最初の176人から現在では280名前後と言われている。生存した容疑者ジョカァルの病室で尋問にあたっているFBIや他関係者の質問内容については公表されていないが、複数のメディアの取材に基づくその後の情報によると、かなり進展があったようだ。
しかし、動機についての報告は、ほとんど憶測であり、真相を掴むことは困難であると思われる。その要因として、最も肝心な容疑者であった26歳の兄のタメランは死亡しているからである。宗教や思想など内面的な問題が絡む複雑な動機の真意を第三者が分析することは困難であると思われる。23日の『AP通信』によると、タメランにはイスラム教に改宗した新しい友人がいたという。ミーシャという名の友人は「宗教に無関心だった若者に厳格なイスラム教を説教し、多大な影響を与えた」と家族が話したという。また、「その影響で、タメランはボクシングを諦め、音楽の勉強も止めた」と話しているという。更に、アフガニスタンとイラクでの戦争に反対し始め、ウエッブサイトや文献などに関心を向けるようになり、「2001年の同時爆破テロにはCIAが背後にいた」と信じ、また「ユダヤ人が世界を支配する」と主張したという。兄弟の叔父であるルスラン.タサニはタメランに与えるミーシャの影響力を心配していた2人の父親との会話を思い出し、「どういうわけか洗脳された」と語ったという。APは、数日間このミーシャという人物を確認し、インタビューする努力をしたが成功していないと伝えている。 長男だったタメランは家族全員に愛され、弟や妹たちの良い手本であった。また弟の「ジョカァルは兄を愛し、兄の言うことは何でもする」とタメランの妹の元夫が話したという。しかし、タメランが ミーシャという友人に実際どれほどの影響を受けたのか、これも明白ではなさそうだ。25日の『USA Today』によると、この人物は、アルメニア系アメリカ人であり、アルメニア人がイスラム教に改宗することはありえないとして、アルメニア人の地域社会ではこの説に懐疑的であるようだ。
一方、タメランは潜在的なテロリストの一人として米国政府のデーターに記録されていたと言われている。24日の『ロイター通信』によると、そのデーターベースは「全米反テロリズム.センター」が保持しているという。2011年にロシア政府から「タメランは過激なイスラム教徒になった」とのヒントを得たとき、FBIがタメランと面談したことがその背景であるようだ。
このデーターベースには、世界中の50万人以上の疑わしい人物又は潜在的なテロリストが参照情報として記録されている。その合計数は540,000人で、名前の重複や誤字などの理由により、実数は推定450,000人であり、その内5%は米国市民または合法的住民であるという。これは、国際テロリストに関する米国政府の中央データーベース.システムであり、TIDEと呼ばれている。
病室で尋問を受けているジョカァルは、 逮捕されたとき銃や爆弾など武器は保持していなかったことが判明した。24日の『ワシントン.ポスト』によると、警察は、彼が武器を保持しているのではないかとの恐れがあり、銃を発砲したようである。その銃弾はボートに突き当たったという。しかし、発砲した動機について話をすることを拒否しているという。他の警察官は、彼が爆発物を持っているのではないかと、何らかの混乱があったためであると説明しているという。当局は、少なくとも兄弟はテロ組織には関与していなかったことを確認しているようだ。
更に、警察はジョカァルを19日に逮捕したとき、 彼には黙秘権と弁護士を要求する権利があることを告知するミランダ警告を読み上げることはなかったと伝えられていた。しかし、22日に捜査官による約16時間続いた質問の後、判事、連邦検事、法務執行機関の関係者らが病室に入り、その権利を与えられたと25日の『AP通信』は伝えた。ジョカァルは病室で、その権利があることを知った即時に話すことを止めたという。また、複数の議員、特に共和党議員らは、彼をテロリスト容疑者としてグアンタナモの軍事基地の刑務所に拘留し、民間の裁判資格を与えず、条件の劣る「軍事裁判にかけるべきである」と主張したが、ホワイトハウスの推測どおり、連邦裁判所で米国市民として民間の裁判を受けることが確定した。
しかし、兄弟は複数の爆破を計画していたようだ。今日、ニューヨーク市長のマイケル.ブルンバーグは、「次のターゲットはニューヨークであった」ことを公表した。25日の『ロイター通信』は、 ボストンの爆破後、兄弟には別の爆破計画があったことを伝えた。 ジョカァルは、残っていた爆弾を使って、ニューヨークに爆弾を仕掛ける計画があったと話したという。彼らがカージャックしたSUVには5つのパイプ爆弾やボストン.マラソン爆破で使用したような圧力鍋の爆発物が積まれていたという。しかし、予期しない事態が起きた。先週木曜日の夜半にカージャックしたとき、ニューヨークに向かう途中でガソリン.スタンドに立ち寄り、 一人は給油し、一人は支払いをしているすきに、カージャックされた車の持ち主は逃走した。誘拐され、逃走したその男性は警察に通報したため、その後追跡が始まり、まもなく銃撃戦に発展したという。その銃撃戦で、二人は車から爆弾を外に放り投げたと警察が話したという。
今回の事件は、驚くほど多くのメディアが多数の情報を提供しているが、警察官の話、家族や友人の話、ジョカァルの話など、どの情報筋も微妙に異なり理解に混乱を極めている。しかし、この兄弟は、ボストン爆破の犯人であることは容疑者の生存者であるジョカァルが認めている。19歳の弟は、年の離れた兄に強い影響を受けたのではないかと言われている。病室では自分に不利になることも正直に捜査官に伝えている印象があり、米国市民として、民間の裁判を受けさせることを法務執行当局が決定したことは正道である。死刑宣告の可能性が伝えられている現在、今後の裁判の経過と判決が注目される。