上院議会の移民改正法案の聴聞会は19日から始まった。 22日は、844ページに及ぶ莫大なスケールの条項を盛り込んだ包括的移民改正法案の聴聞会が行われた。この法案は「8人のギャング」と呼ばれる超党派の上院議員が今年1月に紹介したものであり、民主党議員4名および共和党議員4名が草案者である。
引き続き、約1,100万人の不法移民に法案制定後から13 年間で永住権を与えるとアピールしているようであるが、現実的には、最終的に何人がそのようなゴールの対象者になるのか不明である。この新たな包括的移民改正法案の主要点は、従来の移民法を近代化し、不法移民を雇用する事業主に厳しい罰則を与えるなど、不法移民を歓迎しない有権者にも一般的に受け入れやすい内容である 。また、メキシコやカナダとの国境の安全性強化が強調されている。これは、米国とこれらの国との協力体制により、高速道路や交通などの整備による国境の安全性を目指したものである。更に、科学、技術、工学、数学を専門に学んでいる外国人学生には、卒業後も米国に滞在することを奨励するため、グリーンカードを与える提案も含まれている。
22日、上院司法委員会の聴聞会で、国土安全保障省の長官ジャネット.ナポリターノは、これは「常識的なステップ」であり、「大半のアメリカ人は支持している」と、この法案を全面的に支持する姿勢を示した。 一方、不法移民に全面的な反対を表明する複数の議員は「恩赦である」と反発している。今年1月29日CNNはこの包括的移民改正法案は『恩赦なのかまたは市民権への道なのか』と題する4つの疑問点を提起したが、その概略は以下の通りである。
疑問1:最近の移民法の背景にあるものは何か? その答えは、2004年から2012年までの大統領選挙で、共和党大統領候補者を支持したヒスパニック系有権者の投票率に大きく関係があると述べている。例えば、2004年にはジョージ.W.ブッシュは44%を獲得したが、2008年ジョン.マケインは31%に減少し、 2012年、ミット.ロムニーは27%で更に減少した。従って、不法移民には圧倒的にヒスパニック系が多いため政治的なものであると指摘している。また、ヒスパニック系の有権者の多くは、カトリック信者でありプロライフ(中絶反対)派であるとの保守派議員の意見もあるという。
疑問2:なぜ8人の上院議員はオバマ大統領が自身の移民法案を紹介する前日に公表したのか? その答えは、超党派による草案であることを強調することで両院の支持を得やすくするためであり、両院での通過を達成する可能性が高くなると予測したためである。
疑問3:この草案は下院で十分支持される可能性があるのか? 下院の多数の保守派は不法移民に米国市民の権利を与えることに反対している為、その可能性については不明である。下院議長のジョン.ベイナーは、下院議会では大半の民主党議員はこの法案を支持しているが、共和党は少数派の議員が支持しているのみであると述べている。従って、下院がこの法案を採用するかどうか決定しなくてはならない。または下院で別の法案を草案する可能性もあるが、その場合、8人が草案した包括的な移民改正法案を弱体化させるリスクが高くなる。ベイナーは「この法案をもっと自分自身が勉強する必要がある」とコメントしている。共和党に人気のあるフロリダ州出身の上院議員マルコ.ルビオもこの「適正なグループ」と考慮されている8人の草案者の一人であるため保守派が無視できない要素がある。しかし、複数の共和党議員はすでに、この上院法案は「恩赦である」と拒絶している。
疑問4:上院法案は下院議会で妥協するためのスタートラインなのか? 共和党の最優先課題は、境界線の安全保障である。従って、不法移民に市民権を与えるかどうかは、この境界の安全性次第であることを明確にしている。
結論として、2008年以前まで不法移民が激増していた理由は、オバマ政権で2008年から2011年の上半期まで年間40万人の不法移民を強制送還したような例はなかったためである。更に、2008年以前、不法移民の非合法雇用は、その取り締まりが緩慢であった。従って、米国には一般のアメリカ人が従事したがらない3K(きつい、汚い、危険)の仕事に加えて、農業や庭園作業などの仕事が豊富にあるため不法入国者が増え続けるという状態であった。つまり、最低賃金以下の条件で医療保険も提供せず雇用可能な状況は事業主に有利なためである。メキシコからの不法入国者が多い理由は、自国に安定した仕事がない経済的理由であり、不法移民の非合法雇用問題に注目することの方が重要である。 従って、このような点で改善があれば、特に境界線の安全強化に莫大な予算をかける必要はないはずである。しかし、共和党は、境界線の安全性が十分強化された後で、誰に市民権を与えるかどうかを検討すると言っているような状況であるため、包括的移民改正法案の両院通過はいつ頃になるのか不透明である。