FRB理事に対する米国最高裁の暫定留任許可は何を示唆?

ワシントンD.Cの連邦準備制度理事会ビル Photo credit : Alamy

連邦準備制度理事会(FRB)の理事であるリサ・クックに対して、トランプ政権は2025年8月に解雇を試みた後に、クックは訴訟を提起した。下級裁判所は解任を差し止めたため、トランプ政権は9月に米国最高裁判所に上訴し、訴訟が継続している間、最高裁判所に解任を許可するよう要請した。しかし、今日から政府が閉鎖されている中で、2025年10月6日に新たな任期が迫っている米国最高裁は10月1日の判定で、早急の解雇を求めたトランプ政権の要請に反して、当面FRBで就労し続けることをクックに認可した。この事件は注目すべき重要な要点がある。

クックに対する解雇の圧力は、彼女がFRBの理事に就任する前の2022年に住宅ローン詐欺の疑惑が提起されたためである。クックは刑事訴追もされていない事も含めて、これらの疑惑を強く否認し、解任に対する異議を唱えるための訴訟を起こした。最初の連邦地方裁判所の判定で、連邦判事は、FRB理事は「在任中の不正行為があったとする正当な理由」がある場合のみ解任できるとの判決を下し、解任を阻止する仮差し止め命令を発令した。そして控訴裁判所も2対1で地方裁判所の判定を保持した後、トランプ政権はFRBが利下げを決定した翌日の9月18日に米国最高裁に上訴した。しかし、2025年10月1日、米国最高裁は2026年1月にこの件に関する口頭弁論を行うことに合意し、その決定によってトランプ大統領がクックを解任する権限を有するかどうかを決定するとの方針を示した。最高裁はそれまでの期間、クックの現職留任を認可した。

ワシントン・ポストの二人の記者(最高裁担当のジャスティン・ジュベナルとFRB及び財務を担当するアンドリュー・アッカーマン)の報告によると、「最高裁のクックの職務継続を認める暫定的な今日の判定は、クックを解任し、FRBへの統制を強化しようとする大統領の積極的な動きに対し、少なくとも一部の判事が難色を示した」ことを示唆した。ほぼ全ての決定に置いて、9人の最高裁判事のうち、「少なくとも5人の賛成票が必要である」ことから、最終的決定もこのパターンになる可能性があることを示唆している。コロンビア大学法学教授レヴ・メナンドは、最高裁の決定を「極めて重大なもの」と評価した。最高裁は2行の判決文について詳細な理由を示さなかったものの、政権側の要請に対する判決を遅らせることで、クックに勝利をもたらした。メナンドは 「これは決定的な勝利ではありません。リサ・クックの在任期間を大幅に延長するだけであり、大統領の解任願望に反するものです」と述べた。

最高裁の10月1日の判決で注目すべき点は、今年、最高裁は連邦取引委員会(FTC)や全米労働関係委員会(NLRB)など、「議会が大統領から一定の独立性を保つよう設置」した少数の機関の理事を、少なくとも一時的にトランプ大統領が解任することを認可した。これは、FRB理事リサ・クックへの判定とは「非常に対照的」である。つまり、最高裁はFRBが他の機関とは「根本的に異なる」との見解を示し、「大統領による理事解任の裁量権はより限定的になる」可能性があると示唆した。元財務長官、FRB議長・理事、その他の高官などの著名なグループは、「法廷助言人」として提出した意見書の中で、クックの解任は「米国の金融政策の信頼性と有効性を危うくする可能性がある」と警告した。「もし、トランプ大統領がその時点で、7人で構成されるFRB理事会の過半数を掌握していれば、金融政策にも関与するFRB理事の一部または全員を交代させる決断を下す可能性がある」と言う。

裁判所への提出書類の中で、「この国の金融政策を司るシステムの安定」を確保するため同氏が職務にとどまることを認められるべきだと最高裁の判事らに訴えたのは両党の大統領に任命された元FRB議長、アラン・グリーンスパン、ベン・バーナンキ、ジャネット・イエレン及び元財務長官らであるとニューヨーク・タイムスが伝えた。彼らは「この国の金融政策を統制するシステムの安定性」を強調している。クックの弁護士は、1日の声明で「裁判所の決定はクック理事がFRBの職務を継続することを正当に認めるものであり、裁判所の命令に沿った今後の手続きを期待している」と述べた。また、彼らは彼女には住宅ローン詐欺の容疑について正式に回答する機会が与えられておらず、「不適切な行為は一切していない」ことを証明するだろうと述べた。タイムス紙によると、ワシントン政策アナリスト、エド・ミルズはクックが解任前に十分な適正手続きを受けていなかったと最高裁が判断した場合、クックの側に立つ可能性があると述べた。しかし、最高裁は、FRB職員の解任の正当性として「正当な理由」が具体的に何を指すのかに関して、大統領の権限がより大きいと判断する可能性もある。一般的に「正当な理由」とは、不正行為や職務怠慢を意味すると解釈されてきた。ミルズは 米国最高裁が「正当な理由の定義を再確認」し、「FRBが他の独立機関とは異なるカテゴリーに属するのかどうかを検討している」と述べた。

要するに、最高裁は、FRBの理事を解任する権限が大統領にあるかどうかを決定した前例がない事を示唆している。歴史的に独自の独立性があることを明白にするためには、「何らかの意義のある制約」が必要であると弁護士らは主張している。そうでない場合、全ての大統領は、いつでも簡単に理事を解任できることになるとの懸念を表明している。従って、最高裁は「ホワイトハウスからの政治的干渉なしに意思決定を行う中央銀行の能力」を重視していることを示唆している。つまり、トランプ政権の主な目的は、独立した中央銀行に圧力をかけるという政治的動機に基づくものであるというのが弁護士側の要点である。リサ・クックに対する政権の解雇が簡単に最高裁に支持された場合、完全な独立機関であるFRBにさえ、大統領の権限を拡大することが可能になるからである。最高裁が1月に、大統領には解雇を決定する権限はないと判断すれば、クックだけでなく、FRB議長や他の理事にとって最終的に大勝利することを意味する。FRB議長や理事も解任する前代未聞の権限を大統領に与えた場合、歴史的独立性の意義はなくなり、大統領は能力より党派的で忠誠を基準に人事の大幅な入れ替えを行うことを可能にする。最高裁の1日の判定は、警告した人々の意見が強力であったことを示唆し、クックを暫定留任に同意した米国最高裁の保守派判事二人は、1月の審理で歴史的にFRBの理事は完全に独立しているという考えを変える可能性はないとの印象を残している。

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