差別意識が潜む聖パトリック日のパレード

今日3月17日は聖パトリック日の休日である。 16、17日は、全米の各地で聖パトリック日を祝うパレードが開催されているがその裏側には政治的な亀裂と一部のグループを排除する差別的な側面がある。ボストン市長のマーティ·ウォルシュ氏(左)およびニューヨーク市長のビル.デ.ブラジオ氏 (右)はそのような差別的なパレードに抗議し、参加をボイコットしたことで注目を浴びた。

聖パトリックと呼ばれるパトリキウスは387年にスコットランドで生まれ、アイルランドで461年3月17日に死亡した。パトリキウスは16歳の時、家族の財産を略奪したアイルランド侵略者の捕虜となりアイルランドに輸送され6年間捕虜の身となった。一般の市民と隔離された場所で奴隷羊飼として働いていたため、孤独と恐怖のあまり信仰を求めるようになった。次第に敬虔なクリスチャンになり、最終的にはアイルランドでキリストの啓蒙に貢献した。従って、聖パトリック日の休日はパトリキウスが死亡した日ということになる。毎年パレードが開催される聖パトリック日はアイルランド人のプライドが強調される日である。

しかし、幾つかの地域で同性愛者のパレード参加を公然と禁止している為、論争的な問題が潜んでいる。ワシントン.ポストによると、ボストンやニューヨークではパレードの主催者が公然と同性愛者を禁止したという。ウォルシュ氏は、ボストン市で20年以来最初のアイルランド系アメリカ人の市長であるが、昨日開催されたパレードへの参加を拒否した。彼はパレードの前夜、ボストンの戦没者同盟評議会と交渉を行ったが、マサチューセッツ州のゲイ権利保護団体との合意に達することができなかった。この保護団体は、アイルランド系アメリカ人である同性愛者もパレードに参加することを希望していた。パレードを主催する民間団体は、公然と同性愛者を禁止することはできないが、同性愛者の権利を表明する旗を掲げて行進するグループの参加を禁止する権利はあるという。

今年1月1日にニューヨーク市長に就任したばかりのブラジオ氏は、作家、編集者、詩人である黒人女性と結婚しているように、多様民族文化が普及しているニューヨークで広範な価値観を受け入れることを目指すリーダーである。しかし、ニューヨーク州は政治的に、長い間保守派が築いた土台がある為全ての側面で進歩的であるという訳ではない。ニューヨーク.タイムス(NYT)によると、「 政治生活の中で特大化した役目に長く慣れているニューヨークのアイルランド人は、寒さの中に置き去りにされたように感じている」ため、市長は攻撃されやすいとアイルランドの関係者や市民団体の指導者は述べているという。ブラジオ氏が動物虐待を理由に、セントラルパークから馬車を禁止することを公約したとき、多くのアイルランド系アメリカ人は驚き、その業界の雇用主にはアイルランド移民が多いため、彼らのプライドを脅かすとして反発し、俳優のリーアム.ニーソンさえ抗議したという。

ブラジオ氏は市長としての経験が浅過ぎる為、些細な失敗があり、双方に一種の緊張感があるようだ。また、市が選出するトップクラスの役員にはアイルランド系アメリカ人が8年ぶりに初めてほとんど存在しなくなった。更に、「1990年以来、5つの地区で彼らを代表する役員のランクが25%減少している民族グループの影響力は低下している」ことなど、特に政治的な不満要素があるという。

ニューヨークには「一定の既成の秩序と忠誠を要求する」アイルランド系アメリカ人の地域社会が確立されている。また、「都市に芸術団体を構成し、草の根レベルで政治的に活動的」な若い世代は、ブラジオ氏を支持している傾向があることが分かるとアイルランド系アメリカ人の作家、芸術家、及び非営利団体の社長であるT.J.イングリッシュ氏は述べたという。しかし、ブラジオ氏は同性愛者がプライドを表現する事を禁じる聖パトリック日のパレードをボイコットする決定を先月発表した。同時に「市の職員は制服姿で行進する」とのゲイ.グループの要求も拒否した。市長の「ボイコットは一部のアイルランド系を怒らせ、他の人達を喜ばせた」結果になったという。

NYTのインタビューに応じた作家及び回顧録の筆者であるマラキ.マコート氏は、ニューヨークのアイルランド系アメリカ人は「全員ここに来て保守的になった」と述べ、「リンカーン以前から存在している」セントラルパークの馬車を廃止する提案は見当違いであることを指摘した。新人市長は、アイルランド系アメリカ人との緊張に直面しているようであるが、アイルランド地域社会との亀裂を経験しているのはブラジオ氏だけではない。前任のマイケル.ブルンバーグ氏は、アイルランド人を「窓にぶら下がって完全に酔っている人達」と冗談を言ったため、マンハッタンでパレードが開催された時、罵声を浴びたという。

論争的な聖パトリック日のパレードは、一部のグループに対する差別が依然として残っていることを示唆している。1810年代及び1920年代、50 万以上のアイルランド移民が米国に入国した。鉄道建設時代は中国人と同様の搾取と虐待を受け、家政婦の労働市場では黒人との競争が熾烈であった。又、歴史的に「怠け者である」とのレッテルを張られ、皮肉にも、ヨーロッパ移民の中では最も激しい人種差別を受け続けたグループである。ブルンバーグ氏の何気ない冗談さえ、その歴史を示唆している。近年アイルランド人は世界で最も親切であるが、最も怠け者であると言われている。いずれにしても、全ての市民に平等の愛を説くはずのキリスト教関連の行事である聖パトリック日のパレードの裏幕には、一部のグループを除外する差別意識が潜んでいることが浮き彫りになった。

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