最近益々深刻な状況になっているイラク危機に、オバマ政権がどのように対処すべきなのか議論が白熱している。オバマ大統領は、何らかの選択を迫られている為、空爆などを考慮していると述べているが、複数の共和党は軍事介入の圧力をかけている。しかし、幾つかの現状を考慮すると、米軍がイラクに本格的に関与する道理的な要因はないと思われる。
イラク危機は、イラク政府軍シーア派兵士と、イラクとシリアのイスラム教国(ISIS)又はスンニ派の武装組織との宗派対立が原因である。この紛争の主な立役者は(1)アルカイダの派生グループと言われているスンニ派のISISであり、彼らはインサージェントと呼ばれる反政府軍である。スンニ派はイラクの人口の30%以上を占めていて、ISISの動機はイラクとシリアをイラクの統制下で結束することである。次に(2)政府軍のシーア派はイラクの多数派であり、歴史的には政府を支配していたスンニ派に抑圧されていた。サダム.フセイン政権時のリーダーは全てスンニ派であり、シーア派のリーダー達は国外追放された。また(3)イラクの首相ノウリ.アル.マルキは過去数年間、マルキ政権からスンニ派のリーダーを起用せず、スンニ派を遠ざけ、バランスや統合性を無視し、親族や仲間だけを主なリーダーとして起用した。更にマルキは、米軍が投資し訓練したイラク政府軍の訓練を強化する努力を続けなかった為、イラク政府軍を弱体化させた。最後に(4)シーア派の民兵は、米軍がイラクに占領している期間、彼らの一部はイランに援助され強力な勢力となった。あらゆる機会に米軍を襲撃し、2006年にピークに達したスンニ派とシーア派の宗教戦争に参加した。
この4つの主な立役者の中で、最も攻撃的で過激なグループは、イラク政府軍シーア派兵士と戦っている黒旗を掲げたISISである。彼らは先週から北部イラクの主要都市を次々に陥落している。ティクリートでは1,700人のシーア派兵士を処刑したという噂もあるが、確実なことは判明していない。また、モルスでは中央銀行から4億ドルの資金を略奪したと報じられている。18日は北西部にある最も大きな石油精製所を押収したことが伝えられている。イラク危機は日増しに緊迫化しているため、米国政府の決断が注目されている。
オバマ大統領は昨日、精密にターゲットを絞ったドローン(無人爆撃機)を精選的に利用することを考慮すると述べた。また、バグダッドにある米国大使館とアメリカ人を保護するため275人の米兵を派遣すると議会に報告した。これらの兵士は戦闘には参加しないが、そのような目的で限られた数の米兵を現地に送り出すことはあっても、本格的な軍事介入は選択肢に含まれていない。一方、米軍の本格的派遣を奨励し、軍事介入の決定をしないオバマ氏を公的に批判しているのは、ブッシュ政権下の元副大統領ディック.チェイニー、ジョン.マケイン、リンジー.グレイアムなどネオコンの共和党である。彼らは、オバマが米軍を早くイラクから撤退させた為、治安が乱れるようになったと主張している。しかし、イラクやアフガニスタンからの撤退はブッシュ政権で決めたタイムラインに従っているだけでなく、両国政府との合意によりそのスケジュールは決められている。
一方、イラクではシーア派の一部が米軍の介入に反対しているという。ウォール.ストリート.ジャーナル(WSJ)によると、元国連大使を務めたカタールのナセル.ビン.ハマド·アル·カリファは西側がマルキ政権を援助するための軍事介入は間違いであり、アラブ及びイスラム世界に対する戦争とみなすことになると述べ「行くのは止めなさい。もし、援助したいのであればイラクを代表する政府に人々を統一するよう圧力をかけなさい」とアドバイスし、「米国の介入は、アルカイダが引き続き黄金の人材を募集する動機になる」と語り、アルカイダの米国に対するテロ攻撃を誘発する危険性があることを警告した。
イラクの紛争は、歴史的に根が深いスンニ派とシーア派の宗派対立であり、しかも上記のような立役者の動機および紛争の本質を見極めると、米国が介入する道理はないと思われる。カタールの元国連大使が警告しているように、米国の軍事介入はあまりにも危険であり、これ以上財源を無駄にし、貴重な兵士の命を犠牲にしてまでイラク政府を援助するべき正当な理由はほとんどない。米国はすでに、最初のイラク戦争で莫大な資源の無駄遣いをしている。2003年3月から2011年12月まで続いたイラク戦争では約4,500人の兵士が死亡し、2013年に更新された国防総省の推定では約6兆ドルを投資した。更に、米軍が訓練したイラク軍の兵士は弱体化し、米国の努力は何ひとつ実っていないことが現在証明されている。従って、イラク戦争での民主主義への投資は全て無駄であり、所詮、歴史的に宗教的対立が根深いイスラム世界を変えることはできないことを現在アメリカ人は認識している。
Public Policy Pollingが実施し17 日に発表した世論調査に寄ると、「イラク戦争が再発しているのは米軍が撤退したためである」と答えた率はわずか20%であり、67%は、もし米国がこの戦争に関与すれば、「ブッシュ政権下での米国の侵略で悪化させた世紀の内戦にもっと深い根を刻む事になる」と答えている。また、「イラク危機に対処するため軍隊を派遣するべきだ」と答えたアメリカ人はわずか16%であり、74%の国民は「軍隊を送ることに反対」している。
結論として、イラク危機の本質および紛争の主な立役者の大義名分は米国には無関係であり、再度米軍を派遣し、貴重な財源と人命を無駄にし、果てしない泥沼の中に米国を引きずり込む価値も余裕もないと思われる。また米国民の大多数が米国の軍事介入に反対しているなどの要因に基づき、オバマ政権は本格的な軍事介入をするべきではない。