トランプ大統領は、米国政治史上、納税申告書を提出しなかった最初の大統領である。大統領に指名された候補者は、積極的に開示するという長年の歴史的及び伝統的な習慣に従っている。加えて、就任後から多数のケースで法務執行当局の調査下に置かれた前代未聞の記録があることで知られている。現在もトランプは、特に財務的側面でまだ調査から解放されていない。12日、最高裁は、電話会議を通して、トランプが上訴した財務調査に関連する聴聞会を行った。
就任後からトランプ大統領は下院議会の複数の委員会、米国司法省下のニューヨーク南部地区連邦検察官、及びニューヨーク市と州の長官による複数の財政関連の犯罪調査の対象になっている。財務関連の調査でトランプが直面している判例は、大統領の会計事務所マザーズ(Mazars)及びトランプが長年取引しているドイツ銀行(Deutsche Bank)に対して、トランプの財務記録が召喚されている事に関連している。最高裁は12日トランプ対ヴァンス(Trump v. Vance)のケースで、ニューヨーク大陪審の召喚状に関する判例を代表しているニューヨーク郡地方検事サイラスR.ヴァンスとトランプの個人弁護士ジェイ.セキュロウとの論議を聴聞した。最高裁は、最終的にこのケースで、大統領に与えられている免責又は特権が大統領の会計事務所に対して個人的な財務記録を求めている州の大陪審による召喚状に遵守する事を妨げるかどうかを検討する。
トランプの財務書類に関連する裁判ケースは、下院情報、財務サービス、監視の3つの下院委員会が昨年の弾劾調査中にトランプの財務記録を要求した事から始まっている。ニューヨーク南部の連邦検察事務所と同州の司法長官事務所も同じく、トランプ及び彼の家族に関する財務書類を召喚している。これら判例は下級裁判所で争われたが、下級裁判所はトランプ大統領に対して、召喚された彼の財務記録を引き渡す必要があると判定した。現職の大統領に対する如何なる犯罪調査も告訴も無効であるとの米国司法省の規定に基づき、トランプは最高裁に上訴していた。大統領職と犯罪に関するこの米国司法省の規定は、歴史的に存続している。しかし、トランプに指名され、2019年2 月から連邦司法長官であるウイリアム.バァーは、特にこの規定を強調している。現在、トランプに対する多数の捜査はバァーによって強制的に停止されているため、トランプに対する犯罪調査は未解決のままである。
最高裁は12日、電話聴聞会を行ったが、今日判定は行わず、6月に最終的に決定する予定である。聴聞会の論争の焦点は下院議会に、大統領の個人的な書類を召喚する絶対的な権力があるかどうかである。トランプに指名され2017年4月に就任したニール.ゴーサッチは、最高裁は下院の絶対的な召喚の権利力に「固執するべき」ではないと述べた。トランプの二人目の指名者であり、学生時代に女子学生に対する強姦の歴史があるとして、下院議会の公聴会に召喚されたが、2018年10月に最高裁の空席を獲得したブレット.カヴァナフは下院議会の権力と大統領職のいずれも保護するべきであると述べた。又、最高裁判事間で、現職下の大統領に対して、いかなる犯罪調査及び告訴を禁じている司法省の方針に対する論議もあった。この方針に同意する幾人かの保守系判事に対して、リベラル派を代表した女性判事エレナ.ケーガンは「私たちの憲法秩序の基本的な規律は法の上の立つ者は存在しない」ため、大統領も法律を遵守しなくてはならないと反論した。
12日の聴聞会に関連するトランプに対する最高裁の最終決定は6月に予定されているが、その判定は3つのシナリオから予測することが可能である。例えば、⑴ 下級裁判所の決定を尊重し、財務書類を提供するようトランプに命令することである。⑵ これとは逆に提供する必要はないと判定する。⑶ 正当に判断可能な判例ではないとして、決定を却下することである。この最後のシナリオでは、最高裁がこの判例は政治的要素があるため、最高裁の管轄ではないと判定した場合、他全ての下級裁判所はこの問題に引き続き関与できない事を意味するため、下級裁判所がトランプの財務書類の召喚に従うよう命令した判定は無効ということになる。この2と3のシナリオではトランプにとって勝利を与えるが、現時点では彼に対する犯罪調査の保留は、あくまでも彼が大統領である期間のみである。従って、トランプが大統領選に敗北した場合、2020年1月のある時点から、彼は一市民として再び同じ犯罪調査下に置かれる可能性がある。
今日の最高裁の電話公聴会は、昨年まで続いていた法的紛争の延長線である。トランプはキャンペーン当時から約4年間、納税申告書を含めて、全ての財務情報を秘密にしている。彼は、脱税又は税金詐欺、ロシアの資金洗浄などの疑惑に加えて、性的関係があると主張した二人の女性に支払った経過において、選挙財政法違反の角度からも調査の対象になっている。ニューヨーク市は税金詐欺のケースで調査をしているため、最高裁はそのような調査を行っている市の法務執行当局に対して、どのような規定に基づき、トランプに対する財務書類の召喚をブロックする権利があるのか疑問である。トランプの財務書類を召喚した複数の下院委員会は、憲法上の弾劾の権力に基づいているが、最高裁が下院委員会に対して、合法的根拠が乏しく、政治的動機に基づいていると判断した場合、その召喚を却下する可能性はある。又、トランプは2018年12月の時点で、17件の調査の対象になっていたが、その中で、Statute of Limitation (法定時効)の規定下に属する犯罪があり、一定の期限内に告訴されない場合、無効になる。従って、トランプの再選と彼に対する犯罪捜査の成り行きは無関係ではない事を示唆している。政治的及び将来の大統領職にも多大な影響のある最高裁の6月の決定は大統領選にも影響があるため、非常に重要である事を示唆している。