機密書類の不法な取り扱いにより、スパイ法違反容疑の32の罪状で告訴された前大統領ドナルド・トランプの裁判を監督するフロリダ州の連邦地区裁判所の判事は、ご承知のようにトランプに指名されたアイリーン・キャノンである。トランプが全ての罪状に無罪を主張している中で、キャノン判事は、先月前例のない指示をしたことで、多数の法専門家は、その指示が非常に奇妙であり、法律を誤解しているとして反応した。米国司法省の長官メリック・ガーランドに任命された特別検察官ジャック・スミスは、昨夜(2日)の文書提出で、キャノン判事のその不適切な指示に対して、告訴上の法的理由に基づく厳しい反論を提起した。
キャノン判事は3月1日の聴聞会で、トランプの弁護士とスミスの検察官らに通常あり得ない2つの仮想シナリオに基づいて陪審指示を提出するよう求めた。1つは、大統領が大統領記録法(PRA)に基づく権限があるとして、ほぼ全ての記録を個人的なものとして分類する事ができるというものである。このシナリオでは、キャノンは「裁判所も陪審も」判決を検討する能力がない場合、特別検察官によるトランプに対する訴訟の大部分は無効になる可能性があると書いた。そして、別のシナリオは、陪審は元大統領が保管していた文書を調査し、PRAに基づいて、それが「個人的または大統領的」であるとの認定を下すことが可能であるとしている。このシナリオでは、陪審員が一部の機密文書が不適切に扱われたと判断する可能性があると主張した。
キャノン判事の指示に当惑した元判事を含む法専門家らは「非常に困惑するものである」と反応した。彼らは、キャノン判事の奇妙な二つのシナリオを認識した後、裁判がすぐに始まることはないと判断し、むしろ遅れる可能性が高いことを示唆した。カリフォルニア州の連邦裁判所の元判事で、現在バークレー司法研究所を運営しているジェレミー・フォーゲルは「裁判官としての30年間で、このような命令は見たことがない」と語った。フォーゲルは、そのような状況にある裁判官が指導を求めるのは不適切ではないと述べ、キャノンの命令は法的決定を順序立てる異例の方法であり、彼女は「本末転倒」しているかもしれないと述べた。フォーゲルは「より無邪気な解釈は、彼女が法的問題に関してどちらかの決断を下した場合、実際どのような影響があるかを理解しようとしているだけだということです。あまり慈善的ではない見解は、彼女が最初に法的問題を決定し、それから訴訟で法律をどのように執行するかを決定すべきだというものです」と語った。 マサチューセッツ州の元連邦判事ナンシー・ガートナーはキャノンについて、「彼女が当事者に求めたことは、非常に憂慮すべきことです。彼女は、表面的には不合理であると思われる議論に信憑性を与えています。 彼女は同様に不合理で、優先すべき他多数の申し立てを無視し、訴訟を不当に遅らせています」と言った。
ミシガン大学の法学教授で元米国弁護士のバーバラ・マクウェイドは「PRAはここではまったく関係がありません。それは防御を提供しません。裁判でそれを議論することを許可すれば、陪審に混乱が生じるでしょう」と語った。マクウェイドは、他の多数の公判前申し立てに先立ってこれらの疑問に取り組むというキャノンの決定は「時期尚早で不可解」であると述べた。元国立公文書記録管理局の訴訟部長ジェイソン・バロンは「このケースで問題となっている機密文書が大統領の記録であることには疑いの余地はありません。彼は新聞の切り抜きを取ったために起訴されませんでした。彼は機密としてマークされた文書を持ち出したために起訴されました」と語った。バロンは「これまで大規模な国家安全保障裁判を監督したことがないキャノン判事は『不思議の国のアリス』の女王のように、法律について空想的な見方をしているようです。少なくとも2つのあり得ないことを信じるように陪審員に求めているようです。第一に、大統領は、単に自分のために保管すると決めたからといって、『極秘』とマークされた文書が彼自身の個人的な記録であると決定する自由な裁量権を持っているということです。第二に、大統領はPRAの下で機密記録が実際に自分のものであると判断したため、スパイ法に基づく刑事訴訟を回避できるということです。 どちらのケースでも、裁判官は法律を大きく誤解しています」と語った。
特別検察官ジャック・スミスは、キャノン判事がスパイ行為法第793条を何らかの形で無効にするという「根本的に欠陥のある法的前提」を追及していると述べ、事件を混乱させる可能性のある指示に強く反撃した。トランプは彼の大統領任期を終えた後、フロリダ州の自宅マー・ア・ラゴに数百件の機密文書を隠し保管し、返却を求めてもそれに応じず、回収を妨害したとして同法に違反したため告発されていると説明した。スミスはキャノン判事による「その法的前提は間違っており、その前提を反映した第793条に対する陪審の指示は裁判を歪めることになるだろう」と書き、大統領記録法は「裁判においていかなる役割も果たすべきではない」と述べた。スミスは多くの法学者と同様、PRAはトランプ大統領が犯したとされる国家安全保障上の犯罪とは何の関係もないと述べ、裁判が始まるまでこの問題に関する判決を待っていれば、陪審に審理される前に連邦刑事訴訟は破滅する可能性があると警告した。スミス特別検察官は、キャノン判事に対し、ドナルド・トランプの機密文書事件を担当する裁判官が追求している法的前提は「間違っている」と警告し、連邦記録法を誤って解釈し、PRAに対する弁護側の主張を支持する場合、おそらく控訴裁判所に控訴すると述べた。このような判決に対して政府が控訴すれば、裁判を長引かせるだけであり、キャノンの判決は「歴史的な事件を骨抜きにする可能性がある」という。スミスは、「もし裁判所がその基本的な法的問題についての判決を延期した場合、裁判は大幅に遅れ、さらに悪いことに、危険が高まる前に政府が再検討を求めることができなくなるだろう」と書いた。
前大統領トランプは、スパイ活動法違反の32件の容疑について無罪を主張している。それぞれの罪状は、ホワイトハウスを去った後、マー・ア・ラゴに保管したとされる「特定の機密文書に対応」しており、さらに「文書回収に向けた政府の取り組みを妨害した8件の追加容疑」に対しても無罪を主張した。トランプの弁護士らは、元大統領にはPRA下で極秘文書であっても個人の記録および財産であると宣言する権限があると主張している。被告側の弁護士は2日深夜の提出文書で、キャノンの指示は「違法な資料保持ではなく、大統領としての公式行為に基づいているというトランプの立場と一致している」と述べた。
要するに、キャンノン判事が3月1日の公判前の公聴会で両側の当事者に奇妙な指示をした後、多数の法専門家は、非常に奇妙で危険な指示であるとして強く警告した。元検察官や法律家らは、大統領記録は国民の財産であり、大統領任期終了後に国立公文書記録局に引き渡されると定めた法律をトランプの弁護士らは大きく誤解していると述べている。法律専門家らは、裁判が差し迫っておらず、キャノン判事は公判前の手続きでまだ多くの決定を下さなければならないプロセスの初期段階で、陪審への指示に重点を置くのは奇妙に見えると述べている。また、キャノンの命令の前提には、トランプの弁護士や支持者らが押し進めてきた法律の解釈の混乱が混同しているという。国家安全保障弁護士や元判事らは、キャノン判事が大統領記録法や機密文書関連法をひどく誤解していると述べているが、おそらく、彼女はPRAを誤解するほど愚かではなく、単に裁判を遅らせることを意図しているのではないかとの印象もある。彼女は、最初5月20日に予定していた裁判日程を変更したものの、まだ新たなスケジュールを設定していない。いずれにしても、特別検察官ジャック・スミスは、多くの専門家の公的意見に支えられ、確信を示唆した2日夜の提出文書の中で、キャンノン判事が間違った判定をする場合、上訴すると宣言した。