ロシアへの制裁は世界経済に多大な影響を与えるか?

世界中の人々をショックに陥れているロシアのウクライナでの戦争が益々激化している中で、経済専門家は、ロシアに前代未聞の制裁を課した現在の状況が世界経済にどのような影響を及ぼすかについて語っている。ノーベル経済学者のポールク・クルーグマンは1970年代の石油ショックより壊滅的ではないと述べている。一方、他複数の専門家は、Covid-19で弱体化された世界経済は引き続き脆い中で、ロシアに課されたエネルギーと経済制裁は深刻化すると予測し、さらに、経済成長が鈍化する一方でインフレーシンは更に悪化させると述べ、1970年代に世界経済を揺るがした時の状況を連想させている。

ロシアに対する経済的制裁は、すでに明らかに深刻な影響を及ぼしており、更に強くなる可能性がある。大きな疑問は、これらの経済制裁が世界経済に多大な影響を及ぼすかということであるという。ノーベル受賞経済学者のポールク・クルーグマンは、ニューヨーク・タイムスへの寄稿で、プーチンがウクライナでの戦争を引き起こした結果としての世界経済を「プーチン・ショック」と呼び、「暫定的な答え」として、結果は「悪いことになるが、壊滅的ではないではない」とし、それは「1970年代に世界経済を揺るがした石油ショックほど酷いものではないようである」と述べている。クルーグマンは、プーチンが「想像していたよりも、彼は遥かに悪い結果に直面しており、特にウクライナとロシアでの出来事は、世界経済に深刻なコストを課します。問題はどれほど深刻なのかということです。」と述べている。

1970年代に世界経済を揺るがした石油ショックほど、深刻ではないとする理由について、クルーグマンは最初にエネルギーの問題から、次のように説明した。⑴ ヨーロッパがロシアに対して課している制裁は、石油とガスの輸出には著しく適用されていない。米国はロシアからの石油輸入を禁止しているが、アメリカは他の場所で購入でき、ロシアは他の場所で販売できるため、これはそれほど重要ではない。しかし、市場は将来の制裁によって、又は世論の反発を恐れている世界のエネルギー会社がロシア原油の購入を「自己制裁」しているため、供給が中断されるかのように反応している。⑵ 実際のインフレ調整後の石油価格は、ほぼ1979年のイラン革命の際に打撃があったレベルまで上昇した。ロシアは主要な石油生産国であるが、それは世界の生産量の約11%を占めているだけである。ペルシャ湾の生産者は1970年代に世界の石油の3分の1を抽出した。 ⑶ ロシアは西側の制裁にもかかわらず、その石油のかなりの部分を販売する方法を発見するはずである。⑷ 世界経済は以前よりも石油への依存度がかなり低くなっている。石油の「強度」を示す、国内総生産の1ドルあたりに消費される石油のバレル数は1970年代の半分である。⑸  天然ガスについては、ヨーロッパがその供給の多くをロシアに依存しているが、ガス消費量は季節性が強い。従って、ロシアの混乱の影響は今年後半まで、それほど大きくはなく、ヨーロッパが脆弱性を軽減するための措置を講じる時間を与えている。

また、他の経済制裁で、エネルギーより大きな影響がある分野は食糧、特に小麦の価格が大きな問題になる可能性があると述べている。プーチンの戦争前は、ロシアとウクライナを合わせて、小麦輸出は、世界の4分の1以上を占めていた。現在、ロシアは制裁を受けており、ウクライナは戦争地帯であるため、当然のことながら、小麦の価格はロシアがウクライナ周辺で軍隊を配置し始める前の1ブッシェルあたり8ドル未満から、現在約13ドルに急騰している。北米やヨーロッパのような裕福な地域では、この価格の高騰は苦痛であるが、先進国の消費者は、単に彼らの収入の比較的小さな割合を食糧に費やしているので、ほとんどの場合許容できる。しかし、食糧が家計の大部分を占める貧しい国々にとって、ショックは遥かに深刻になる可能性があると述べている。

クウクライナでの戦争が経済政策にどのような影響を与えるかについて説明したルーグマンは石油と食品の価格が高騰すると、インフレ率が上昇するが、これはすでに不快なほど高くなってる。連邦準備制度理事会(FRB)が金利を引き上げ、経済成長に打撃を与えることで対応するかどうかについては「おそらく、そうしない」とし、FRBは長い間、不安定な食料価格とエネルギー価格を除外した中核的なインフレに焦点を当ててきたため、「プーチン・ショックは、FRBが通常無視するような出来事である。そして、その価値については、まさに投資家がそれを行うと信じているようである。今後、数か月にわたるFRBの政策に対する市場の期待はまったく変わっていないようである」と述べている。全体的には 、西側が課したプーチンに対するエネルギー制裁の危機は深刻であるが、おそらく壊滅的ではないと結論づけた。

しかし、他の経済専門家はルーグマンより、もっと深刻であると考えているようである。ウォール・ストリート・ジャーナルが7日に伝えたところによると、既にCovid-19パンデミックによって、世界経済の弱体化は現在も続いているため、商品価格の高騰、徹底した経済制裁、ロシアがウクライナに侵入した後のロシアからのエネルギー輸入禁止は、経済的成長を更に阻害すると述べている。経済専門家は、特にヨーロッパで、1970年代に主要経済国を苦しめた高インフレと低成長によるスタグフレーション(経済成長が鈍化する一方でインフレが上昇する状況)の可能性についての警告を益々高めている。その当時、中央銀行は石油価格の高騰に対応し、賃金と価格の急増を引き起こした金融緩和政策を採用していた。ドイツ銀行の戦略家であるジム・リードは「商品価格の動きがこれに益々似ているため、1970年代との比較を無視することは益々困難になる」と予測した。

 FRBのジェローム・パウエル議長は先週、議会での公聴会で、ロシアのウクライナ侵攻はインフレを押し上げる可能性が高いと語り、4分の1%ポイントの利上げを提案し、「非常に困難な環境で意思決定を行う時は、注意深く機敏である必要がある」と述べた。また、バラク・オバマ大統領の政権下で、国際経済問題の上級政策立案者であったクリストファー・スマート博士は「これほど包括的且つ強力で、突然この規模で世界経済にとって重要」な経済制裁が課せられた例を「見たことはない」と述べ、グローバル企業間の不確実性は、2008年9月のリーマン・ブラザーズの崩壊に伴うものを彷彿させると述べた。資本経済の専門家は、ウクライナでの戦争がユーロ圏の経済成長を最大2%ポイント低下させ、ロシアの企業に対する西側の制裁、企業によるロシアとの関係の自主的切断、更にロシアの深刻な不況は、ロシアへのユーロ圏の輸出を大幅に減らす可能性があると予測している。ロンドンにあるフィディリティ・インターナショナルのマクロおよび戦略的資産配分の責任者サルマン・アーメドは「これは、特にロシアからの現物商品の流れが今後数日から数週間で大幅に中断された場合、ヨーロッパでの完全な景気後退のリスクが急激に高まっていることを意味します。」と述べた。

ロシアがウクライナで戦争を開始して二週間が経過した9日、18番目の医療施設がロシア軍に爆破された。最新の攻撃は、ウクライナ東部の都市マリウポリにある妊産婦病院であったことで、その攻撃者の残酷性と被害者に対する哀れみを強調する報道が目立っている。しかし、ウクライナの首都であるキエフと主要な都市のひとつであるハリコフは、激しい抵抗を続けているウクライナ軍がコントロールしている。同国の兵士は、西側が急速に送った多量の軍用武器によって、活気づいているようである。ご承知の通り、米国および欧州諸国はロシアからの石油と天然ガスの輸入を禁止し、ロシアに進出していた米国企業の300社は、昨日までに彼らの事業を閉鎖した。9日のワシントン・ポストによると、昨日(8日)閉鎖したマクドナルドは、ロシアの850軒のチェーン店で勤務する合計62,000人の従業員に支払いを続けながら全ての店舗を一時的に閉鎖すると発表した。マクドナルドは1990年にモスクワに店舗を創設して以来30年以上、ロシアの市民に親しまれていたという。

ウクライナでの戦争がいつまで続くのか不明な中で、世界経済の影響に関する専門家の見通しには、例外なく、見解の相違があるようである。いずれにしても、益々孤立化し、怒っており、苛立っていると見られているプーチンの今後の動きによっても変わる可能性があるかもしれない。ロシアの大統領は、抗議者を拘束し、戦争と呼ぶ市民を15年間投獄するという法律の制定を推進した。また、今週月曜日までに、かなり多くのロシア人も自国を去っている。最近、20,000人から25,000人のロシア人はジョージアに入ったと同国の経済大臣レヴァン・ダヴィタシビリは7日に語ったと報告された。これは、ロシア人によるロシアからの逃亡の最初の波である。更に、プーチンの精神状態に注意を払っている米国諜報当局や一部の議会メンバーは、彼が自暴自棄に陥り、核兵器を突然使用しないかどうかについての懸念を表面している。その脅威的な事態が起きた場合、どの規模の核兵器をどのような頻度で利用するかによっても異なるが、1970年代の石油ショックと比較しているような次元を遥かに超えた壊滅的な状況になることはほぼ確実である。米国とNATOは、核戦争を避けることを非常に強く意識していると言われているが、ウクライナ市民が毎日殺害されている現状で、この流血の惨事を一刻でも早く終えるため、プーチンと直接交渉するための西側の努力は不足しているように見える。

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