ホビー.ロビー及びコネストガ.ウッドの家族的経営企業に対する30日の最高裁決定の波及効果は多大である。翌日には複数の宗教関連組織が宗教の権利をアピールする行動を開始し、一方、最高裁の決定に異議を唱える宗教団体もいる。最高裁は3日、6対3の差で、宗教に所属する非営利団体は連邦政府の規定に妥協して避妊適用条項に遵守する必要はないと判定し、宗教的な理由で反対しているイリノイ州の宗教関連の私立大学に産児制限の暫定的免除を認可した。将来様々な角度から、他の宗教団体に利用される可能性がある事を示唆する波及効果がすでに現れている。幾つかの点で米国社会のギャップを拡大し、宗教団体に差別を正当化させる要因になる懸念もある。
6月30日の最高裁の判定は、アフォーダブル.ケア.アクト(ACA)に規定されている避妊適用条項を雇用主が拒否することは可能であると判定した。しかし、その産児制限の条項が含まれているACA下での医療保険計画を雇用主が受け入れることを憲法違反であるとは判定していない為、全ての雇用主は女性従業員に避妊適用の保険計画を提供することが可能である。しかし、この2社に対する最高裁の判定は、宗教の権利を主張する一部の団体に都合良く利用される可能性がある。
例えば、ある著名な14の宗教団体のリーダー達は宗教的な理由に基づき、オバマ政権のLGBT(同性愛者、両性愛者、性転換者)に対する雇用差別を禁止する雇用非差別法(ENDA)の条項から宗教団体を除外するよう要請した。このグループは1日にホワイトハウスに手紙を送り、オバマ政権は宗教の特権をもっと敬うべきであると主張した。署名者の一人は、オバマ政権に友好的で移民改正などの問題をホワイトハウスにアドバイスしたことがあると言われている。また、4日のボストン.グローブによると、ENDA 規定から宗教団体を除外するよう要請した署名者には、マサチューセッツにあるキリスト教大学ゴードン.カレッジの社長も含まれている。彼はその手紙に「強固な宗教的免除がなければ、その雇用拡大の権利は共通の利益、国民の団結、及び宗教の自由に不当な負担になる」と書いている。手紙は最高裁が決定する前に準備されていた為、同大学の卒業生及び学生らは批判しているという。何人かの学生はLGBTの権利を支持する手紙をホワイトハウスに送る予定であるらしい。
この例は、最高裁の判定を都合良く利用した動きであり、同性愛者に対する差別を正当化する要因になる。ENDAの法案は、昨年11月上院議会が64対32の票差で通過した後、下院議会ではまだ投票していない為まだ制定されていない。制定された場合、もっと多くの宗教組織が似たような要求をし、大きな差別問題に発展する恐れがある。
また、ワシントン.ポストによると、3日最高裁は、イリノイ州の福音主義のホイートン大学にACA下で強制条項になっている無料の避妊システムに関して、女性判事3人を除く6人の多数派は、同大学が従業員および学生の産児制限を支持することが不可能な宗教的理由をオバマ政権に通知していれば、避妊適用条項に従う必要はないと判定した。オバマ政権は既に、特定の様式に署名することを条件に宗教組織の非営利団体にこの規定を免除している。しかし、ウィートン大学を含む複数の非営利団体及び幾つかの大学や組織は、その様式に署名するという行為も彼らの宗教的権利を侵害すると主張している。つまり、第三者に避妊の適用範囲を認可させることになり、彼らの宗教的信念を阻害する行動を促進させると主張している。
これに対し、最高裁の多数派は、オバマ政権が規定している特定の様式に署名したくないのであれば、ウィートン大学はオバマ政権の保健福祉省に避妊適用条項を拒否する宗教的理由を通知する手紙を送ることを提案した。更に、同大学の従業員や学生は、FDAが認可している広範な避妊方法に費用をかけず入手することはまだ可能であるため、最高裁の決定は暫定的であることを明確にした。一方、3人の女性判事は、ウィートン大学の要請を拒否し、大学は彼らの医療保険会社または第三者が、避妊適用の支払い義務を果たす事を可能にする様式に記載する必要があると指摘した。
最高裁決定の波及効果は著しいが、全ての宗教団体がこの判定に賛同しているわけでない。イリノイ州のオーロラでは2日、ホビー.ロビーの店頭前でキリスト連合教会(UCC)及び他複数のグループが、通行人にコンドームを配布する運動を展開した。ACA下で規定されている産児制限のシステムには、錠剤や器具を含めて多数の避妊オプションがあるが、ACAの規定は全て女性のみに限定している為、コンドーム配布そのものはホビー.ロビーにはさほど影響を与えない。しかし、UCCの抗議の目的は全ての宗教団体が、女性の権利を犠牲にした上で宗教の権利だけを主張している訳ではなく、様々な考え方があることをアピールするためである。UCCの代表者は、ホビー.ロビーのような動きは自分の従業員にも同じ宗教的信念を強制的に共有させる為の権力の主張だと指摘している。
このような動きはまだ氷山の一角であるが、30日の最高裁の決定は、現実的には幾つかの点で、差別につながる懸念がある。宗教の権利を強く主張する企業は、その企業で働く従業員に経済的負担のない産児制限の機会を遮断している。産児制限が含まれる医療保険計画が利用できなくなると、本来なら医療保険会社が支払う避妊代を自己負担しなくてはならない為、特に低所得の女性にとっては、余分な経費負担を強いられることになる。1日のタイム誌によると、医療保険が無い場合、経口避妊薬の月々のコストは約$25であり、IUD(子宮内器具)の場合、平均12年間維持可能な一回の施術に$900の費用が必要である。一方、この判定の影響を受けない公開株保持企業に勤務する女性達は無料で避妊が受けられる為、経済的にも不公平な状況になる。また、ホビー.ロビー及びコネストガ.ウッドの判例は、明らかに企業も人であるとし、故に、宗教の自由を主張できるとする理論に基づいているが、人である従業員は、産児制限を含めて個人のライフスタイルを選択する権利がある。3人の女性判事は、従業員は雇用主と同じ宗教的論理を共有していないことを指摘し、女性の権利を限定しているとして5人の多数派判事に反論した。最高裁の判定は、米国社会で既に存在するギャップと差別を更に促進するとの批判も目立っていて、論争的になっている。