
Photo credit : The Jerusalem Post
イランとの戦争が2周目に入り、グローバル的経済のダメージは現実的になり始めている。イスラエルは7日にイランの石油貯蔵施設を爆破したため、イランはイスラエルの石油精製所に対して報復攻撃を行った。これにより、世界の一部はさらに石油不足による値段の上昇に直面する。更に、一部の国は航空貨物輸送コストが高騰するため製品の輸送に困窮し始めた。更なるインフレーションを感じるようになるのは時間の問題である。
ワシントン・ポストの金融ライターで貿易とグローバリゼーションを専門とするデビッド・リンチの報道によると、ミサイルとドローンを利用したイランの攻撃による破壊は、「世界経済の最も重要な拠点の一つを通る商業の流れを混乱させ、アジアとヨーロッパの間で商品を輸送する海上および航空交通の大部分を麻痺させ、遠く離れた金融市場の投資家に打撃を与えている。」先週からホルムズ海峡を通過する船舶が阻止されているだけでなく、世界で最も利用者数の多いドバイの国際空港を含めて、紛争地域にある複数の国際空港は閉鎖されている。これにより、「世界の航空貨物輸送能力の約5分の1が停止し、家電製品、医薬品、貴金属などの輸送が中断された。」スイスの物流大手キューネ・アンド・ナーゲル・マネジメントの最高経営責任者(CEO)ステファン・ポールは3日、投資家に対し、利用可能な航空貨物輸送能力と需要のギャップが東南アジアと中国で貨物の滞留を引き起こしていると述べた。新たな状況は「コロナの時と似ている」という。
国際通貨基金(IMF)の元エコノミスト主任モーリス・オブストフェルドは「欧州とアジアはエネルギー輸入に大きく依存しているため、それだけでもイラン戦争によるマクロ経済への悪影響の波及効果を受けやすくなっています。地理的に戦闘地域に近いことも、欧州とアジアが戦争の衝撃波に対してより脆弱な要因となっています」と述べた。米国よりも急激に経済的ダメージを受けているのは今のところ、「ホルムズ海峡を経由する石油やガスの輸送に最も依存している」イタリア、ベルギー、中国、インド、韓国など、「アジアとヨーロッパの経済が最も深刻な影響を受けている。」しかし、アメリカ人が無傷で済むわけではない。先週報告されたように、ガソリンの価格は上昇している。また、「農家は重要な農作物の栄養素の価格上昇に直面しており、イラン紛争がトランプ政権の予想よりも長引けば、サプライ・チェーンにさらなる問題が生じることは間違いない。」ドバイのスタンダード・チャータード銀行のグローバル調査責任者、エリック・ロバートセンは、「アジアへの経済的影響を無視してはならない。もしこの紛争が長期化すれば、アジアは非常に大きな痛手を被ることになるだろう」と述べた。
現在、報告されている経済的ダメージは以下のようになる。
(1)サンフランシスコの貨物運送・物流会社フレックスポートのCEOライアン・ピーターセンは、アジアから欧州への航空貨物輸送コストは戦争開始以来45%上昇しており、これはアジアから米国への貨物輸送コストの2倍以上であると述べた。(2)フレックスポートは、中東の顧客向けの貨物や世界市場向けの貨物を積んだコンテナ船計57隻が海峡内に閉じ込められていると報告した。ピーターセンは「これらのコンテナは世界中の発送港で滞留し、積み込みも行われないままになる」と述べた。(3)ジェット燃料価格の欧州指標は、戦争勃発以来72%上昇しており、ロシアのウクライナ侵攻後の2022年のピークに急速に近づいている。
(4)追跡サービスのマリントラフィックは、この海峡を通過するタンカーの交通量は戦前の水準より90%減少している。英国海事貿易オペレーション・センターは先週5日、クウェート沖に停泊していた石油タンカーの船長が、船の左舷側で「大きな爆発」を目撃したと報告した。この爆発により少量の原油がペルシャ湾北部に流出したという。(5)海上交通渋滞は世界のサプライ・ラインに波及し始めている。世界最大級の海運会社マールスクは木曜日、アラブ首長国連邦、オマーン、イラク、クウェート、カタール、バーレーン、サウジアラビア発着のほぼすべての貨物の新規予約を停止すると発表した。(6)別の大手海運会社MSCは先週、メキシコ湾岸へ輸送中のコンテナを「次の安全な港」に迂回させると発表した。この決定は、「企業が予定していた目的地から遠く離れた港で突然、貨物が放置され、予想外の保管費用が日増しに膨らむ事態に直面する可能性がある」ことを示唆している。
(7)通常、旅客機の胴体部分や専用貨物機に搭載され、航空輸送されるコンピューター・チップなどの電子機器、航空宇宙部品、ファスト・ファッション、花卉、医薬品などの輸送コストは高くなる。これまで、激しいミサイル、ドローン、爆撃を受け、航空貨物は海上輸送よりも大きな影響を受けている。UAE、カタール、バーレーン、クウェート、イラク、イランなどの国々が領空を閉鎖した。(8)貨物機は依然としてアジアとヨーロッパの間を飛行している。しかし、通常ドバイやカタールに寄港するはずの航空機は迂回ルートを取らざるを得なくなり、より多くの燃料を積載する必要が生じ、貨物輸送能力がさらに低下している。シカゴのSEKOロジスティクスの最高商務責任者、ブライアン・バークは、中国や北アジアを出発した航空機は、トルクメニスタンなどの国の上空を「綿密なルート」で飛行しなければならないと述べ、「北へ飛びすぎることも、南へ飛びすぎることもできない」と述べた。同氏は南のイラン戦場と北のロシアの立ち入り禁止空域の間を慎重に飛行しなければならないと指摘した。
(9)尿素と無水アンモニア肥料の世界トップ10生産国のうち、サウジアラビア、カタール、イランの3カ国が紛争地域にある。そのため、米国では、農業従事者が戦争による経済的打撃を最初に受ける可能性が高くなる。金融サービス会社ストーンXの副社長ジャシュ・リンビルによると、尿素価格は先週約25%上昇し、海峡が閉鎖されたままであればさらに上昇すると予想される。価格上昇は、農家が今年最も多くの肥料発注を準備しているまさにその時期に発生した。(10)もう一つの主要生産国である中国は、少なくとも8月まで輸出を制限する方針である。従って、戦争が長期化すれば農家は更に大きな打撃を受ける可能性がある。リンビルは「数字で表すと何になるのかさえ分からない。これは私たちがかつて経験したことのない事態です」と述べた。
最後に、これらの状況は、コロナウイルスでグローバル経済が緊迫した状況及びロシアがウクライナに侵攻し、全面戦争になった直後から、ガソリン価格が高騰しただけでなく、サプライ・チェーンに問題が生じたことを回想させる。しかし、現在のところ、経済的痛みは平等に感じられるわけではないが、世界は近年繰り返される同様のパターンを見ている。これら一部の分野では消費価格指数も上がることを意味するが、戦争が長引けば、グローバル全体の経済が深刻な打撃を受ける可能性も高くなる。ドナルド・トランプ大統領と副大統領J.Dヴァンスは、7日にデラウェア州ドーバー空軍基地で、イランとの戦争で死亡した最初のアメリカ軍兵ジェフリー・オブライエン少佐の遺体が入った旗で覆われた移送ケースが通過する際に敬礼した。クウェートの作戦センターがドローン攻撃を受けた後、遺体となったオブライエンは米国に帰国した。現在死亡した6人の兵士の身元は確認されている。この日、トランプ大統領は激化する紛争に巻き込まれた近隣諸国に謝罪したものの、米国はイラン戦争における攻撃目標を拡大すると述べた。