トランプ予算法案の上院可決は何を示唆?

ここ数日注目されていたのは上院議会でのドナルド・トランプ大統領が求めている減税が含まれる包括的な予算法案の投票状況であった。昨日30日、民主党リーダー格の一人であるカリフォルニア州の米国上院議員アダム・シフが提案した改正案に夜投票したが、共和党の賛成票はほとんどなく、失敗に終わった。今日1日の東部時間正午頃から始まった最終改訂版の法案に対する点呼投票では50対50票であったが、副大統領JDヴァンスのブレイク・タイの1票が賛成票に追加されたため可決した。イーロン・マスクはこの法案が議会で可決した場合、アメリカ党を結成し、中間選挙で共和党を打破すると示唆している。

上院議会では、週末に改正案に関する最終討論が行われ、30日夜にアダム・シフ民主党上院議員の改正案に対する投票が行われたが、ほぼ全ての共和党議員は反対票を投じた為可決に至らなかった。シフ上院議員の改正案には12歳以下の子供がいる低所得の家庭にフード・スタンプを提供するというものであった。この結果は、まさに共和党議員らにとって、減税によって富豪者をさらに豊かにすることの方がもっと重要であることを示唆した。今日上院議会で可決した940ページの予算法案の主な特徴は、(1)米国の最富裕層に大きく恩恵をもたらすことになる方法による減税になっている。(2)減収分の一部を補うため、メディケイドが大幅に削減されている。これは今後10年間で1,200から1,700万人のアメリカ人が医療保険を失うと予測されている性質のものである。

(3)現在4,200万人以上が利用しているフード・スタンプは約20%削減され、就労要件が更に厳しくなったため、数百万人は受給資格を失う可能性がある。(4)トランプ政権の強制送還を容易にするための資金が含まれている。これには逮捕した後に拘束する建物の建設費用を提供している。(5)国防総省には、ミサイル防衛システム、軍需品、その他の国防省の取り組みを強化するため軍事費を増加している。(6)学生ローン救済は縮小され、返済プログラムの一部を廃止し、連邦政府の救済措置を制限している。(7)電気自動車の購入を含むクリーン・エネルギーの税額控除を廃止する一方で、クリーン・エネルギーのプロジェクトには新たな税金を課すことになる。これは、ジョー・バイデン前政権のプログラムを完全に撤廃したことを示唆している。

このクリーン・エネルギー条項は電気自動車の税額控除を廃止しているため、電気自動車の販売を促進しているイーロン・マスクは、トランプ予算法案が議会で可決した場合、第三党を結成すると述べたことが30日に報告された。理由は、電気自動車のみではないと思われるが、マスクは2024年に共和党大統領の勝利のために寄付した全米最大の寄付者として知られている。従って、2026年の中間選挙で再選に直面する議会共和党議員は、恐れていると言われていたが、結局、最初から投票する可能性がないことで知られていた3人の上院共和党議員を除く全ての共和党議員らは賛成票を投じた。マスクは30日、共和党がトランプ大統領の包括的な国内予算法案を可決した場合、速やかに新たな「アメリカ党」を結成すると述べた。

ニューヨーク・タイムスが同日に伝えたところによると、マスクは30日、2億2,000万人のフォロワーに向けたXへの投稿の一つで、「この非常識な支出法案が可決されれば、翌日にはアメリカ党が結成されるでしょう。国民が実際に声を上げることができるよう、民主・共和一党制に代わる政党が我が国には必要です」 と述べた。夕方までに、マスクは具体的な行動を約束し、トランプ法案に最も強く反対するケンタッキー州選出のトーマス・マシー下院議員を支持すると述べた。共和党内の様々な派閥派はこの法案を懸念し、可決を危うくする可能性があるとの意見もあるが、議会共和党議員のほぼ全員は何らかの形で法案を支持していると言う。マスクは夕方のある時点で、「来年の共和党下院と上院のほぼ全員が予備選挙で負けるでしょう。それは私がこの世で最後にやることだとしたら…」と書いた。

しかし、マスクにはスペイスXで政府と取引があるという多大な弱みがある。トランプ大統領は7月1日の火曜日早朝に早速反応した。ツゥルース・ソーシャルへの投稿で、「イーロンは歴史上、誰よりも多くの補助金を受けているかもしれない。補助金がなければ、イーロンはおそらく店を閉めて南アフリカに帰国せざるを得なくなるだろう。ロケット打ち上げも衛星打ち上げも電気自動車生産も今後必要なければ、我が国は莫大な資金を節約できるだろう。恐らく、我々はDOGE(政府効率化局)にこの件を真剣に検討してもらうべきだろう」と述べた。一方、トランプ大統領と再度対抗する状況を作り出したマスクはXで世論調査を行い、「アメリカで中道80%を真に代表する新しい政党を作るべき時が来たのだろうか?」と問いかけた。しかし、「 実現可能な第三政党を結成するのは至難の業であり、6月30日の時点で、マスクやその顧問らが具体的な行動を起こす準備をしている兆候は見られない」という。

最後に、上院議会は1日正午頃の投票で可決した法案を午後早期に下院議会に移動した。下院強固派は、負債額が大き過ぎるとして、難色を示していると言う。マスクは新政党の結成を呼びかけ、議会のほぼ全ての共和党議員に対抗する予備選の候補者を支持すると示唆した。しかし、マスクもフリップ・フロップの傾向がある。例えば、彼は3月下旬に共和党の当選に向けた巨額の支出とトランプ政権における彼の役割は不可欠であると述べた。そして5月20日には、2026年の選挙には選挙資金を「大幅に削減」すると言った。そして、6月30日には新党結成のために、多額のお金を使うことを示唆した。これらの記録は、マスクの発言には一貫性がないことを示唆している。従って、上院共和党議員らは1日の投票で、誰もマスクの前日の脅しに影響されていないことを示唆した。恐らく、下院共和党議員も同様であると思われる。下院議長マイク・ジョンソン(ルイジアナ州)は1日、上院法案は「我々の多くが望んでいたよりも少し踏み込んだものです。多くの人が望んでいたものを手に入れられませんでした。大統領は、これは自分の法案だと言いました。下院の法案でも上院の法案でもありません。これはアメリカ国民の法案です。この法案を必ず成立させます」と宣言した。下院共和党議員らが、7月4日前までに署名したいとの大統領の要請に反して、上院議会の可決法案に挑戦するほど意気込みがあるとは思えない。

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