米国最高裁は先月、トランプ大統領の経済緊急事態宣言による関税措置を非合法であると判定した。この判定を受けて、先週、国際貿易裁判所はトランプ大統領の関税還付金の返還を命じた。しかし、トランプ政権は、返還には数年かかると述べ、積極的に可能な限り早く返還する意思はないことを示唆した。政権は、この返還で失う歳入を補填するため、別の方法で関税を課すための手段を模索しており、同時に複数の法律に基づき、関税措置とは別の様々な調査を開始した。それには日本も含む外国に対する調査も含まれている。
米国最高裁は2月20日、トランプ大統領が世界の多くの国々に課した広範な「相互」関税を含め、これらの関税は緊急事態権限法に違反すると判断したことはご承知の通りである。国際貿易裁判所のリチャード・イートン判事は3月4日、この最高裁判所の判定を受けて、ドナルド・トランプ大統領が昨年、1977年の国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき課した関税の対象となる「登録輸入業者全員」が「救済を受ける権利がある」とする判決を下した。しかし、トランプ大統領は、その返還のプロセスにはかなりの時間がかかると述べている。先月、最高裁がトランプ大統領の世界的に大幅な無制限の関税は違法であると判定した直後から、カスコ、フェデックス、任天堂など複数の米国企業が資金の回収を期待して訴訟を起こし始めた。現在、数千の企業が関税の払い戻しを求めて政府を訴えていると言われている。
ニューヨーク・タイムスが12日に伝えたところによると、トランプ政権はその後、その返還には「問題がある」と発表した。「すべての還付申請を政府が手作業で処理するには、最大4,431,161時間かかる可能性がある。政府の集計によると、不法関税の対象となった自動車、玩具、衣料などの商品の申請件数は5,300万件以上である。」政権は、裁判官に対し、すべての還付金を返還するにはかなりの時間が必要であると述べた。「法廷でのこの主張は、トランプ大統領が発動し、現在無効とされている緊急関税によって徴収された約1,660億ドルの返還をめぐって、法的行動が棚上げ状態であることを浮き彫りにしている。政権は当初から、1年以上が経過した現在もその代償を負担してきた企業に関税分を返還することは困難であり、場合によっては損害をもたらすだろうと警告していた。」しかし、「トランプ大統領とその側近たちは、今後の還付手続きを簡素化するための措置を講じているわけではない。」トランプ大統領は長年関税を奨励してきたため、「関税還付金の返還に反対する姿勢を明確にしている。政権はすでに裁判で還付手続きの遅延を試みている。また、大統領は各国政府の債務をめぐる法廷闘争の終結には何年もかかる可能性があると主張しており、他の方法でも還付を阻止しようとする可能性を示唆している」という。
最高裁の判定直後から、関税還付の返金を求めている多数の企業からの訴訟に直面している中で、政権は関税方法を模索するための調査を開始した。AP通信の12日の報告によると、トランプ政権は11日、「外国の製造業に関する新たな貿易調査」を開始した。トランプ大統領とそのチームは、2月20日の「最高裁の判決によって失われた数千億ドルの歳入を、別法律に基づく新たな関税を課すことで補填しようとしていることを明確にしている。」政権によるその調査は「1974年通商法第301条に基づいている。最終的には新たな輸入税導入につながる可能性がある。」しかし、米国通商代表者のジェイミーソン・グリアは11日の記者との電話会見で「調査の結果を予断したくない」と述べ、「政策は変わらない。手段は、裁判所の判断などによって変わる可能性がある。アメリカの雇用を守ることが目的である」と述べた。
トランプ政権の調査の対象になる国は、欧州連合、スイス、ノルウェー、メキシコ、中国、日本、韓国、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カンボジア、タイ、ベトナム、台湾(自治領)、バングラデシュ、インドが含まれる。米政府は「米国に対する恒常的な貿易黒字、補助金や労働者の賃金抑制といった政策など、様々な要因を調査している。また、政権は強制労働によって製造された製品の輸入を禁止するための第301条に基づく調査も開始している。 グリアは、デジタル・サービス税、医薬品の価格設定、海洋汚染などの問題についても、第301条に基づく追加調査が行われる予定であると示唆した。更に商務省は、1962年通商拡大法第232条に基づき、別途貿易調査を行っている。政権は調査完了までの期限に追われている。政権は1974年通商法第122条に基づき、外国製品に10%の関税を課しているが、これは150日後の7月24日に失効する」という。以前も報告されたように、最高裁がIEEPAに基づく関税を無効にした判定の直後に、トランプ大統領は10%の関税による大統領令に署名し、その翌日に輸入税を15%に引き上げる計画を表明した。しかし、「この変更措置はまだ実施されていない。」
要するに、トランプ政権は、大統領の貿易戦争の最も厳しい後遺症として、関税で得た歳入の約1,660億ドルの返還をしなくてはならない事態に直面している。それでも、引き続き別の法律に基づいて新たな関税を課すためのプロセスを開始するという。また、1974年の通商法第301条に基づき、特定の外国の貿易慣行に対処するために、広範な調査を行うようである。また、商務省が国家安全保障の脅威があると判断した場合、大統領が輸入品に関税や制限を課すことを認める米国の法律である1962年通商拡大法第232条も利用した調査を行うという。これは、トランプ政権が、1977年の国際緊急経済権限法(IEEPA)を用いた関税は、違法であると最高裁が判定したため、徹底した調査を行なった上で、新たな関税を採用する準備を開始したことを示唆している。とは言え、関税は輸入製品とサービスにかかる政府が課す税金であるため、多くのビジネスが反対したという意味では、同じ結果になるかもしれない。新たな関税のプロセスは「昨年世界経済を揺るがした多くの騒動の再来を招く可能性がある」として懸念されている。政権は様々な調査が、新たな関税措置とは別のものであると示唆した。イラン戦争で、世界はすでに経済混沌に直面している。最初の一週間に113億ドルを支出したとの驚異的な報告、石油価格への高騰も含むイラン戦争による経済的動揺、米国民の経済的不満が巻き起こる中で、新たな関税措置を課すことは、これらの混沌をさらに悪循環に導く可能性がある。