前政権のテロ対策との違いが鮮明な大統領のシリア戦略

Al-Baghdadi Raid Was a Victory Built on Factors Trump Derides        New York Times   2019年 10月28日

トランプ大統領はホワイトハウスから27日、アル.バグダディに対する襲撃作戦でイスラム国(ISIS)の指導者が死亡したと報告した。28日、速報として注目されているこのエピソードに関するニューヨーク.タイムスの記事は、トランプが重要な国家安全保障上の勝利(significant national security victory)を主張したものの、襲撃の結果(the outcome of the raid)は、テロの脅威が地域で発展し続けている時に、シリアで米軍駐在の減少を押し出すという彼の知恵についての疑いを鎮める(to quell doubts)ことにはほとんど役に立たなかったと指摘している。また、トランプのシリア政策は重要な伝統的要素が欠けている事や、米国が搾取のパワーのみに見える彼の戦略からは、前政権の教訓が生かされていないことを示唆している。

トランプが駆り立てた米軍の撤退戦略の検証として(as validation of his disengagement strategy)、ISISの建物を突然襲撃した事によってリーダーが死亡したことは劇的な良いニュースのように見えるが重要な二つの要素が欠けているとこの記事は指摘している。 テロリストのリーダーを暗殺する使命には ① 強力な同盟(robust alliances)、② 情報機関での信頼(faith in intelligence agencies)、③ 世界中の軍事力の投影(the projection of military power around the world)が要求される。これらは、アメリカの強みである三つの伝統的な価値が反映されている。しかし、 ISISリーダーが潜んでいた建物の爆破は、最初の二つが欠如していた為、引き続きテロリストの脅威は同じ地域で続くと分析している。

Image result for images of al-Baghdadi raidアル.バグダディが潜んでいた建物の爆破跡:By  The New York Times

トランプは就任以来、情報機関に懐疑的であり、その関係者をディープ.ステイト (deep state)であると見ており、この襲撃は彼が事実上、放棄したことを意味する。また彼は、同盟国について明確に懐疑的な見方をしている。この場合、彼はクルド人との緊密な協力関係を事実上放棄したと指摘している。外交問題評議会の議長リチャード.ハースは27日、「襲撃は明らかに歓迎すべき成功でしたが、作戦を可能にした条件は将来存在しないかもしれません」と述べた。また、「アル.バグダディに対する成功した作戦の皮肉は、撤退された(have been pulled out)地上の米軍、裏切られたシリアのクルド人 (Syrian Kurds who have been betrayed)の援助、頻繁に誹謗されている(often been disparaged)アメリカの情報地域社会(U.S. intelligence community)の支援なしでは起こり得なかったことである」とのコメントに言及した。

この作戦の目的は幾つかあると記事は説明している。その一つは「イスラム国家の指導者アブ.バクル.アル.バグダディの死が、アメリカ軍を海外で終わりのない戦争(endless wars)に従事させることより、国内でアメリカを擁護する彼の戦略的知恵の証拠(proof of the wisdom of his strategy)」になるとトランプは信じていたからである。また、ウクライナ.スキャンダルで国民が弾劾調査に注目している時、シリア北部からの軍隊の撤廃は実際には長い戦争を終わらせる為の彼の「襲撃の成功がより広い共鳴(wider resonance)を持つことを望んでいる」為である。トランプは軍事関係者に「アル.バグダディが欲しい」と語り、ISISのリーダーの殺害を暗示したことを記事は示唆した。これは、8年以上前の歴史を連想させる。2011年5月、バラク.オバマ政権下で、アルカイダのリーダーであったオサマ.ビンラディンはパキスタンにあった隠れ家を襲撃した特殊部隊ネイビー.シールズによって殺害された。彼の死後、指導者を失った「アルカイダは進化し拡大」した。アルカイダの進化であるイスラム国家はイラクとシリアの両方で、2014年初頭までに空白地帯で「殺戮を展開」した。トランプは白熱した2016年のキャンペーン中、イスラムのテロリズムの新たな反復(a new iteration)が繁栄するための条件を作り出したとオバマを批判し、トランプは「彼(オバマ)がイラクから出た方法、それがISISの設立でした。彼は(イスラム国家の)創始者でした」と言った。

トランプの数年前のこの発言に反して、彼はISISのリーダーを殺害することがイスラム国家の滅亡に繋がるという保証はないとの教訓を学んでいない。リーダーを殺害することが根本的な問題を解決しないことは過去の歴史が証明している。中東の歴史は、過激派が台頭する温床になっている為、「ISISが最後になると信じる理由はない」と記事は述べている。外交政策研究所のクリント.ワッツは27 日、「アル.バグダディの死は レヴァントを中心とするイスラム国家の夢を打ち砕きます(dash the dreams)が、その長年の活動は、次世代のジハード(the next generation of jihad)を他のフロンティアに導く為、数十カ国から外国の戦闘者を募集、訓練及び派遣(recruited, trained and dispatched)したことです。イスラム国家の訓練を受けた外国の戦闘者(foreign fighters)は、今後10年間で、将来のテロリズムの問題になるでしょう」と述べたことに言及した。

オバマはシチュエーション.ルームでの会合で、ドローン攻撃を超えるアプローチについて頻繁に協議したが、それとは対照的にトランプと彼のチームはめったに議論しないという。その理由は部分的に「国を保護する方法についての大統領には非常に異なる哲学」がある為である。トランプは、地上での米国の軍事的存在は、他者が行動しないことの言い訳であり、以前はアメリカの保護領であった地域をロシアが現在占領している現状を彼は本質的に気にしていない。トランプは「私たちがそこにいることを好んでいるのはロシアと中国です。なぜなら、彼らが軍隊を構築している時、私たちはそこで我々の軍隊を使い果たしています」と述べた。加えて、シリア北部から軍隊の撤退を決定した時、圧倒的多数の共和党が猛反対した後、トランプは軍隊がまだ「帰国しない」と発表した。しかし、軍隊の撤退をしばらく延期した理由はシリアでの油田をコントロールする為である。これもイラク侵略で、米軍が「石油を保持」しなかったことを批判したトランプの主張を反映している。つまり、米軍が敵対的な外国の土地に駐在する理由は2つだけである。それは、テロリスト指導者の殺害と石油を抽出するということだけであり、それはアメリカが「搾取の力」のように見える(looks like a force of exploitation)と記事は指摘した。なぜなら、アメリカの世紀の使命(The mission of the American Century)は、他の国々が経済を発展させ、民主的な制度を構築(build democratic institutions)するという、本来の戦略がトランプの決定には欠けていると述べている。

要するに、この記事はテロリストの指導者を襲撃したオバマとトランプの二つの政権によるテロ戦略による違いを鮮明にしている。トランプのシリア政策は、過去の大統領とは異なり非常に搾取的であり、トランプは同盟、情報機関、世界中の軍事力の投影に関する戦略を無視している点で、前政権とは大きく異なっていると記事は示唆している。加えて、いずれもテロリストのリーダーを殺害したことが、中東でのテロリストを絶滅した結果にはならないという点では成功したとは言えないことを明白にしている。28日、国防総省の長官マーク.エスパーと陸軍参謀総長のマーク.ミルリー将軍は合同記者会見で、ISISのリーダーの遺体はDNAで確認されたと述べた。アメリカが石油を保持したとのトランプの主張に反し、エスパーは軍隊の滞在を延期する「基本的な目的はISISの復活を防ぐため、ISISがこれらの油田にアクセスする事を拒否することです」と語った。

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