アフガニスタンのタリバンに約5年間拘束されていた陸軍軍曹のボウ.バーグドールが無事救出されたとする報告後、オバマ政権の決断に対する批判が高まっている。また、バグードールがタリバンに拘束された経緯について疑惑が生じているため、この米兵救済結果は日増しに論争的になっている。ブッシュ政権の元法律顧問を含む複数の専門家は、オバマ氏に対する議員達の批判に相反する意見を提起している。米兵救済の新たな疑惑とその論争の要点は、まず大統領は法律に違反したのかという点であり、二つ目は、バグドールはなぜタリバンに拘束されたのかという疑問である。
バーグドール救済に際し、5人のテロ容疑者をキューバーのグアンタナモにある米軍刑務所から、カタールに輸送する決定をしたオバマ氏は、法律違反を犯したのではないかとの疑問が提起されている。オバマ氏には大統領としての権限があるとする意見と、大統領にはそのような権限は無いため、30日前に議会に通知するという規定に違反したとする議員の意見は二分している。しかし、3 日、ジョージW.ブッシュ政権下で国務省の法律顧問であったジョン.べリンジャーはフォックス.ニュースで、アフガニスタン戦争は終焉を迎えている状況で、5人のテロ容疑者が米国の連邦裁判を受ける可能性はないとし、グアンタナモに拘束されている容疑者には釈放可能な人物もいたとして、ブッシュ政権は500人以上を解放したと述べた。また2日、元副大統領であったディック.チェイニーもバーグドールは健康状態が衰えていたことを指摘し、「ブッシュ政権も同じ事をしていただろう」と述べ、オバマ政権の行動を擁護した。上院情報委員会の民主党議員ダイアン.フェインスタインは、「事前に我々に相談してほしかった」と述べ、大統領は30日規定に従うべきであることを示唆したが、法的な側面からの説明はしていない。
複数の議員は、この規定に従わなかったオバマ氏を批判しているが、ニューヨークに拠点を構える憲法権利センターの弁護士であるウェルズ.ディクソンは、6 月 2日MSNBCニュースのインタビューで、オバマ政権は動機があればグアンタナモに拘留されている囚人を移送することは可能であるとし、移送するべき囚人はまだ4人いると述べた。また、オバマ氏には、グアンタナモ刑務所を閉鎖する権力もあるが、議会はそのような資金を提供しないだろうと指摘し、オバマ政権の行動は道理的であることを示唆する意見を提起した。多数の専門家は、アフガニスタン戦争は終焉が近づいている為米兵が撤退するに従って、米国はテロリスト容疑者を拘束する国際的権利を失う可能性があると論議している。そのような観点から、今回オバマ政権が5人を釈放した事がグアンタナモ刑務所の閉鎖に繋がると推測されている。
一方、バーグドールはなぜタリバンに拘束されたのかという疑惑が持ち上がっている。アフガンに駐留する米兵の仲間の一人は、バーグドールは救済される資格がないことを暗示する声明を放映した。その米兵は、バーグドールと同じ部隊の仲間であり、バーグドールはアフガン戦争を嫌ってアフガンの米軍基地を抜け出したと批判した。また、行方不明となったバーグドールを捜索していた他の仲間6人は捜索中に死亡したと公言したが、6人の死亡の直接的原因と詳細な状況は判明していない。
この証言によって、バーグドールは戦場でタリバンに拉致され捕虜になったというイメージが薄れ、基地を脱走し、戦闘地外及び基地外でタリバンに捕まったという印象が強くなっている。また、基地から近い距離の場所で、うろついている不可解な様子の米兵を見たという証言がある。4日のワシントン.ポスト(WP)によると、バーグドールは2009年に米軍基地を立ち去った為、軍隊の数人は彼を探しまわったと証言している。彼が基地から消えた理由に関する具体的な情報はほとんどない為、タリバンに拘束された理由については、基地を抜け出し、道に迷った途中でタリバンに拉致されたのか、それとも自らタリバンの領地に向かっていたのか不明である。WPは、バーグドールが消えた直後彼を目撃したアフガニスタンの村人に接触した。複数の村人は、バーグドールは「どこかおかしい」様子であり「意図的にタリバン本拠地に向かっていた様に見えた」と伝えた。米軍基地から約半マイル(約0.8km)離れた地域の村長は、なぜバーグドールが基地を去ったのかを疑問視し、「とても困惑することだ」と述べ「それは密かな議題であり、たぶん彼は米国によって村に送られたのかも知れないと思った」と語った。また、地元の人達はバーグドールが村近辺を歩いているのを見た記憶は曖昧であるが、彼らはアフガンの調査官にアメリカ人が危険な領域に向かっていたと警告したという。そのアメリカ人に「危険だから行くなと言ったが、彼は山を超えて進み始めた。また、村人達は水とパンをあげようとしたが、受け取らなかった」と地区の諜報主任はWPに語ったという。
最近の様々な情報は、バーグドールの救済を歓迎する雰囲気を変える要因になっている。先週、米兵が解放されたことを喜び、彼を英雄であると誉め称えたメッセージをフェイスブックやツイッターに投稿した多くの議員は、そのような祝福の投稿を次から次にサイトから抹消するなど著しい変化が生じている。また、バーグドールの郷里であるアイダホ州ハイリーでは予定されていた歓迎会がキャンセルされている。地元の主催者は、予定以上の多くの参加者で混雑が予想されるため、安全対策が不十分であるとしてキャンセルしたと述べている。しかし、自ら基地を放棄しタリバンの方向に歩いていたとの噂や、捜索した複数の仲間が捜索中に死亡したとの主張がキャンセルの主要因であると思われる。
様々な憶測や批判を受け、オバマ氏は、米国はどのような事情があろうと誰を救済し、誰を救済しないというような区別はしない。それは米国の方針ではないとバーグドール救済を弁護した。また、「健康が衰えている米兵を救ったことに謝罪するつもりはない」と述べた。4日、タリバンはバーグドールを米軍特殊部隊に引き渡した時のビデオを公開した。米軍のブラック.ホーク(ヘリコプター)が到着する前に、小型トラックの中で待っていたバーグドールにタリバンの一人は「二度と戻ってくるな。戻ってきたら命はないぞ」と脅したと複数のメディアは伝えている。また、英語も満足に話せなくなっているほどバーグドールの健康は衰えていることが、救済を促進した理由の一つであると言われている。しかし、このビデオを見た議員達の意見は、彼の健康が衰えているとする意見と、さほど衰えているとは思わないとする意見に分かれている。
ブッシュ政権は、テロリストと交渉することなしに500名以上のテロリスト容疑者を釈放した。それに比較すると、オバマ政権は遥かに少ない拘束された容疑者を解放しているが、今回に限って多くの共和党議員は騒ぎ立てている。彼らは、オバマ政権の決定にいつも反対する傾向があるため、オバマ氏が議会に事前通知した場合、おそらく反対したはずである。故に、オバマ政権の数人を除き、あえて内密でバーグドール救済に踏み切ったと思われる。彼を解放するためのオバマ政権の交渉は1年かかったと言われている。オバマ政権はそのような長い交渉期間中、バーグドールをタリバンから解放する代償として5人のタリバン拘留者をグアンタナモから釈放する危険性は十分検討したはずである。解明していない多くの疑問については、いずれバーグドールに聴聞する機会もあるかもしれないが、本人はまだ医療施設で治療を受けている状態であり、精神的側面も含めて段階的治療が必要であると思われる。