ハバナ症候群の原因を調査した複数の合同機関の驚異的報告

Photo credit : VOA モスクワの軍事諜報機関(GRU)

実際の症状が報告され始めたのは2016年5月からであるが、2017年から注目されるようになったミステリアスな「音響攻撃」によって、ハバナの大使館で勤務していた米国複数の外交官は頭痛、難聴、その他の「異常な症候」による深刻な健康問題に直面した。その後も続いていた捜査で、米国政府の5つの情報当局は、昨年3月初旬にこの「ハバナ症候群」の異常な症候は外国の敵による秘密兵器によるものでないようであると結論づけた。しかし、ロシアに焦点を当てた米国とドイツの報道機関の合同調査グループは、その結論に異議を唱えていた。このグループはそれから約一年後に驚異的な調査結果を報告した。

ロシアは米国人をターゲットに暗殺を計画しているとの長年の疑惑もあり、アメリカとドイツによる報道関係者による共同捜査が行われた。「ハバナ症候群」は過去10年間で多くのアメリカ外交官や諜報員が経験した痛みが伴う原因不明の医学的現象である。犠牲者は突然、急性の片頭痛を訴え、その後、頭痛及び目眩などを訴えていた。この為、バイデン政権と議会は、仕事を続けることができなくなった被害者に補償を提供する法案を制定した。政府下で働く労働者が就労不可能になるほど酷い健康障害に直面した場合、政府は彼らを経済的に援助する義務がある。

一年間の調査に基づくインサイダーによる10章に及ぶ完全な調査報告書は、「ハバナ症候群の解明:GRU暗殺部隊29155と米国当局者とその家族に対する不可解な攻撃を結び付ける新たな証拠」とのタイトルで、3月31日に公開された。ドイツのニュース雑誌シュピーゲルおよびCBSの番組『60分』の調査員らと協力して、ロシアに焦点を当てた調査を実施した報道機関インサイダーが長期的調査の結果として報じたものは、異常な健康事件の起源がモスクワの軍事諜報機関(GRU)部隊29155のメンバーが使用した指向性エネルギー兵器の使用にある可能性があることを示唆する証拠が発見されたことである。これは、外国勢力の仕業である可能性が非常に低いという複数の米国諜報機関による以前の主張とは鋭く異なっていることを示している。クレムリンの「悪名高い軍事諜報破壊部隊」のメンバーは、海外の米国政府関係者とその家族に対する攻撃が疑われた現場に配置され、被害者らはハバナ症候群の起源について、米国政府と議会が何を知っているのか、そして西側の適切な対応は何であるかに疑問を抱くようになった。

これらの調査記者らは、被害者へのインタビュー及びオンラインでの検索による優れたスキルに基づいて、米国の諜報機関が理解している「世界中で致死作戦や妨害行為」に従事しているロシアGRUの一部門である29155部隊と音響攻撃との間に様々な関連性があることを発見した。29155部隊の隊員は、幾つかの異常な健康事件の現場に配置された。さらに驚くことに、記者らは部隊の上級メンバーが「非致死性音響兵器」の研究で受賞していることを発見したことである。ロシアでは「音響兵器とは、音響または無線周波数に基づく指向性エネルギー装置」に言及する。

被害者へのインタビューの中で、もっとも注目された報告の一部は、ジョージア州トビリシに住む米国人看護師で米国大使館職員の妻であるジョイの体験談である。2021年10月7日、ジョイは、乾燥機から洗濯物を取り出していたところ、爆弾が落ちた瞬間のような鋭い音に完全に圧倒された。彼女は「すぐに頭に膨満感を感じ、刺すような頭痛がした」と言った。ジョイは自宅2階の洗濯室から飛び出し、主寝室に隣接するバスルームに逃げ込んだ。 それから彼女は嘔吐した。海外で勤務する米国職員の配偶者である彼女は、海外でのサバイバル訓練を受けており、何かおかしいと感じたら、最初に行うべきことを思い出した。突然の頭痛に直面しながらもジョイは家の玄関にある防犯カメラをチェックし、誰かが外に出ていないかどうかを確認した。黒いメルセデスの車が彼女の敷地の門のすぐ反対側にあるランドリー・ルームの真向かいに駐車されていた。 ジョイが外に出ると、その時、背が高くて痩せた若い男性を見た。彼女は彼の写真を撮ろうと携帯電話を上げた。ジョイは「まるで彼は私と目を合わせているようでした。彼は私が何をしているのか知っていました」と語った。 それから彼はメルセデスに乗り込み、走り去った。彼女は発進する車とそのナンバープレートの写真を撮った。彼女は3年後、モスクワの悪名高いGRUの暗殺および破壊活動部隊である29155部隊に所属するロシアの工作員、アルバート・アヴェリヤノフの写真を見せられるまで、その男に再び会うことはなかったと語った。つまり、ジョイは彼女が目撃した男性が誰であるかを知らされたのである。この遭遇が起きたとき、アルバートはまだ23歳であったが、29155部隊の創設司令官であるアンドレイ・アヴェリヤノフ大将(56歳)の息子であった。アルバートは現在GRUの副長官であり、アフリカにおけるクレムリンの外交政策を運営する任務を負っている。

調査完了後に、その報告書を公開したインサイダーは、ハバナ症候群としても知られる原因不明の匿名の健康事件は29155部隊の隊員が使用した指向性エネルギー兵器の使用に端を発している可能性を示唆する証拠があると述べている。この調査の中心的な発見の中に、部隊の上級メンバーが「非致死性音響兵器」の開発に関連した仕事で、褒美や昇進を受け取ったという事実がある。この用語は、ロシアの軍事科学文献で音響と無線周波数の両方を表すために使用される。どちらも被害者の脳に珍しい音響を引き起こす可能性がある。米国政府が正式にハバナ症候群と呼ぶ場合に報告された異常な健康事件の直前またはその時点で、これらおよびその他の潜入捜査を行っている 29155 部隊所属の工作員は、世界中で彼らが位置する場所の情報が特定されている。さらに、自宅周辺に潜んでいるロシアの秘密工作部隊の既知のメンバーを特定した被害者はジョイだけではない。最初の目撃はちょうど7年前に起こった可能性がある。

 2016年にキューバの首都ハバナで始まった症候群について公表されている情報に反して、その2年前にドイツのフランクフルトで何かに襲われた事件があった可能性もあった。その際、領事館に駐在していた米国政府職員が強力なエネルギー線のようなもので打撃を受けて意識不明となった。その後、被害者は外傷性脳損傷と診断され、ジュネーブに拠点を置く29155部隊の工作員であることが判明した。この事件は、2014年のロシアによるウクライナ侵攻から数カ月以内に起きた。この侵攻では、2014年2月と3月にクリミア半島が密かにほぼ無血で制圧され、ロシアとウクライナの国境に近い東部の工業の中心地ドンバスで汚い戦争が勃発した。これらの報道機関は、これまでに遠く離れた米国の100人以上の諜報員と外交官および数人のカナダ政府関係者が謎の病状の影響を受けたことを発見した。ロシアに関する経験豊富で、言語に堪能である専門家は、そのもっともらしい原因は、29155部隊が兵器化技術を実験していたことに関連していることを示唆している文書証拠を発見した。他の人たちは中東やラテン・アメリカなど様々な分野の専門知識を保持しているが、クリミア占領後、ヨーロッパと北米全域でのロシアの侵略と諜報活動に対抗することを目的とした米国政府の機密性の高い役目に割り当てられた。インサイダーを含む調査報道機関はさらに、29155部隊が米国諜報機関内で悪名高いことを示す文書証拠を発見した。ロシアの専門知識を持つ元CIA高官はインサイダーに対して「彼らの範囲は世界規模で、致死作戦や妨害行為を行っている。彼らの使命は、ウラジーミル・プーチン大統領の帝国の夢を支援するために、発見し、修正し、完成させることである」と語った。

最後に、この報告書は、ほぼ前半部分で調査の要点が述べられている。その重要な情報の一つは、ジョージア州トビリシに住む米国大使館職員の妻の勇敢な行動によるものである。彼女が素早く対応をしたことで、この著名な発見の一部につながっている。攻撃のパターンは、標的となったアメリカの諜報員や外交官及びウクライナと協力したCIAを含む外交官がロシア問題に取り組んでいるか又は働いていたことを示唆している。ロシア関連の調査やウクライナと連携を取る仕事に従事する人々が異常な音響攻撃に遭遇しているという報告は、2017年の時点で、ロシアに対する疑惑が浮上したため実際にはさほど驚くことではないが、メディアが昨年3月の米国政府の報告に異議を唱え、ドイツの記者との合同調査を一年間も行っていた事自体は驚きである。29155部隊は、ロシアのGRU部隊のメンバーに言及し、米国外交官及び彼らの家族が経験している「ハバナ症候群」の原因は、この部隊が使用した「指向性エネルギー兵器」による可能性が高いということである。つまり、29155部隊は「暗殺と騒乱を専門とするロシアの特別スパイ部隊」であるが、米国の外交官とその家族が「非致死性音響兵器」の開発のための実験に利用された可能性が高いことを示唆している。つまり、29155部隊の上級隊員たちは、この特定の音響兵器の実験を成功させる任務を負っており、その成功による報酬を受けていたという。

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