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2014年1月から2022年1月までホンダラスの大統領であったフアン・オルランド・エルナンデス(1968年10月28日誕生)は、2021年7月1日、汚職と違法薬物取引の関与により、米国国務省によってビザを取り消された。2022年2月中旬、米国政府が麻薬関与を理由にエルナンデスの身柄引き渡しを要請した後、テグシガルパの自宅で警察とDEA(麻薬取締局)捜査官に逮捕された。翌日彼は米国当局への出頭に同意し、4月下旬に米国に引き渡された。そして2024年3月8日、エルナンデスは麻薬密売と武器の共謀の3件で有罪判決を受け6月26日懲役45年の刑を宣告された。
米国の法務執行関係者は、この人物が腐敗した麻薬密売の犯罪者であることを十分承知している。トランプ政権は今年9月から、麻薬密売を行うエルナンデスの様な犯罪者を追跡および、米国へ違法麻薬を運んでいると見る外国船舶を空爆し、爆破された船の乗組員80人以上が死亡したことは既にご承知のとおりである。そして、国防省の長官ピート・ヘグセスは、このキャンペーンはまだ始まったばかりであると述べ、今後も続くことを明白にした。そして、トランプ大統領と彼の側近たちは、「麻薬カルテルが米国にとって最も差し迫った脅威の一つであると述べ、西半球から麻薬カルテルを根絶すると約束した。」そして大統領は、ベネズエラ上空および周辺の空域は「完全に閉鎖」するべきであるとソーシャル・メディアに投稿したことが29日に報告された。これは、トランプ政権が麻薬カルテルへの取り締まりを強化する方針を示唆した。しかし、驚くことに「それから24時間も経たないうちに、トランプ大統領はソーシャル・メディアで、米国で麻薬密売の罪で有罪判決を受けていたホンダラスの元大統領フアン・オルランド・エルナンデスに完全な恩赦を与える」と発表した。
ニューヨーク・タイムスの29日の報道によると、法務執行関係者や議員、ポッドキャストの関係者、麻薬専門家らに衝撃を与えた様である。元国際麻薬・法執行問題担当国務次官補のトッド・ロビンソンはLinkedInへの投稿で、「カリブ海では『疑惑』の麻薬密売船を爆破する一方で、米国では実際に有罪判決を受けた麻薬密売人を恩赦する」と述べ、「誰か、この意味を理解できるように助けてください」と言った。バージニア州を代表する米国上院民主党議員ティム・ケインは、恩赦するという考えは「非道」であるとし、「トランプ氏の行動は違法薬物対策に関する彼の戦略をめぐる『偽りの言説』を裏付けるものである。また、政権が麻薬密売に真剣に取り組んでいるという主張を完全に覆すものであり、ベネズエラでの作戦が実際にどうなっているのかという疑問を提起する」と述べた。
オバマ政権下で国家安全保障会議(NSC)の元報道官で、現在リベラル系ポッドキャスト「Pod Save America」の共同司会を務めるトミー・ビエターは、「エルナンデスは400トンのコケインを米国に密輸する共謀罪で有罪判決を受け、恩赦を受ける一方で、漁師か麻薬密売人かは定かではないが、正体不明の人物が公海で殺害されている。この政策はナンセンスで、明らかに違法です」と述べた。トランプ氏はベネズエラの独裁政権指導者ニコラス・マドゥロにも強い圧力をかけており、マドゥロを「カルテル・デ・ロス・ソレス」と呼ばれる麻薬組織のボスだと非難している。ラテン・アメリカの犯罪・麻薬問題の専門家は、この組織は実在しないと指摘している。トランプ氏はまた、CIAの秘密工作員の活動も承認している。ベネズエラでは米国が行動を起こしており、多くの米国当局者は非公式に、彼らの目標はマドゥロ氏を権力の座から追い出すことだと語っている。国務省西半球局の元首席次官補リカルド・ズニガは、エルナンデスが米政権下で複数の犯罪行為に関与していたことは「極めて明白」だと述べた。ズニガは「法執行機関を含むトランプ支持者の間で、この事実に衝撃を受けていない人がいないとしたら、驚きです」と述べた。
エルナンデスに対する恩赦は、トランプ大統領の発表のみであり、まだ公式に恩赦は与えられていないが、エルナンデスに対する米国の措置は、バイデン政権下の当局にとって大きな勝利と見られていた。しかし、大統領の「二つの投稿は、大統領の戦略における顕著な矛盾を露呈している。大統領は麻薬密売に対する軍事作戦をエスカレートさせる一方で、『コケインを資金源とする賄賂』をカルテルから受け取り、『軍、警察、司法制度といった国家の全権力と力を使って彼らの麻薬を守った』と指摘する男」を恩赦するという。実際、「検察官はエルナンデスが長年にわたり、ベネズエラから米国へ向かう途中のコケインの塊がホンダラスを経由して流通することを許可していた」と言う。トランプ政権は、カリブ海地域で大規模な軍事活動を行なっている理由と証拠をまだ提示していない。「大統領は主に麻薬対策作戦を挙げているが、この地域における米軍の規模は、より大きな野望を示唆している。大統領は非公式にはベネズエラの石油埋蔵量に関心を示しており、大統領自身と側近はマドゥロ大統領の追放を望んでいると述べている。」 トランプ氏は声明の中で、エルナンデスに恩赦を与える理由を「多くの友人」からの要請に基づいていると述べ、「彼は国の大統領だったから45年の刑を言い渡された。どの国のどの大統領に対しても同じことが言える」と述べた。
最後に、エルナンデスに恩赦を与えるというトランプ大統領の決定は、ホンダラスと米国の元DEAを含む当局者の失望と批判の的になっている。何らかの理由がない限り、通常恩赦は考えられない決定である。トランプ大統領は、45年の懲役刑に言及しているため非常に長期的で不公平であると考えている可能性がある。加えて、この突然の恩赦はホンダラスの大統領選の2日前に来ている。事実、28日トランプ大統領はホンダラス大統領選挙の数日前に、同国の政治に大きく介入した。有罪判決を受けた元指導者に対する恩赦を発表し、自身が支持する候補者が敗北した場合、米国からの支援を打ち切ると警告した。タイムスによると、エルナンデスの家族は、米国大統領の「支持を得ることを試み、彼の有罪判決を政治的迫害として訴えようとしている。」しかし、エルナンデスに対する捜査の大部分はトランプ氏の最初の任期中に行われた。この事件の主任捜査官の一人は、当時ニューヨーク南部地区の検事であり、口止め料支払いに関連する裁判でトランプ氏の個人弁護士となったエミル・ボヴェであった。トランプ氏は2期目にボヴェを司法省の高官に任命し、その後控訴裁判所判事に指名した」ことで、非常に論争的となった。ボヴェは、今年6月末から7月初旬にかけて、大統領の過激な国外追放政策を遂行するために、裁判所命令を無視するつもりであると部下に語ったことが、その後解雇された同省の弁護士の内部告発で明白になった。