辞職した州および連邦の判事らはインタビューを通して、民主的な司法制度が崩壊しつつあると警告した。彼らは「法の支配が揺らぎ始めるにつれ、民主主義のガードレールがすでに弱まっている可能性がある」と警告している。その最近の顕著な例は、24日に元FBIジェイムス・コミおよびニューヨークの司法長官レティシア・ジェイムスに対する司法省の訴訟を判事が却下した事件である。彼らは正常な司法制度が危険なほど弱体化している事を示唆し、多くの退職した連邦および州最高裁判所の判事にとって、これは「大統領による司法への攻撃と法の支配のさらなる侵食を示す新たな例」である。
28日のワシントン・ポストの報告によると、元判事と間もなく退職する判事に対する12件の同紙のインタビューは、「党派的な攻撃、公務員による敵対的な言辞、そして最高裁判所による曖昧な判決によって司法が途方もない緊張状態にあり、その誠実性が脅かされていると述べた。 多くの判事は、判事の政治化、最高裁判所による緊急案件の拡大、そして、トランプ政権からの継続的な批判によって、裁判所と民主主義は脆弱な転換点に追い込まれており、もはや判決への協力と法の支配の遵守は期待できない状況にある」と述べた。メリーランド州連邦地方裁判所の元判事ポール・グリムは、「もし誰かがこれらの基本的権利と自由を侵害した場合、それを法廷で訴えることでそれが保護されると考えない人は、我が国には一人もいないでしょう」と述べた。
法支配尊重の弱体化
元判事たちは、「裁判所こそが権力の不均衡と権威主義的な政府への逆戻りを防ぐ唯一の手段であると強く主張している。」一方、ホワイトハウスは「下級裁判所の判決を『違法』であるとして判事らへの批判を退ける」事態が見られるようになった。「トランプ大統領と裁判官の衝突は、ハンガリーの右派による裁判所改革から、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相による司法権からの権力奪取の試みに至るまで、諸外国の指導者が自国の裁判所の力を弱めようとした事例を彷彿とさせる」との声もある。フロリダ州最高裁判所の主席判事バーバラ・パリエンテは「ナチス・ドイツで何が起こったかを振り返るだけで十分です。我が国がそのような状況に陥っていると言っているわけではないが、我々は認識しておくべきです。最初の攻撃対象は裁判官と弁護士でした」と述べた。以前、第4巡回区控訴裁判所の判事を務めたアリソン・ダンカンは、4月にキルマー・アブレゴ・ガルシアの不当送還事件でトランプ政権の上訴を棄却した。同氏は、「法支配の弱体化と司法府の縮小がもたらす結果を、国民は手遅れになるまで理解できないことが多い」と警告した。 元判事ダンカンは、「法の支配を尊重し、司法命令を自発的に遵守しなければ、メリーランド州出身で不当に送還され、エルサルバドルで2ヶ月以上投獄されたガルシアに起きたことは自分たちにも起こり得ることを国民は理解しなければならない」と述べた。
判事に対する顕著な威嚇の増加と権威尊重の減少
元連邦判事ポール・グリムは、「トランプ政権による裁判官への威嚇の試みが裁判官の間に恐怖を生んでいる」と述べ、シェークスピアのヘンリー六世の一節を引用した。その一節では、イングランド転覆を企む手下が「最初にやるべきことは、弁護士を全員殺すことだ。弁護士は邪悪な悪い人間だと思われていたからそうしたわけではない。政府乗っ取りを企てる者たちがそうするのを弁護士が阻止してくれるからだ」と述べた。グリムは、裁判の「最初に、裁判官全員が威嚇」される可能性があると示唆した。一般的に、判決は賞賛と批判の両方を浴びるが、「トランプ政権下では、多くの裁判官や法律専門家は、この力関係が不当な批判へと悪化していると指摘する。大統領はソーシャル・メディアや公の場での演説を通して、自身の政策に反する判決を下す裁判官を攻撃している。大統領はこうした裁判官を頻繁に『狂人』、『ならず者』、『極左』の裁判官と呼んでいる。」共和党の元テキサス州最高裁判所主席判事のウォレス・ジェファーソンは「ほとんどの司法行為規範は、裁判官が公の場で批判に応じることを禁じているため、『裁判官は格好の標的』になっている」と述べた。ジェファーソンは「裁判官が他の専門家と同様に退官すればこうした禁令から解放される」と指摘した。
そして判事の権威に対する敬意の観念は、著しく減少した。複数の元判事は、トランプ政権による「司法判定の無視、反抗、あるいは迂回の増加は憂慮すべき事態」であると指摘し、この「傾向は200年以上にわたりアメリカ合衆国を特徴づけてきた権力分立を著しく弱める」と警告した。 ニューヨーク南部地区判事として、米国で最も悪名高く注目を集めた幾つかの事件を担当したシラ・シャインドリンは「最近の事例であるトランプ政権がカリフォルニア州兵をオレゴン州ポートランドに派遣しようとしたが、判事は同州への州兵派遣を阻止した。彼女はこうした抵抗を好例であると述べ、『あれはゲームです』と言った。」
司法省独立性の顕著な弱体化
長年、公正な判断を確保するため、ホワイトハイスと司法省はそれぞれ独立した体制下で運営されていたが、2月5日にパム・ボンディが司法長官に就任して以来、司法長官は、政権に不利な判決を下した判事に対して不正行為の訴えを起こしている。そして、「物議を醸した上院公聴会では、司法省が武器として利用されているという非難に対してボンディは司法省を擁護した。」さらに、1994年から2009年までフロリダ州最高裁判所判事を務めたハリー・アンステッドは、「ボンディが国の最高法執行官としての規範から逸脱したことに激怒した。」同氏は「現司法長官が声を上げて裁判官を擁護せず、弁護士やその他の関係者に対し、判決への批判には慎重に、そしてそれが個々の裁判官への批判に波及しないように警告していないことに、私は深く失望しています」と述べた。アンステッドは「ボンディが裁判所の独立性を守るのではなく、ソーシャル・メディアなどのプラットフォームを利用して裁判官を攻撃したり圧力をかけたりしている」ことに言及した。司法省の副長官で、2016年の大統領選前に口止料支払いの裁判におけるトランプ氏の主要弁護士であったトッド・ブランシュは、「一人の判事が、合憲かつ認められている作戦全体や行政政策全体を、ただ自分の判断で阻止できる」事態に対抗することは「戦い続けなければ勝利はない」ので、「これは戦争である」と述べた。故に、どのような裁判ケースも全て、保守派が圧倒的に多数派である米国最高裁に上訴しているのである。
最高裁の緊急措置である不透明なシャドウ・ドケットの増加
最後に、米国最高裁は「シャドウ・ドケット」と呼ばれている署名、判定意見、透明性がなく、控訴裁判所での判決を一時的に停止する手段を利用する頻度が増えている。これは全ての分野で影響を与えていると判事らは述べている。莫大な規模の連邦職員の解雇、移民法、移民取り締まり、大学や公共放送を含む幾つかの分野での資金停止、投票権など、特にトランプ政権の政策に関連している訴訟が控訴裁判所で却下またはブロックされた後、政権の弁護士は最高裁に上訴しているが、控訴裁判所の判定を一時的にブロックまたは保持するだけのシャドウ・ドケットを利用する判定は益々増加している。米国で最も悪名高く注目を集めた事件のいくつかを担当したニューヨーク南部地区判事シラ・シャインドリンは、最高裁のこの行動は「私たちの国を変えています。私たちの公民権は守られていません。投票権、移民の権利、何であれ、私たちはそれらを失っています」と述べた。12月にワシントン州最高裁判所を退官するメアリー・ユーは「国民が私たちを単なる政治団体の一つだと思い込むことが最悪です。政治的な影響があることは承知していますが、私たちは政治的な動機で動いているわけではありません」と述べた。
要するに、最近、民主主義下の司法制度が崩壊の危機に直面しており、三件分立のチェックとバランスが機能不全となるような状況があると判事らは表明している。いわゆる権威主義的な指導者の下では、法の支配は尊重されず、大統領の権威が最大であると考える政権は、裁判官の判定が不利である場合、違法であると主張し、その判定に従わない例も見られる様になったという事である。そして、米国最高裁がシャドウ・ドケット緊急措置を利用することに対して、辞職した判事らは法律や憲法を基本にした判定ではないと指摘する。なぜなら、いつまで一時的であるのか不明な場合もあり、透明性が失われており、その為に個人、特定のグループや組織が影響を受ける可能性が高くなっている。そして、裁判官に対する脅しも報告される様になり、最悪のケースは、以前も報告された様に、判事らは殺害の脅迫さえ受けているという。1993年から1998年まで判事を務めたゲスケ氏は、職務中に殺害の脅迫を受け、家族を転居させなければならなかったと語った。 司法省内の連邦保安官局から保護を受けている連邦判事や裁判所職員とは異なり、州の裁判官に対する脅迫を追跡している連邦機関は存在しないという。今年5月29日のポスト紙によると、連邦保安官局のデータでは、2025年度には連邦判事に対する脅迫が過去最高水準に達した。連邦保安官局は、今年3月2日から5月下旬にかけて、約3ヶ月間で197人の判事に対する脅迫事件を調査した。これは、2024年10月1日から2025年3月1日までの5か月間に脅迫を受けた80人の判事の2倍以上である。判事に対する脅迫および殺害の脅しは、今年顕著な問題の一つになっている。