Central Banks Brace for Faster Inflation as Energy Prices Surge
The New York Times : March 19, 2026
この記事は、米国とイスラエルの連携による対イラン戦争が、世界経済に深い衝撃と不確実性をもたらしているだけでなく、日本も含む各国中央銀行の政策立案者たちの今後の方針にも不確実な影響を与えている点を指摘している。
米連邦準備制度理事会(FRB)は18日、一連の会合で金利を据え置くという決定を下した。その後、欧州中央銀行(ECB)、英国銀行(BOE)、そして日本銀行もFRBの決定に足並みを揃えた。これはこの戦争によって、エネルギー価格の高騰に起因する新たなインフレの脅威に直面しているためである。これまで、各中央銀行の政策立案者達は、それぞれ異なる経済情勢に合わせて格闘してきた(had been grappling with different economic circumstances)が、エネルギー供給の長期的な混乱(a long disruption)が自国と地域の物価を押し上げるという見通しによる。
最も即時に顕著な方針転換が見られたのは英国である。英国の政策立案者たちは19日、政策金利を3.75%に据え置くとともに、「経済に対する新たな衝撃(the new shock to the economy)」を理由として、短期的にはインフレ率が上昇するとの見解を示した。わずか約3週間前には、インフレ率が目標値である2%へと回帰しつつあるとの確信が高まっていたことから、市場の貿易業者たちは今週の会合での利下げを予想していた。しかし現在、彼らは今後1年間のうちに2回の利上げが実施されるとの見方を強めている。 英国銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は19日、政策立案者たちが金利を据え置いた理由が中東における紛争が、世界のエネルギー価格を押し上げている中で「事態の推移を見極める(assess how events unfold)」ためであると述べた。「中東での戦争が、世界のエネルギー価格を押し上げました。その影響はすでにガソリン・スタンドで見て取れますが、もしこの状況が長引けば、今年後半には各家庭のエネルギー料金の上昇へと波及していくことになるでしょう」と述べた。
19日、ペルシャ湾岸地域におけるエネルギー関連施設への攻撃が激化したことを受け、原油および天然ガスの価格が急騰した。国際的な指標(the international benchmark)とされるブレント原油は1バレルあたり115ドルまで上昇し、欧州の天然ガス価格は、一時35%もの急騰を記録した。その後、ガス価格は幾分落ち着きを取り戻したものの、2月末に戦闘が始まる前の水準と比較すれば、まだ2倍もの高値を見ている。インフレ再燃のリスクが浮上したのは、各国中央銀行が、2022年のロシアによるウクライナ侵攻に端を発した「過去数十年間で最大規模のインフレ急騰」との闘いを終えたばかりの時期と重なる。インフレ率がピークに達した局面では、ユーロ圏の平均インフレ率は10%、英国では11%をそれぞれ上回っていた。これに対し、各国の政策立案者たち(policymakers)は政策金利の積極的な引き上げという手段で対抗したが、その結果は住宅所有者、企業、そして政府財政にとって、苦痛を伴うものとなった。
連邦準備制度理事会(FRB)の多くの政策担当者は18日、年内にもう一度利下げを行うとの見通しを依然として維持していると述べた。FRBのジェローム・パウエル議長は、中東情勢をめぐる経済の不確実性が極めて高い(economic uncertainty is extremely high)ことを繰り返し強調し、それがインフレや労働市場にどのような影響を及ぼすかを見極めるには、時期尚早であるとの認識を示した。 欧州では、市場関係者の間で、インフレ抑制に向けて中央銀行が年内に利上げに踏み切るとの観測が広がり始めている。これは、わずか数週間前までの市場の予想とは一転した劇的な変化である。中央銀行の一部の政策委員は「インフレの根強い兆候を懸念していたことから、緩やかなペースで利下げを進めていた。そのインフレも、ようやく収束に向かっているかに見えた(finally seemed to be abating)。先月、政府がエネルギー料金の引き下げ策を発表したことを受け、同行はインフレ率が4月には目標水準に戻るとの見通しを示した。これは、従来の予想よりも1年早い時期にあたる。しかし、イランでの戦争により、こうした見通しは一変してしまった(has been upended)」と言う。
英国のインフレ率は、3月には約3.5%に達すると予想されている。これは同行が先月予測していた水準を0.5ポイント上回るものである。また、第3四半期においても3%前後の水準に留まると見られており、これはインフレ目標を1ポイント上回る数値となる。ユーロ圏21カ国の金利を決定する欧州中央銀行(ECB)の政策委員たちも、政策金利を2%に据え置くことを決定した。この決定自体は予想通りのものであったが、政策委員らは、中東での戦争により経済見通しの「不確実性が著しく高まった」とし、短期的なインフレに対して「重大な影響(material impact)」が及ぶとの見解を示した。欧州中央銀行は現在、今年の平均インフレ率を2.6%と予想している。これは、インフレ率が目標をわずかに下回る(slightly undershoot )1.9%に留まるとした以前の予測から、上方修正された数値である。また、同行は経済成長率の予測も下方修正を行った。
貿易業者達は、欧州中央銀行(ECB)が今年中に少なくとも2回の利上げを行うと見込んで賭けている。中東での戦争が勃発する以前は、金利の変更はないと予測されていた事とは対照的だ。 「我々は、こうした不確実な状況を乗り切るための態勢を十分に整えている(are well positioned to navigate this uncertainty)」と、同行のクリスティーヌ・ラガルド総裁はフランクフルトでの記者会見で述べた。同総裁はさらに、政策立案者たちが状況を注視しているとし、とりわけエネルギー価格の高騰が、製品やサービスにおけるインフレの広範な加速を招くリスクについて警戒していると付け加えた。
これに先立つ19日、日本銀行は政策金利を0.75%に据え置いた。イランとの戦争が勃発する以前は、市場であるコンセンサスが形成されつつあった。それは、4年間にわたる相対的な停滞(relative stagnation)を経て、今年こそ賃金の上昇がようやくインフレ率を上回り始める(wages would finally begin to outpace inflation)と投資家たちが予測したことを受け、日本銀行が早ければ来月にも利上げに踏み切る可能性があるという。もし実現していれば、数十年にわたり日本経済の特徴となってきた「ほぼゼロ金利」政策からの大転換となるはずだった。しかし、戦争の勃発がこうした見通しを一変させた。エネルギー価格の急騰が世界経済の成長を脅かし、日本の家計をさらに圧迫する(further squeezing Japanese households)中、一部のアナリストたちは現在、中央銀行による次回の利上げは夏頃まで先送りされるだろうと予測している。東京での記者会見において、日本銀行の植田和男総裁は、今後も利上げを継続する方針であるとしながらも「中東情勢の緊迫化(in the Middle East intensifying situation)が日本経済にどのような影響を及ぼすかという点が極めて重要になる」と述べた。 同総裁はさらに、「物価上昇や景気悪化(price increases and economic deterioration)がもたらす影響の度合いなどを総合的に判断し、適切な対応を選択していく」と語った。
最後に、FRBのインフレ率は2%が目標であり、その目標に近づいていた時点で、突然、米国とイスラエルは連携による対イラン戦争を勃発させた。米国、欧州、英国、日本を含む主要国の中央銀行の政策立案者らは、最近ようやく、インフレが停滞し始めた時に、予期しなかったこの戦争がもたらすエネルギー価格の上昇が短期的に物価の高騰に繋がり、様々な角度から管理を困難にすることを懸念している。また、今後一年間でオイル供給の混乱が長期的になれば、インフレは押し上がるとの見通しを示している。急激なインフレーションが確実に起きるかどうかを判断するのは現時点では時期尚早であると考えているようだ。彼らは、金融引き締めに前向きであることを示唆している。また、中東で起きている戦争による悪影響が自国の経済にどの程度の負担をもたらすかを慎重にモニターする姿勢があることも示唆している。