先週ワシントンD.Cで起きた銃撃事件で、二名の兵士が犠牲者となった。大統領は27日の感謝祭のメッセージの一部で再度、移民が米国での犯罪を悪化していると批判した。そして、貧しい国からの移民の入国を永久的に停止したいと述べた。移民の犯罪率は米国市民より遥かに低いという2024年の研究報告は、これまで繰り返し、他の学会や議会報告にも引用されている。トランプ政権は、この事件後にワシントンD.Cでの州兵の派遣を増加した。全米での移民の犯罪率とD.Cの犯罪率は何を意味しているだろうか?
ワシントンD.Cで26日に発生したアフガニスタンからの移民による銃撃事件で、二人の兵士が銃で撃たれ、まだ若い女性兵士が死亡し、別の一人は重傷を負った。感謝祭の前日に起きたこの銃撃事件の犯人はアフガニスタンからの移民であることを受けて、トランプ大統領は27日に米軍に対する感謝祭でのメッセージの中で、ホワイトハウスからわずか数ブロックの場所で、ウェスト・バージニア州兵2名のうち1名が死亡したと発表した。大統領は、この銃撃事件の容疑者は母国アフガニスタンでCIAと協力していたとされる人物であり、容疑者を「野蛮な怪物」と呼んだ。死亡した女性兵士はサラ・ベックストロム(20歳)であり、重傷を負っているとされるアンドリュー・ウルフ二等軍曹(24歳)について、トランプ氏は「命を懸けて戦っている」と述べた。
トランプ大統領は27日、犯罪から住宅不足に至るまで、あらゆる問題をアメリカの移民のせいにし、「逆移民」の考えを浮上させた。大統領は「この状況を完全に解決できるのは、逆移民だけです。それ以外は、アメリカを憎み、盗み、殺し、そしてアメリカが象徴するあらゆるものを破壊する者たちを除いて、皆に感謝祭を祝おう。君たちは長くここにいられないだろう!」とソーシャル・メディアに投稿した。そして、「ほとんどの」外国生まれの米国居住者は「生活保護受給者、破綻国家出身者、刑務所、精神病院、ギャング、麻薬カルテル出身者」だと述べ、貧しい国からの移民を「永久に停止」したいと述べ、アメリカの「社会機能不全」の原因は移民にあると責め、「逆移民」政策を提案した。
引き続き大統領は、米国の犯罪は移民によって引き起こされていると公言したが、統計はそれを裏づいていない。移民と米国市民における投獄率を比較したデーターは非常に少ないが、全米経済研究所が2024年3月に更新した「法を遵守する移民:移民と米国生まれの人々の投獄率の格差(1870~2020年)」と題する報告書によると、過去150年間、移民集団の投獄率は、米国生まれの人々よりも低い。米国生まれの人々と比較すると、移民の投獄率は1960年以降低下しており、今日、移民が投獄される可能性は60%低く、米国生まれの白人と比較すると30%低い。つまり、投獄率の差は1960年以降より顕著になり、近年の移民は米国生まれの男性よりも50~60%低い投獄率を示し、米国生まれの白人男性と比較すると30%低いという。「この相対的な低下は、すべての地域からの移民に見られ、移民の目に見える特性や移民政策の変化によって説明できるものではない。むしろ、この低下は、教育水準の低い移民と米国生まれの人々の間に見られるより広範な結果の乖離の一部である」と述べている。
加えて、アメリカ経済学会が2025年1 月に公開した移民と犯罪の関連性における約2世紀にわたるデータは、移民が米国生まれの市民よりも犯罪を犯す割合が低いことを示している。この研究は、全米経済研究所の研究の正確性を証明したものであり、移民の投獄率が米国市民に比較して移民の犯罪率が低いことを折線グラフで説明している。図表Aは1960年までは両グループの投獄率がほぼ同程度であったものの、その後劇的な乖離が生じたことを示している。2019年までに、米国生まれの男性の投獄率は人口10万人あたり約3,000人に達したが、移民の投獄率は人口10万人あたり1,500人未満に止まった。この報告も2024年3月に掲載された「法を遵守する移民:移民と米国生まれの人々の投獄率の格差1870~2020年」のタイトル記事を別の角度から引用したものである。つまり、1960年以降、移民男性の犯罪率は米国生まれの男性より50%低いことを強調している。更に、米国議会も2025年3月14日に、同じ報告書を利用して移民の犯罪率は遥かに低いことを明白にした。150年間の研究報告は非常に正確性が高いことから、驚異的に多くの機関や組織に利用されている。
最後に、トランプ大統領は不法移民と移民による犯罪に対抗するとの公約により2024年に選出された。ご承知のとおり、最初の数ヶ月間、大統領の移民政策は支持されていたが、犯罪歴のない合法的移民が拘束されるケースや、出生国ではないエルサルバドルのテロリスト刑務所に強制送還されるなど、幾つかの過激な移民政策の行使が論争的となった後、移民政策は行き過ぎであると考える有権者が増加したことによって政権の移民政策に対する支持も大幅に減少した。先週26日にD.Cで起きた銃撃事件後、トランプ氏は、D.Cにさらに軍隊の数を増やすと述べた。その後、国防省の長官ピート・ヘグゼスは同日午後、ホワイトハウス近くで州兵2名が銃撃されたことを受けて、トランプ大統領からワシントンD.Cへの州兵500名の追加派遣を要請されたと述べた。D.Cに対する州兵の派遣は拡大し、アラバマ、ジョージア、オハイオ、サウス・キャロライナ、ミシシッピーなど保守派州からの派遣隊も含まれている。トランプ大統領は、増兵することで、首都から犯罪が消えたと繰り返し主張しているが、これは公式犯罪統計とは矛盾している。D.Cの司法省は2025年1月3日、記者に公開した文書で、「コロンビア特別区における2024年の暴力犯罪は2023年より35%減少し、過去30年間で最低水準となった」と報告した。
要するに、偽ることはできない調査の数値は、増兵する必要がないことを示唆しており、政権は全く逆の行動を取っている事を示している。大統領は全ての問題を移民のせいにするような表現を用いているため、一般的に特定の移民を嫌っている印象や誤解を与えやすい。ちなみに、大統領の祖父母は共にドイツからの移民であった。母のメアリー・アン・マクロード・トランプは1930年にアメリカに移住し、1942年に帰化したスコットランドからの移民であった。父のフレッド・トランプは、ドイツ人の両親が1905年にアメリカに戻った後、ニューヨークのブロンクスで生まれたため、彼は第一世代のアメリカ人である。 大統領の最初の妻であるイヴァナはチェコスロバキアからの移民であった。3番目で現在の妻であるメラニアはスロベニアからの移民で、2006年にアメリカに帰化した。全てヨーロッパ系の移民であることから、貧困国からの移民の入国を永久に停止するという大統領の「逆移民」政策の提案は、他の人種の移民に言及していることを示唆している。しかし、人種とは無関係に、米国は元来移民で始まり、移民で構成された国であり、移民が米国経済の基盤を築いてきたという歴史を無視することは不可能である。