続編1:イスラエル対ハマスの戦争は米国社会に多大な影響 

親イスラエルのデモ参加者 コロンビア大学のキャンパス                       Photo credit : The New York Times

10月7日にハマスがイスラエルを攻撃後、10月末までにガザ地区では8,500人以上が殺害された。米国とイスラエルの両国が停戦要求を拒否したため、イスラエル国防軍はここ数日、ガザ地区での作戦を「拡大」し、部隊と装甲戦車を追加した。イスラエル対ハマスの戦争が勃発し、全米の大学のキャンパスで親パレスチナと反ユダヤ主義の抗議活動が始まり、中東での戦争に対する米国での反応は物騒なものになっている。

ドイツにおけるユダヤ人の生活と反ユダヤ主義と戦う連邦政府委員(Federal Government Commissioner for Jewish Life in Germany and Fight against Antisemitism)の解説によると、反ユダヤ主義を意味するアンティセマティズム(Antisemitism)は、ユダヤ人に対する敵意や憎悪を意味するが、反ユダヤ主義は実際のユダヤ人とは何の関係もない。国際ホロコースト記憶同盟 (IHRA) による反ユダヤ主義の国際的な実用的定義は「反ユダヤ主義は、ユダヤ人に対する特定の認識であり、ユダヤ人に対する憎悪として表現される場合がある。反ユダヤ主義の修辞的かつ物理的な表現は、ユダヤ人または非ユダヤ人の個人及び/又はその財産、ユダヤ人の共同体組織および宗教施設に向けられている」と言う。

また、反ユダヤ主義は常套句や固定観念によるもので、ユダヤ人がユダヤ人であるという事実を超えて、集団としての特徴を強調している。例えば、「ユダヤ人は金持ちである」、「ユダヤ人は貪欲である」、「特に権力を持っている」、など肯定的および否定的な形態の敵意を指すものである。中世時代、許可されていた仕事や活動は貸金業と商業のみであったユダヤ人を「高利貸し」、「金持ち」、「貪欲者」であるとする常套句は、この歴史的な差別に根ざしている。長い歳月の中で、多くのユダヤ人が貧しかったという事実は無視され、「強力なユダヤ人が密かに経済、メディア、政治制度などの糸を引いており、現代社会の複雑さを支配するという単純なモデルに還元」されている。また、「中世時代に新しく設立されたキリスト教は、それを祖とした宗教であるユダヤ教から距離を置き、共通のルーツを抑圧しようとしたため、宗教に基づくユダヤ人への憎悪が現れた」と述べている。

ワシントン・ポストが10月31日に掲載した取材記事によると、ガザ地区を支配する過激派組織ハマスに対するイスラエルの攻撃が激化している中で、大学キャンパスを含む全米の各地で、激しい抗議活動が展開されている。「パレスチナの主権と人権」を求める多くの集会のデモ参加者らは、一部のユダヤ人学生が脅威と呼ぶ「川から海までパレスチナは自由になる」という表現を変形して使っている。今月初めに厳粛かつ平和的なキャンドル徹夜集会が開催された。その後、抗議活動は「より醜い衝突」に変わり、ユダヤ人の大学生たちは反ユダヤ主義、イスラム嫌悪、嫌がらせ、さらには暴力の不安、恐怖、危険を感じた。30日、バイデン政権が大学キャンパス内での反ユダヤ主義を「憂慮すべき台頭」と表現する中で、一部のユダヤ人学生は、これまで以上に自分たちは弱い立場にあると感じていると述べている。ユダヤ人に対する偏見行為に対抗する「ストップ反ユダヤ主義」という団体は、10月7日のハマス攻撃以前に、毎日数件、時には数十件の事件報告を受け取ったと述べた。2018年に設立されたこの組織の事務局長を務めるリオラ・レズによると、現在毎日約500件の報告書が届いている。

ニューヨーク市のクーパー・ユニオンでは、親パレスチナ・デモ参加者が建物のガラス壁を叩くなかで、ユダヤ人学生たちは図書館に避難した。テイラー・ロズリン・レントは25日、クーパー・ユニオンで、親パレスチナ抗議が「純粋な反ユダヤ」集会に変貌するのを目撃したと語った。親パレスチナ・デモ参加者がガラスの壁の外に集まる中、レントは図書館にいる約12人のユダヤ人学生の中にいた。 彼女のグループにはユダヤ人であると特定できるヤムルケ(ユダヤ人のスカルキャップ)を着用した男性も含まれていた。レントによると、デモ参加者らはドアや窓をたたき、攻撃的に叫び、ユダヤ人学生を指差したという。彼女は、自分のユダヤ人としてのアイデンティティが嫌われていると感じていた」と語った。 親パレスチナ・反イスラエルの集会と反ユダヤの集会の間には明らかに大きな違いがあり、「日が経てば経つほど、反ユダヤ集会のように感じられました」と言った。クーパー・ユニオンの職員は生徒たちに、2階への付き添い、裏口からの出口、その後ウーバーに乗るなど、さまざまな脱出手段を提案し始めた。レントはさらに不安になり、「心の底では安全ではないと感じていました」と語った。クーパー・ユニオンでの事件は、ユダヤ人学生の安全と扱いについて懸念を表明した他の幾つかの事件に続いて起きた。事件後の記者団との会見で、ニューヨーク市警のパトロール責任者は、学生らに「直接的な脅威はなかった」とし、学生らは危険に晒されていなかったと述べた。 30日にワシントン・ポストに提供された声明の中で、クーパー・ユニオンの広報担当者はその点を繰り返し述べ、クーパーは「外部のセキュリティ・パートナーやニューヨーク市警と協力してキャンパスのセキュリティを強化した」と述べた。

ルイジアナ州ニューオーリンズのチューレーン大学近くで10月26日に行われた親パレスチナ抗議デモでは、デモ参加者の何者かがイスラエル国旗を燃やそうとした為、親イスラエル派のデモ参加者が国旗を奪おうとした。これが発端で始まった乱闘で、少なくとも学生2人が暴行を受けた。この集会は暴徒化し、ユダヤ人学生のディラン・マンが鼻を骨折する事態となった。その後の乱闘では、親パレスチナ人とみられる数人のデモ参加者が繰り返しマンを殴打した。ポスト紙のインタビューで、マンは治療のために病院に行った。マンは放心状態だったが、助けに来たチューレーン大学の「とても勇敢」な二人の女子学生に安全な場所に導かれたと語った。そのうちの1人、ナタリー・メンデルソーンは、ポスト紙にマンが「顔を殴られた」後に駆けつけたと語った。彼女は 「私の体中、そして彼の体中が血だらけでした。私の手にはユダヤ人の血が流れていた。とても非現実的で衝撃的でした」と言った。チューレーンのマイケル・フィッツ学長は声明の中で、集会での暴力行為を「非常に悲惨」だと述べた。同氏は「数名」が逮捕され、チューレーンのキャンパスへの立ち入りが禁止されると述べた。大学警察はキャンパス内での駐在とパトロールを強化する予定だという。 声明では「私たちの地域社会が30日の暴力によって深い影響を受けていることを十分に認識しており、このようなことが二度と起こらないようにする必要がある」と述べた。

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