ドナルド・トランプ大統領は、ワシントンDCが犯罪の頻度では制御不可能になっているとして、DCの警察を彼の支配下に置き、州兵を派遣し、犯罪緊急宣言を発令した。大統領はDCを彼の監督下に置くのは30日間であると発表しているが、このような措置を他の都市にも拡大すると示唆している。この事態を受けて、二つの主要メディアは、いずれも同様の報告で、DCは2023年以来、犯罪率は大幅に低下したと主張している。その具体的な数値を調査したところ、それは事実である。
トランプ大統領は11日、ホワイトハウスでの記者会見で、「首都ワシントンに対する連邦政府の権限行使を大幅に強化し、一時的にワシントン警察を掌握し、犯罪対策として800人の州兵を派遣すると発表した。大統領は『血に飢えた犯罪者』や『野蛮な若者の群れ』といったワシントンのディストピア(殺人・暴力、非人間的な行為が蔓延っている地域社会の恐ろしい状況)の姿を描写した。これはワシントンの暴力犯罪が30年ぶりの低水準を示す公式統計とは対照的である」とニューヨーク・タイムスは伝えている。しかし、大統領は、司法長官パム・ボンディが首都警視庁の連邦制への移行を監督し、国防長官ピート・ヘグゼスは「必要であれば」軍をワシントンに派遣する用意があると付け加えた。ボンディとヘグゼスはこの会見に同席していた。ホワイトハウス当局者は、この移行は30日間続く予定であると述べた。トランプ政権は、取り締まりの一環として、ワシントンD.Cに駐在するFBI捜査官120人を一時的に夜間パトロール任務に再配置する計画もあるという。住民は大統領の発表に懐疑的であり、抗議活動も引き起こした。トランプ大統領はシカゴを含む他の都市が「制御不能」とされる犯罪率に対処しない場合、同都市への介入を拡大すると警告した。しかし、大統領はワシントンD.C自治法の条項を行使できるが、他の都市の警察を一時的に掌握する権限は、かなり限定されるという。
大統領は、ホワイトハウスでの記者会見で、「彼らは、それが彼らにとって唯一の理解できる言語だから、ぶっ叩きのめされるまで反撃する。実に忌まわしいことだ。完全に無法状態になりつつある。我々は彼らが住むスラム街も撤去しようとしている。政治的に正しくないことは承知している。『なんてひどいんだ』と言うだろう」と語った。ワシントン・ポストの11日の報道によると、トランプ大統領は、首都ワシントンの犯罪が急増していると述べている。ワシントンD.Cのミュリエル・バウザー民主党市長は、パンデミック後の2023年に暴力犯罪が急増した後、過去2年間で減少していると繰り返し指摘している。午後の記者会見で、バウザー市長は「暴力犯罪は30年ぶりの低水準にあります。私たちは満足していません。私たちは対策を緩めておらず、街をより安全にする方法を模索し続けています。今回の措置は不安をかき立て、前例のないものですが、過去の言論を踏まえると、全く驚いているとは言えません。これまで対応できなかった地域で、より多くの法執行機関と存在感が発揮できることは、プラスに働くかもしれません」と肯定的な姿勢であり、ボンディ司法長官との会談を求めていると言った。
ワシントンD.C.自治法とは何か?
ACLU (アメリカ自由人権協会)の説明によると、1973年に制定された ワシントンD.C自治法は、市長、ワシントンD.C市議会議員、そして地区内の日常業務を運営する諮問地区委員を選出する権利をワシントンD.Cの住民に保証している。ワシントンD.C.自治法は同年に議会で可決され、リチャード・ニクソン大統領が署名した法律である。この法律は、完全な民主的権利を求めるワシントンD.Cの住民と、その大多数を占める黒人住民に対する権力の維持を求めた議会議員との間の妥協案として最終的に成立した。この法律により、ワシントンD.Cの住民は、地区の日常業務を監督する地方政府を選出することが可能になった。一方、議会は地方条例、地方予算、その他の事項に関する権限を維持した。この妥協案が可決された理由の一つは、議会議員がワシントンD.Cの日常管理業務から逃れることを望んだためである。ワシントンD.C自治法は「議会が一定の立法権をコロンビア特別区政府に委任する」ことや「本質的に地方レベルの問題に関する立法の負担から議会を軽減する」事を規定している。
大統領はワシントンDCを一時的に支配できるか?
大統領は、議会の承認書に署名するだけでなく、地方の問題に介入することができる。例えば、大統領には『緊急事態という特別な状況』における『連邦の目的のため』に、ワシントン D.C 警察を一時的に統制するという限定的な権限がある。また、ワシントン D.Cは州として認められていないため、大統領はワシントン D.Cの州兵を管理することが可能である。
以下のチャートは、ワシントンDCの全てのタイプの犯罪は2023年から減少していることを明白に示している。
| 攻撃 | 2023 | 2024 | 変化率 |
| 殺人 | 274 | 187 | -32% |
| 性的虐待 | 191 | 143 | -25% |
| 危険武器による暴行 | 1,412 | 1,026 | -27% |
| 強盗 | 3,468 | 2,113 | -39% |
| 暴力犯罪 –合計 | 5,345 | 3,469 | -35% |
| 窃盗 | 1,095 | 1.001 | -9% |
| 自動車窃盗 | 6,809 | 5,139 | -25% |
| 自動車からの窃盗 | 7,795 | 6,698 | -14% |
| 窃盗(その他) | 13,314 | 13,037 | -2% |
| 放火 | 11 | 4 | -64% |
| 財産犯罪 – 合計 | 29,024 | 25,879 | -11% |
| 全犯罪 – 合計 | 34,369 | 29,348 | -15% |
要するに、ホワイトハウスが公開した大統領令によると、トランプ大統領は2025年8月11日、コロンビア特別区(ワシントン D.C)の安全回復のため、犯罪緊急事態を宣言した。ホワイトハウスは、この命令のために、ワシントンD.C自治法を行使して、ワシントン D.Cの警察を大統領の支配下に置き、ワシントン D.C州兵を配置すると述べている。しかし、タイムス紙とポスト紙はいずれも緊急事態は起きておらず、犯罪率も近年著しく低下していると指摘している。現在、ワシントンDCで緊急事態が起きているというニュースもない。しかも、全ての類の犯罪率は減少している。2025年8月11日に更新されたDC政府サイトの犯罪記録によると2023年と2024年の多様な犯罪件数を比較した2025年1月1日の時点での記録によると、全ての犯罪は顕著な数値で減少している。しかし、この統計には今年1月3日に発生した銃撃事件で5人が病院に搬送され、5月21日にキャピタル・ユダヤ博物館でレセプションを終えて出てきた人々に容疑者が発砲し、イスラエル大使館職員2名が死亡した銃撃事件は含まれていない。しかし、「危険武器による暴行」、つまり銃撃事件は、2024年の667件から2025年には534件で-20%減少した。大統領は緊急下でワシントンD.C.自治法を行使することはできるが、現在、犯罪緊急事態は起きていない。これが5月に発令されていた場合、もっとタイミングは良かったかもしれない。