最高裁判定後の大統領令による新たな関税は何を示唆?

Photo credit : Liberty Justice Center

ご承知のように、米国最高裁は20日、6対3の投票で、課税権は議会にあるため、国際経済緊急権限法(IEEPA)を利用して、ドナルド・トランプ大統領が関税を一方的に設定および変更することは違憲であると判決した。その後、トランプ氏はプランBとして準備していたと思われる別の法律を利用し、すべての輸入品に10%の関税を課す大統領令に署名した。しかし、翌日の21日、15%に引き上げるとソーシャル・メディアで述べた。この行動は、最高裁が議会の承認なしに、大統領が課税することはできないと判定した直後に来ている。提訴した企業側を20日の勝利に導いた弁護士はこの状況について説明している。

トランプ氏の関税の訴訟で、最高裁まで至った裁判を勝利に導いたのは、2009年2月から2011年8月まで、オバマ政権の米国首席副司法長官であった弁護士ニール・カティアルである。同弁護士は、最高裁の判定後、2026年2月20日午前6時20分、Xでの声明で、「本日、米国最高裁判所は法の支配と世界中のアメリカ国民のために立ち上がりました。そのメッセージは簡潔でした。大統領は強力ですが、憲法はさらに強力です。アメリカでは、議会だけがアメリカ国民に税金を課すことができます。合衆国最高裁判所は、私たちが訴訟で求めていたものをすべて与えてくれました。すべてです。また、これらの不当で違憲な税金に反対して立ち上がった5人の中小企業経営者にも感謝します。彼らは立ち上がることで、全国の何万もの企業と何百万人もの消費者に重要な救済をもたらしました。この訴訟は、常に大統領職に関するものであり、他のいかなる問題でもありません。大統領は一人だけです。それは常に権力分立であり、その時の政治によるものではありません。250年にわたり政府の基盤となってきた最高裁判所が、私たちの最も基本的な価値観を保護していることを嬉しく思います」と述べた。

最高裁判定直後に、トランプ氏が関税を課すと発表した法的根拠は1974年の通商法第122条に基づいている。そして、最高裁の判定後の20日に10%の関税を課す大統領令に署名した。ところが、21日(土曜日)に、トランプ大統領は、これらの関税を15%に引き上げると発表した。 トランプ大統領は土曜日のソーシャル・メディアへの投稿でこの発表を行い、最高裁の判決を「ばかげており、不十分で、極めて反米的な判決だ」と非難した。最高裁は、大統領が議会の認可なしに、関税を課すことはできないと判定したにも関わらず、最高裁のその判定を迂回する意図を示唆している。そして、最高裁の判決は、輸入業者から集めたお金を政府が返還するかどうかについては何も述べていないが、関税によって既に徴収されたこれらのお金の扱いも明白にしていない時点で、新たな関税を課すという、判定直後の発表は酷く混乱状況にあることを示唆している。しかし、カティアル弁護士は、トランプ大統領が新たに署名した10%のグローバル関税および15%の増加の発表の妥当性に疑問を呈した。21日のXでの投稿で、「大統領が15%の関税(122条)に依拠するのは難しいように思われますが、司法省は本件において最高裁に対し、その逆の判断を示しました。「大統領が緊急事態宣言において指摘した懸念は、貿易赤字に起因するものであり、国際収支赤字とは概念的に異なる。 大統領が全面関税を望むのであれば、アメリカらしく議会に訴えるべきです。もし彼の関税がそれほど優れたアイデアであるならば、議会を説得するのは容易でしょう。それが憲法の定めです」と書いた。

関税10%で大統領令を発令した翌日に、15%に引き上げた件について、大統領令の修正があっかどうかについては不明瞭である。大統領令で署名された10%の課税は一般教書演説が予定されている2月24日の午前0時1分に有効化すると認識されている。これは、最高裁がトランプ大統領は一方的に関税を設定・変更することは違憲であるとの判決を下した後の行動である。但し、このプランBによる法的権限は、議会が延長しない限り150日間に限定されている。トランプ氏は、関税政策を様々な国に課すことで、貿易不均衡の是正、麻薬密売対策、米国製造業の向上のために関税が最も中核的な彼の経済政策であると主張してきた。全ての側面で無限の関税は、罰則的な手段であったことを示唆しており、同盟国が苦しんでいた事は広範に知られているが、大統領が最も好んでいた外交政策であると言われていた。しかし、歴代および近年の大統領はフェンタニル、オピオイド、その他の麻薬の流入を防ぐために、IEEPAを利用して、中国、メキシコ、カナダおよびその他の国に関税をかけたことはなかった。そして、麻薬の流入が緊急事態ではない現状を見ると、なぜトランプ大統領だけがそれを行なったのか疑問である。

米国疾病対策センター(CDC)のデータを引用した保守系の外交問題評議会(CFR)の報告によると、「オピオイド危機は長年米国の問題」であり、2025年に突然始まった訳ではない。「危機がピークに達した2022年には、薬物の過剰摂取による年間死亡者数は111,000人を超え、そのほとんどはフェンタニルによるものであった。フェンタニルと合成オピオイドは急速に増加し、18歳から45歳のアメリカ人の死因の第1位となった。しかし、2023年以降、死亡者数は急激に減少している。2023年6月以降、致死的な薬物の過剰摂取は全国で21%以上減少した。2025年4月までの12か月間で死者数は74,000以下なった。これは「依然としてかなり高い数字である」ものの、「2020年以降で最低の水準」となった。「こうした進展にもかかわらず、トランプ大統領は、フェンタニルの米国への密輸におけるこれらの国々の役割を関税導入の理由として挙げ、フェンタニルによる死亡者数は年間30万人から「数千万人」に及ぶと主張している。しかし、「法執行機関や公衆衛生の専門家は、これらの数字は不正確であると指摘している。」米国最高裁は20日の判定で、ジョー・バイデン前大統領も含めて、近年の大統領は、国際経済緊急権限法(IEEPA)を利用して米国への輸入製品に課税した大統領は誰も存在しないと述べた。CFRの報告は、最高裁の判定を一部間接的に裏付けていることを示唆している。

最後に、トランプ政権は大分以前から、最高裁がトランプ氏のお気に入りの関税を廃止した場合、米国は巨大な損害を被ると主張しつつも、代替措置があると述べており、ある程度の準備はあったことを示唆している。しかし、最高裁に対する強烈な批判の瞬間は非常に冷静さを失っていたことを示唆している。IEEPAを用いてほぼ全ての国に処罰的な関税を課すことは不可能になったため、既に議会を迂回して10%の関税による大統領令署名後に15%引き上げる意向を表明したことは、どれほど本人が怒りと失望で動揺していたかを示唆している。そして、証拠に反して、「関税を支払うのは外国政府であり、米国の消費者や企業ではない」と繰り返し主張してきた。値段が上昇することによって消費者が支払うことになると、ある日記者にさえ指摘されたにも関わらず、その事実は引き続き無視されている。しかし、ニール・カティアル弁護士は、米国最高裁が法の支配と世界中のアメリカ国民のために立ち上がったと述べた。最高裁とカティアルは同時に、米国では三権分立が盤石であることを強調した。

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