
Photo credit : Harry & David
世界には推定2億8,000万人がうつ病に悩まされていると言われている。過去の研究ではオリーブ・オイルやナッツなどの特定の食品を含む生活習慣の改善がうつ病の発症リスクを低減するのに役立つことを示唆した。最近の新たな研究では、オレンジがうつ病リスクを低減する可能性のある柑橘類として特定された。
ハーバード大学医学部の医学講師であり、マサチューセッツ総合病院の医師でもあるラージ・メータ博士が主導した研究によると、1日にオレンジを1個食べると、うつ病のリスクが20%低下する可能性があるという。これは、柑橘類がヒトの腸内に生息する細菌の一種、フェカリバクテリウム・プラウスニッツィ(略語:F.プラウスニッツィ)の増殖を刺激し、神経伝達物質であるセロトニンとドーパミンの生成に影響を与えるためであると考えられている。つまり、F.プラウスニツィイは腸の健康と人間の心身共の健康に重要な役割を果たしている。
注目すべき点は、りんごやバナナなどのような他の果物にはその摂取量とうつ病のリスクの間に関連性は見られないが、柑橘類には特有な効果があると言うことである。研究者は「カンフォートフード(心を癒す食べ物)」と言う言葉があるように、「食べ物は気分に影響を与えることを直感的に理解している」と言う。この研究のユニークな点は、看護師健康調査II(NHS2)の参加者の一部が、1年間にわたり研究者に便のサンプルを複数回提供したことである。これらの便のサンプルのDNA配列解析結果を用いて、柑橘類の摂取と「腸内フローラ」とも呼ばれる腸内細菌叢における特定の細菌種との関連性を研究した。その結果、ある細菌種が際立っていた。うつ病でない人では、うつ病の人よりもF.プラウスニッツィが多く見られた。
また、柑橘類を多く摂取すると、F.プラウスニッツィ(F. prausnitzii)の高値にも関連していた。そのため、この細菌が柑橘類の摂取と良好な精神的健康を結び付けている可能性があると考えています」と研究者は述べている。さらに、「腸と脳の強い関連性を示唆する証拠が今や数多くあるので、さらに多くの発見があっても驚きませんでした。同時に、これらの結果が出るまで、柑橘類と脳を結びつけたことはありませんでした。魚が『脳の栄養』だというのはよく聞きますが、オレンジが脳の栄養だと言う人はいません」と述べている。
最後に、研究者は、オレンジを含む柑橘類が脳の栄養素の一つに追加された可能性があることを示唆した。柑橘類の摂取は、うつ病リスクの低下と相関関係を示したが、うつ病は複数の要因が絡み合う複雑な疾患であるため、柑橘類を含む健康的な食事は、精神的な健康を保つための重要な栄養素の一つであるが、すべてではない。これらの研究の結論は、1日に1個のオレンジを食べることがうつ病の完全な解決策ではないが、うつ病の発症リスクを低減できる可能性があることを示唆した。ハーバード大学の研究者たちは、腸内細菌のF.プラウスニッツィが、気分と消化を調節する神経伝達物質であるセロトニンとドーパミンの産生に影響を与える代謝経路で役割を果たしていると考えている。腸内環境、ダイエットを含む栄養、適度な運動と十分な睡眠、ストレス管理など広範な要素の中で、柑橘類の摂取がうつ病のリスクを軽減および改善する一部になると言うことである。