
2023年9月:テキサス州エルパソの国境 Photo credit : Axios
下院共和党議員らは、国土安全保障長官アレハンドロ・マヨルカスを弾劾するようである。国土安全保障委員会は31日の朝に党派ラインでの投票で、バイデン政権のマヨルカス長官を弾劾することを認可した。法専門家は、マヨルカス長官が移民問題に大幅な決定権があるため、彼が弾劾される理由はないと主張している中で、来週予定されている下院全体での投票で決定すれば、マヨルカスは近代米史上、初めて弾劾される最初の閣僚になる。驚くことではないが、前大統領ドナルド・トランプの元法律顧問も含めて、ほとんど保守系の法専門家はマヨルカス長官が弾劾される法的根拠はないと述べている。
下院共和党の弾劾の主な理由は、不法に米国に入国することを防ぐための移民法に従わず、法律に違反したという主張に基づいている。ニューヨーク・タイムスの報告によると、トランプの元法律顧問の何人かは、マヨルカスには「憲法で定められた弾劾の基準である高度な犯罪や軽罪のレベルに達する罪は何もない」と指摘した。共和党議員らは、国土安全保障省長官が「移民法の特定の側面を守らないこと自体が憲法上の犯罪である」と主張している。また、「下院国土安全保障委員会が承認した弾劾条項は、強制送還対象の移民を国外追放するまで「拘留する」との移民・国籍法のいくつかの条項をマヨルカスが無視したとして彼を非難している。彼らは、長官が後に移民法廷に出廷して強制退去手続きを確実にすることが困難または不可能であることを承知の上で、入国を認められない移民を米国に入国させ「捕らえて解放する」方式を追求したと主張している。
しかし、タイムスによると、米国では、国家安全保障省の長官には「政府が移民をいつどのように拘束するかについて広範な権限がある。大統領とその政権は、国境を管理する広い裁量権を持っており、マヨルカスはその権限を超えたことはない」という。また、長官は、ベッドスペースが限られており、移民裁判所での長い滞留状況を考慮して、どの移民を優先的に収容するかを決定する法的権限も持っている。アメリカ移民評議会の政策責任者アーロン・メルニックは、収容義務の執行は「資源の問題」であることが多いと述べた。そして、弾劾記事の1つには、マヨルカスが「強制拘留から解放するために外国人を一斉に仮釈放した。これもまた法律を損なう意図があった」と書かれている。しかし、移民法は人道的理由、または入国が国民の利益になる場合、移民に一時的に米国に住み、働くことを許可する仮釈放権限を行政府に与えている。 誰を仮釈放するかについての決定はケース・バイ・ケースで行われ、その決定の際に、長官が考慮できる基準についての制限はないという。
米国議会には、政府当局者が贈収賄、反逆罪、又はその他の軽罪および重罪の証拠がある場合に、弾劾する権力があるものの、国土安全保障省の長官であるアレハンドロ・マヨルカスに対する弾劾は危険であり、警戒するべきである。弾劾に関する国内有数の専門家の一人であるミズーリ州法学教授のフランク・ボウマンは、「弾劾可能な『重大な犯罪と軽犯罪』の基本的な要件は、それらが並外れて深刻なものであり、政府の手続きや憲法秩序を腐敗または破壊する種類のものでなければならないということです」と述べた。マヨルカスに対する弾劾記事の執筆に向けて委員会が急ピッチで進めている中で、「選出された高職者の政策指示に従うことは、その高職者の政策目標を追求すること自体、弾劾されるべき権力の濫用ではない」と語った。又、保守派の弾劾専門家であるジョージ・ワシントン大学の法学教授ジョナサン・ターリーはここには弾劾されるべき犯罪はないと述べた。ターリーはデイリー・ビースト紙に「新たな証拠がなければ、閣僚との政策上の不一致を重大な犯罪や軽罪とする可能性なしに下院がマヨルカスを弾劾できる限定原則が見えません。それは滑りやすい坂道なので、避けるのが賢明です」と述べた。
要するに、米国には、収容に必要なスペースとベッドの数は限られている。そのような資源を増加するためには資金が必要である。下院共和党議員らは、国土安全保障省に対して、不法に国境を越える移動者に対して幾つかの措置を要求しているが、それを行うには資金が必要であるにもかかわらず、議会共和党はその提供を拒否している。従って、民主党議員らはこの弾劾は理不尽であると反発しているようである。国境での移民問題は、誰が大統領であり、誰が国家安全保障省の長官であったとしても、亡命を求めてアメリカに到着しようとしている人々の波を変えることはできない。それは、移民に非常に強固な政策を講じたトランプ政権下でも、国境に日々数千人の移民が押し寄せた時期が何回かある中で、2019年度に、米国で亡命資格が与えられた個人の数は約46,500人である。これは驚きの数値である。彼らは、国境で警備員に拘束されることを恐れておらず、むしろそれを望んでいる。国境にたどり着きさえすれば、一時的に拘留されても、米国に永住することができると信じているからである。亡命および難民の資格を得ることを望む人々は、国境であろうと、港であろうと、空港であろうと、どこにでも到着することが可能である。そのような人々を不法移民として強制送還することは国際法に違反するため、慎重に対処する必要がある。保守系の専門家さえ、バイデン政権のマヨルカス長官は弾劾に値する犯罪を犯していないと明確に述べている。故に、下院共和党の無意味な弾劾劇が成功する可能性はほとんどない。