トランプ大統領の就任最初の10ヶ月間で、ほとんど想像できなかった変化が最近起きている。トランプMAGA議員の一部はもはや大統領の絶対的な支持者であるというこれまでの強い基盤が崩れ始めた。ジョージア州北西部を代表し、2020年に選出されたマージョリー・テイラ・グリーンは21日午後、下院議員を2026年1月5日に辞職すると発表した。彼女は、ここ数ヶ月、医療保険改正法、政府閉鎖、エプスタイン・ファイルの問題で、トランプ大統領の政策や方針を批判するようになっていた。そして、複数の状況は、大統領と議会共和党が転換期を迎えている可能性があることを示唆している。
グリーンは11月21日 午後3時07分にXに投稿した数ページの公式声明および動画でのスピーチで、「私は2020年に下院議員選挙に出馬し、『アメリカを再び偉大にする』とは『アメリカ第一主義』を意味すると信じて毎日戦ってきました。しかし、我々が多数派になってからほぼ1年が経ちましたが、議会はほとんど無視されてきました」とXの動画で述べた。グリーンは「私は自分の議長と自分の政党が、アメリカ国民の医療を救い、法外な高額で手の届かない医療保険から国民を守るための計画を可決するために、積極的に熱心に取り組もうとしなかったことに憤慨しました。下院は会期を開き、この惨事の解決に向けて毎日取り組むべきでした。しかし、その代わりに、アメリカは忌まわしい政治劇を強いられたのです」と述べた。
グリーンは、性犯罪者ジェフリー・エプスタインに関する更なるファイルの公開を支持するようトランプ大統領に促すキャンペーンに深く関与した一人であった。トランプ大統領はソーシャル・メディアでの投稿で「裏切り者」と彼女を呼び、2026年の中間選挙でグリーンに挑戦する候補者を支持すると述べた。また、大統領は、グリーンを「極左に走った暴言を吐く狂人」と呼び、彼女を繰り返し攻撃し、鋭く批判していた。大統領は、グリーンの辞職発表の翌日22日早朝、ソーシャル・メディアに「マージョリーは最悪だった。国にとって素晴らしいニュースです」と述べ、彼女の辞職の決断は「世論調査の支持率が急落し、トランプを強く支持する予備選の挑戦者と対決したくない」ことが理由だと述べた。さらに、「それでも私はマージョリーのことを常に高く評価し、国への貢献に感謝する!」と述べた。
なぜ、昨年まで強固なMAGAと言われたグリーンは、民主党が強く推した医療改革法であるオバマケアの助成金の延長を求め、政府閉鎖に反対し、エプスタイン・ファイルの透明性を追求するファイル公開を強行採決するため、下院議会の女性共和党議員の中で、最も中心的な役目を果たしていたのか?彼女は、選出されたジョージア州北西部の有権者の意思を反映しており、グリーンは事実上、地元の有権者を代表する議員としての仕事に従事していたのである。「外国人労働者問題や、性犯罪者ジェフリー・エプスタインが有罪判決を受けた政府資料の公開をめぐり、グリーンとトランプ大統領の対立は、自らが動員したアメリカ第一主義に対する大統領の統率力を試している。トランプ大統領は最近、グリーンを『裏切り者』と呼び、再選への支持を撤回し、2026年の予備選での再選を目指すよう促した。しかし、グリーンの共和党支持が強い選挙区の多くの共和党指導者や有権者は、彼女を支持すると表明しており、大統領から独立した大衆的なMAGA(アメリカ第一主義)ブランドを確立しようとする彼女の試みを後押ししている」という。
つまり、トランプ大統領が第一期目の選挙でアピールしたアメリカ第一主義を基本としたMAGAは第二期目には、多くの点でその性質が変わったため、下院議会のMAGA議員の一人を失うことは、ジョージア州北西部地区の共和党有権者の支持を失うことを意味する。彼女はジョージア州北西部第14議会区の有権者を代表しており、2025年1月3日の新議会の始まりの時点で、ここでの人口は795,580人である。そして、2024年の選挙では、共和党有権者の243,446票 (64%)がグリーンに投票し、134,759 票(36%)を獲得した民主党対抗者ショーン・ハリスを打破し、再選に勝利したのである。つまり、下院議会で一人のMAGA議員を失うことは、トランプ大統領はこの地区だけで243,000以上の共和党有権者の支持を失うことに相当する。
加えて、エプスタイン・ファイルの公開を強行採決する法案に下院議会及び上院議会でほぼ全会一致の支持を得て採決した後、共和党議員らは、トランプ大統領を超えて先に進む決定をしたのである。「共和党議員たちがトランプ氏に反抗し、かつてトランプ氏の友人でもあった性犯罪者ジェフリー・エプスタイン被告に関する連邦ファイルの開示を求める法案を支持したことは、共和党議員たちがトランプ氏の任期満了後の未来ではなく、来年の中間選挙での自衛に目を向け始めていることを示すこれまでで最も明白な証拠であった」という。また、政府閉鎖の最後の時期に、トランプ大統領はフィリバスター(議事妨害)規定を終えるよう求めたが、上院共和党議員らは、これに応じなかったのである。大統領は、この上院の規定を終えた場合、単純多数派の51票で法案は可決するので、現在53議席ある上院共和党多数派は民主党の投票なしに、再度投票することで政府を再開できると示唆したが、共和党議員らはその提案に反対し、協議さえしなかったのである。つまり、「上院共和党議員はフィリバスターを骨抜きにするというトランプ氏の要求に屈しなかった」ため、これも大統領の権威には限界があることを明白に示した。
そして、別の厳しい現実は、トランプ大統領が、米国下院議会で多数派を維持するために複数州の共和党州議員らに選挙区割りを変更するよう要請してきたが、それは、ほとんど成功していない状況が見られる。例えば、「ユタ州では9月、ユタ州の裁判所は、圧倒的に共和党が優勢な4つの選挙区を含めて、彼らが作成した連邦議会の選挙区地図は州憲法に違反すると判定した」のである。カンザス州では11月初旬、カンザス州共和党は、州内で民主党が唯一掌握する選挙区の再編を断念した。インディアナ州では先週、共和党が多数を占める州上院議会は、州の地図を書き換える事で、民主党が支配する2つの選挙区を廃止するための投票に失敗した。テキサス州の判事らは、米国下院議会の民主党の最大5議席を獲得する同州の新たな選挙区割りが「2025年の選挙区割りを人種的に不当に操作した」という「確固たる証拠」があると判定した。しかし、トランプ大統領が推進したテキサス州のジェリーマンダーに対して、同州を担当する米国最高裁の最も保守派判事サミュエル・アリートは21日、共和党に有利な新たな区画割りを中間選挙で使用することを許可するかどうかを審理するまで、下級裁判所のこの判決を、数日間一時的に差し止めた。最高裁の最終決定は現時点では不明なままである。
要するに、選挙区割りに関して、テキサスの人種に関連する下級裁判所の判定を除き、米国最高裁は、連邦裁判所は党派的なジェリーマンダの訴訟には関与しないと宣言したため、ほとんどの州共和党議員らの試みは成功していない。これも上院および下院議会の共和党リーダー達にとっては2026年の中間選挙で多数派を失う懸念が増えていることを意味する。米国上院議会の共和党リーダー達は、バージニア州とニュージャージー州での知事選及びニューヨークでの市長選で全敗した後、トランプ大統領の発言に振り回されることなく、中間選挙の戦いの準備を開始する姿勢を見せ始めたのである。つまり、議会と協議することなく、全面的に行政権の権威を拡大しようとしてきた大統領に対して、何の異議も唱えず、沈黙を続けてきたこれまでの10ヶ月間のパターンを終えようとしている。共和党議員らは、彼らの現在の多数派を保持するためには、彼ら自身で要塞を築く必要があると悟った可能性があることを示唆している。トランプ政権10ヶ月後の上院議会共和党議員らは、無力であったような状況から、遂に憲法に従い、彼らの仕事を全うするという姿勢を見せ始めた。下院議会では、過去数年間の極右のイメージを払拭し、今年から穏やかで超党派的な議員として変身したグリーンが最初に大統領とその同盟者である下院議長に決別したのである。これら全ての状況は、大統領と議会にとってある意味で転換期を迎えている可能性がある。