歴史的に根強い中絶紛争

歴史的に有名な1973年のロー対ウェイド判決で最高裁は7対2で憲法第十四条に基づき、中絶禁止を憲法違反であると判定した。それから41年後の今日、米国社会は、この判定の逆方向に向かっている傾向があり、全米で記録的な州レベルでの中絶禁止法案が通過している。宗教の権利に基づき、女性の選択の権利を制限した6月30日のホビー.ロビーおよびコネストガ.ウッドの聴聞での最高裁の判定はその極端な例である。しかし、このような社会の変化に反応し、選択の権利を主張する女性の声も高い。先週、上院議会では、最高裁のホビー.ロビー判定を覆すことを目的とした法案、及び女性の生殖健康と選択の権利を保護する為の2つの法案が紹介された。今日から議会はこれらの法案の論議を開始した。

キリスト教信者の人口層が多い米国は、社会の隅々で宗教団体が著しい影響を与えている。特に、女性の生殖健康問題である避妊や中絶に関して、政治家も様々な角度から影響を及ぼしている。近年、異様なほど多数の政治家が中絶問題に集中し、他の先進国では考えられないほど女性個人の選択に関与している。ガットマッチャー研究所によると、2013年には避妊や中絶に関する議会での論争は全米に拡大し、その結果39州で141の生殖健康と権利に関する条項を制定した。これらの新しい規定の約半分である70の条項は、22の州が中絶サービスへのアクセス制限を強化したものである。一方、中絶の制限に際立って対照的な米国社会の一部は、生殖健康サービスのアクセスを拡大するための措置を採用した。カリフォルニアはその最も顕著な州であり、中絶へのアクセスを拡大するため、7年ぶりの新しい州法を制定した。また、5州は包括的な性教育へのアクセスを拡大し、性的に暴行された女性のための緊急避妊薬へのアクセスを容易にし、患者のパートナーがSTI治療を得ることを可能にする措置を採択した。

ホビー.ロビー判例による最高裁の決定はその後反響が強く、即座にこの決定に対する疑問が提起された。最高裁は、IUDは中絶に近いとする科学的に実証されていない原告の主張を重視し、憲法修正第一条に基づいて判定しなかったことが最も論争的な要因になっている。5対4票で多数派の意見を代表したサミュエル.アリート判事の意見は、宗教の自由回復法(RFRA)を強調することで憲法修正第一条を無視し、企業の神権政治を優先した。これは、カトリック教徒である5人の判事が、選択する権利より個人的な宗教的信念を優先した結果である。また、この結果は様々な方法で差別を促進する窓口を公益組織に開いた。

従って、この判定の影響は多大であるため、これを覆す動きは強烈である。なぜなら、ホビー.ロビーのようなクロスリィ.ヘルド.コーポレーション(CHC)は、ワシントン.ポストによると、全米のビジネスの90%を占めているという。またコロンビア大学およびニューヨーク大学の研究では、CHCは米国労働市場の52%を占めている。CHCとは小さなグループが株主を支配しているような家族系列的企業を意味しているが、小さなグループが株主を支配していても、従業員規模の観点からホビー.ロビーは決して小企業ではないため、この判定は多数の女性労働者に影響を与えている。宗教の自由の名の下に女性の選択の権利を制限することは、究極的には、その自由を完全に奪い、ロー対ウェイド判決も覆す方向に進展する危険性がある為、その反動は顕著である。

最高裁は6月26日、女性が中絶クリニックに入ることを安全にするためのマサチューセッツ州の中絶緩衝ゾーン法を却下した。同州では1994年に狂気的なプロライフ活動家に2つの中絶クリニックで二人の受付の女性が殺害された事件があった。歴史的には全米で殺人、爆破、放火、誘拐を含む中絶に関連する暴力は多数ある。同州では、中絶クリニックに入る女性を守るため、また、個人の中絶決定に対するプロライフ活動家の妨害を防ぐため、中絶施設の前に35フィート(約10 m)の緩衝ゾーンを設定していた。また、22の州は女性が中絶クリニックにアクセスすることを制限している為、女性の選択の自由と権利を阻害するプロライフ派の動きは脅威なほど勢力的である。このような動きが目立つようになっている反面、プロチョイスを支持する政治家は先週、女性の健康の保護と権利を守るための2つの法案を紹介し、今日から公式に論議されている。その一つは、Protect Women’s Health from Corporate Interference Act (企業干渉から女性の健康を保護する法)、もう一つは、Women’s Health Protection Act(女性の健康保護法)である。

最初の法は、6月30日の最高裁の決定に挑戦したもので、究極的にはこの判定を覆すことが目的である。連邦政府の医療保険改正法であるオバマケアの避妊強制条項を雇用主が否定することを認めないオリジナルの状態を維持するためである。従って、ホビー.ロビーの経営者が主張したようにプランBの経口避妊薬や子宮内避妊器具であるIUDのような特定の避妊方法を雇用主が従業員に禁じることも憲法違反であるとする法律を制定することを目的としている。これは今日から上院議会で論議が始まった。

二つ目の女性の健康保護法は、コネチカット州の上院民主党議員リチャード.ブルーメンサル及びウィスコンシン州出身の女性上院議員タァミー.ボウルドウィンに紹介されたものであり、今日から上院の司法委員会で聴聞会が開催され同じく論議が行われている。この法案の目的は、22州を含めて、州による様々な中絶攻撃を阻止するためである。また、中絶の限度を定める法律制定を阻止し、女性が中絶クリニックにアクセスすることを妨害または限定すること、及び医者の医療判断を妨害することなどを禁止することである。この法は、女性の健康と安全を保護する為、女性の選択の権利を憲法的に強調するためであり、女性の健康と安全を弱体化する圧力的な法律を州が制定することを禁止する為である。

これらの二つの法案は上院議会で通過する可能性があることは予測されているが、共和党でコントロールされている下院議会で通過する可能性はほとんどない。しかし、科学的根拠のない理由に基づき、個人の宗教的信念が他の女性の生殖健康を保護する権利より勝ることを宣言するような法律の制定は真に開かれた民主主義社会にはあり得ないことである。従って、その為には徹底して戦う勢力もあることを知らせる意味でその影響力はあると思われる。女性の生殖健康に関する最近の動きは、中絶紛争が歴史的に根強いことを示唆している。

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