加えて、大量強制送還の直接的な経済的コスト以外にも、米国経済への影響は著しい。米国の産業全体で労働者が失われるため、大量強制送還によって米国の国内総生産 (GDP) は 4.2 ~ 6.8% 減少することが判明した。また、米国政府の税収も大幅に減少する。2022 年だけでも、不法移民世帯は連邦税として 468 億ドル、州税と地方税に293 億ドルを支払った。不法移民は、社会保障に 226 億ドル、メディケアに 57 億ドルを拠出した。大量強制送還は、複数の主要産業で大きな労働ショックを引き起こし、特に建設、農業、歓待ビジネスに深刻な影響を及ぼす。建設業界で雇用されている労働者の推定約 14%は不法移民であるという。その労働力を排除すると、住宅から企業、基本的なインフラまで、全国のあらゆる形態の建設が混乱することになる。産業が打撃を受けると、何十万人もの米国生まれの労働者が職を失う可能性がある。これらの数字は、大量強制送還の人的コストを捉えるのにはほど遠いものである。2022年の時点で、米国には約1,100万人の不法移民が住んでおり、これは米国全体の人口の3.3%に相当する。さらに2023年1月から2024年4月の間に米国で解放された230万人の強制送還対象移民が大量送還の対象となると予測されている。
これらの移民を強制送還する1回限りの作戦には、少なくとも3,150億ドルの費用がかかる。その内訳は以下の通りである。
- 政府は十分な逮捕を行うために893億ドルを費やす必要がある。
- 政府は移民を大量に拘留するために1,678億ドルを費やす必要がある
- 政府は法的手続きに341億ドルを費やす必要がある。
- 政府は強制送還に241億ドルを費やす必要がある。
年間100万人の移民を強制送還するには、年間880 億ドルの費用がかかり、その費用の大部分は収容所の建設に充てられる。対象となった 1,330万人の移民全員を逮捕、拘留、法的手続き、強制送還するには、10年以上かかり、数百から数千の新しい収容施設の建設が必要になる。たとえ、数年にわたる大量強制送還の取り組み中に、その人口の 20% が自発的に出国すると仮定しても、この数字に変化はない。年間インフレ率を 2.5% と仮定した場合、10.6 年間での総費用は9,679 億ドルになる。年間費用の内訳は以下のとおりである。
- 政府は年間 100 万人の逮捕を行うために、年間平均 70 億ドルを費やす必要がある。
- 政府は年間 100 万人の移民を拘留するか、拘留能力が 100 万人に増加するまで、拘留プログラムの代替手段で彼らを監視するために、年間平均 660 億ドルを必要とする。
- 政府は年間平均100万人の移民の法的手続きを行うために、年間平均126億ドルを費やす必要がある。
- 政府は年間100万人の移民を追放するために、年間平均21億ドルが必要である。
短期間で 1,300 万件以上の逮捕を行うには、220,000から 409,000 人の新しい政府職員と法執行官が必要になるが、法執行機関全体の現在の採用難を考えると、これはほぼ不可能である。年間 100 万件の逃走中の逮捕を行うだけでも、ICE は 3 万人以上の新しい法執行官と職員を雇う必要がある。
さらに、大量強制送還は米国の労働力不足を悪化させる。2022年には不法移民の約90%が労働年齢層であり、米国生まれの16歳から64歳の人口の61.3%と比較して、不法移民が労働力に積極的に参加する可能性が高い。これらの労働年齢の不法移民を失うことは、多くの業界が過去数年間にすでに苦労してきた深刻な労働力の問題をさらに悪化させる。特に、不法移民労働者に大きく依存している米国の主要産業に打撃を与える。建設業と農業では少なくとも労働者の 8 人に 1 人が失業し、接客業では約 14 人に 1 人が強制送還される。これらの産業の中でさらに大きな打撃を受ける特定の職業は、左官、屋根葺き、塗装工などの主要な建設業の労働者の 30% 以上、農産物の選別作業員の 28% 近く、そしてハウスキーピング作業員の25%が強制送還されることになる。
また、国外追放される人の中には、2022年に総額271億ドルの事業収入を生み出した100万人の不法移民起業家が含まれる。近隣のビジネスで157,800人の不法移民起業家を失うことは、アメリカ人に地元の雇用を提供している地域社会の生活に不可欠なサービスを混乱させることになる。米国は、社会保障への226億ドル、メディケアへの57億ドルなど、不法滞在世帯が毎年社会保障プログラムに支払う主要な拠出金を失うことになる。米国の人口が高齢化するにつれ、これらの支払いがなくなることで、社会保障プログラムの支払能力を維持することが益々困難になる。また、大量強制送還は、連邦、州、地方の政府から不法移民世帯が支払う多額のお金を失うことになる。2022年だけでも、不法移民世帯は連邦税として468億ドル、州税と地方税として293億ドルを支払った。税引き後、彼らには2,568億ドルの購買力があり、それは地域社会での出費に役だっている。全体として、大量強制送還は、米国の年間GDP4.2%から6.8%の損失になる。つまり2022年のドル換算で1兆1,000億ドルから1兆7,000億ドルの損失につながる。
最後に、ドナルド・トランプ氏は最近のキャンペーンで、不法移民への攻撃を益々エスカレートしている。2016年に移民は「強打者」や「犯罪者」であるという表現から、今年、移民は「米国の血を汚す」、「彼らは人間ではなく動物である」、「移民はペットを食べる」、今月初旬、殺人を犯した移民は「我が国に多くの悪い遺伝子を持ち込んだ」と発言した。ほとんどの世論調査は、経済と移民政策では、ハリスよりトランプを支持している。それらの理由には、移民に仕事を奪われた経験がある人も存在することが含まれる。また、10年前と比較し、一部の人々は人種の多様性に疑問を持ち始めるようになったという。しかし、アメリカ移民評議会の詳細な調査報告を知ると、大量強制送還の計画がどれほど、非合理的で無謀であるかが理解できる。大量強制送還が主であるトランプの移民政策を支持している人々は、彼らにも火の粉が降りかかる可能性がある重大な経済的影響を全く知らないからであると思われる。移民の専門機関が大量強制送還は米国の経済に多大な悪影響があると指摘しているにも関わらず、トランプの経済の方が良いとの主張には一部矛盾があることを示唆している。もっとも警戒すべきことは、10月3日のニュースウィークによると、最近の集会で、トランプは国内にいる特定の合法的移民も国外追放すると誓ったことである。これらの調査報告を無視し、特定の理由がない限り、合法的な移民さえ強行に追放するような大統領は、事実上独裁者と呼ばれる。トランプの支持者は独裁者の素養がある大統領を好む傾向があるのだろうか?