英語でポリティカル・フラッグメンテイション(Political fragmentation)と呼ばれる政治的断片化は、現実のアメリカの政治に見られる風潮である。一般的に、断片は文字通り、何かが幾つかの断片に分割されることを意味する。従って、政治も一人の指導者によって統一された中央政権的な政治ではなく、複数の指導者によって断片化されるプロセスに言及している。政治的断片化の礎は、既に1950年代中期から築かれて始めていた可能性がある。現在見ている議会の機能不全も、その悪い側面である。
米国では、第二次世界大戦が終焉した約10年後までに、中産階級が郊外に進出したことで、雇用機会を含む経済活動と人口動態的変化は、政治の中心地である都市から郊外に向かった為、政治の中心から外側への発展につながった。これは、白人は郊外へ、黒人は都会に集中するという人種分離を促進する結果になった。常に制限を課せられていた黒人は自由な移動を認められていなかった為、基本的に大都会の狭い地域社会に留まり、生活していた。人種差別や人種分離は、政治的体制によって強化され、政治的断片化が人種的側面でかなりの影響を及ぼした歴史的な例である。政府機関は、その管轄地域の住民に合わせた公共サービスを提供していたため、中産階級と少数民族または貧困者とは自然に分離することを可能する制度的人種分離が存在していた。現在、郊外には、教育水準がそれほど高くない白人保守派が多いことで知られている。
政治的断片化の影響は、バイデン政権が現在直面している統一の困難性と、彼の課題を制定化することがどれほど容易でないかを議会の動きが示している。米国では共和党と民主党の二党政治であるが、それぞれの党には、少なくとも3つの派閥により、政治は益々細分化されており、それぞれのグループのリーダーが、政治の中心的役割を果たす人物として台頭している。例えば上院議会の共和党は主流派と極右派に分裂し、民主党は穏健派と二人の民主党保守系議員に分離している。下院議会の共和党は主流派、保守系、極右派に別れ、民主党は穏健派、保守系、進歩派がそれぞれ異なる主張をしている。そのように政治家の断片化が勢いを増している為、有権者も断片化する状況になり、彼らが目指す政策を大統領が達成できない場合、大統領の支持は低下し、主流の政党や指導者は極端な指導者に押される場合もある。この断片化は、移民や環境問題を含む幅広い課題の中から、多くの有権者がそれぞれ最も重視する政策に焦点を合わせていることに一因がある場合もある。議会の指導者が多様化した場合、機能的な政府の運営を達成することは非常に困難になる。
政治的断片による議会機能不全はすでに、少なくとも10年以上前から続いている。この政治的断片化は、過激主義が強化された場合、民主主義を脅かす側面も多々ある。二党性である共和党と民主党が現在、多様な政策と政綱を代表し、断片化がより明白になっている。その極端な例は、1月6日に米国で起きた前代未聞の政府転覆の反乱事件である。民主党が大統領になった場合、白人至上主義は陽の目を見ない為、また、この事件の暴徒らが反対する移民は優遇される可能性があるため、彼らが支持する大統領の敗北を認めることは出来なかった。しかし、米国は、前大統領の傾向性が示した権威主義を基盤にした政府体制づくりにまで進んでいなかった。故に、選挙結果を変えるため、選挙詐欺の虚偽の主張を繰り返した当時の大統領を信じた右翼過激派によるクーデターは成功しなかったが、これは、民主主義が脅かされた最初の米国市民による歴史的暴乱であった。
また、政治的断片化は様々な政策課題またはイデオロギーによって推進される場合もある。それらは、米国第一主義で人気を集めたドナルド・トランプがアピールしたように、グローバリズムへの反応として、再度台頭したナショナリズムが挙げられる。ナショナリズムは、ヨーロッパ諸国でも見られたような移民排斥運動にも繋がっている。米国では2020年1月20日まで約4年間、移民の合法性に関係なく、移民排斥運動は静かに進行していた。また、米国では社会主義が大幅に復帰し、特に貧富の格差に問題を提起する若い人々の間で復活した時期があった。例えば、2016年の大統領選では、民主社会主義者の上院議員バーニー・サンダースは、富の不平等を修正する目的で、全ての人々に教育の機会を開くため、大学の無料教育を押したが、共和党議員らは、彼の政策は社会主義であると批判した。しかし、サンダースは大勢の若い有権者に支持された。ヒラリー・クリントンが最終的に民主党候補者として指名された時、彼らの多くは、サンダースが候補者でない場合、他の誰も支持しないと宣言した。有権者はそれぞれ、彼らにとって重要な幾つかの課題に集中しているため、大統領選の候補者は、幅広い問題で有権者に支持されることは益々困難になっており、これも政治的断片化を反映している。議会も断片化しているため、絶望的に分裂した状況が続いている。
また、オンライン情報、ソーシャル・メディアの発展により、陰謀説や誤情報を含む多様で巨大な量の情報が溢れている中で、情報取得の方法、読む情報も多様化し、政治的に中立的、伝統的、正統派の情報は少なく、人々は政治への確信を失っている側面もある。情報の混乱も政治的断片化を促進している一側面かもしれない。ヒラリー・クリントンはロシアの情報当局によって、選挙前にソーシャル・メデイアに流された驚異的な誤情報によって、選挙を失ったが、人気投票では300万票トランプより超過していた。引き続き2022年も、政治的断片化は残ったままであるかもしれない。少なくとも、それが一掃されることは期待できない。