米国とイスラエルの合同作戦によるイラン戦争で、イランは極めて重要な石油運搬のルートであるホルムズ海峡を封鎖している。これまで、イランの石油貯蔵地および油田を爆破したため、石油の価格が高騰し、世界中の航空運輸に必要なガソリンも当然高くなる中で、航空会社は、乗客の航空券の値段を引き上げる可能性が高い。既に、旅客飛行機のガソリン代を引き上げた航空会社もある。しかし、主要メディアの調査によると、需要が拡大し、好調な航空会社もある。
ニューヨーク・タイムスが24日に報じたところによると、対イラン戦争は、世界中の航空輸送に混乱をもたらしている。現在、中東やアジアのその他の地域にある航空会社は、米国の航空会社に比べてはるかに深刻な打撃を受けている。燃料費は飛行便の運航コストの大部分を占めるため、航空会社はこの紛争による影響を最も早く受けており、ジェット燃料の価格はおよそ2倍に高騰した。しかし、航空会社は、拠点を置く国々によって、燃料費の高騰、飛行制限、そして需要の低迷といった要因に晒される規模や方法がそれぞれ異なっている
航空券価格や燃油追加料金引き上げ又はリスク回避策を取る航空会社
エールフランス航空とKLMオランダ航空は、長距離路線の航空券価格を50ユーロ($58)引き上げる措置を導入した。ユナイテッド航空のCEOスコット・カービーは23日、ブルーンバーグTVに対し、燃料費の高騰を補うため、航空券価格が20%上昇する可能性があると語った。カービーはさらに、原油価格が1バレルあたり175ドルという高値まで上昇する恐れがあると述べた。 同氏は先週、従業員宛ての書簡の中で、ユナイテッド航空が今年、供給座席数を約5ポイント削減する方針であることを伝えた。具体的には、収益性の低い深夜便や平日のフライトを縮小すると言う。インドの格安航空会社(LCC)は、エア・インディア、インディゴ、アカサ・エア、キャセイ・パシフィック航空、大韓航空の貨物部門であるコリアンエア・カーゴは、4月1日より燃油費の追加料金に関する規定に対し「緊急調整」を適用する。戦争が長期化すれば燃料価格増加を示唆している航空会社もある。格安航空会社ライアンエアのマイケル・オレアリー最高経営責任者(CEO)は、業界団体のAirlines for Europe(欧州航空会社連盟)が主催したイベントで、「我々は燃料価格の固定または上限設定(リスク回避策)を十分に行っているため、大幅なコスト増は見込んでいない」と語った。「しかし、もしこの状況が6ヶ月、8ヶ月、あるいは9ヶ月と長引き、ホルムズ海峡の閉鎖が続くような事態になれば、問題が生じることになるだろう」と述べた。
航空便を欠航および飛行制限する航空会社
中東地域では、各国の政府が安全上の理由から空港を閉鎖したり飛行を制限したりせざるを得なくなったため、航空会社が数万便もの飛行便を欠航させる事態となっている。中東の航空各社は、飛行便の大幅な削減に踏み切っている。航空コンサルティング・データ企業のOAGによると、同地域最大手の航空会社であるエミレーツ航空は、今週の運航便数を2月最終週と比較して40%削減する計画である。カタール航空も62%の減便となり、エティハド航空も運航便数を50%減らしている。こうした中東地域での混乱は、航空業界全体にも波及している。OAGのデータでは、2月最終週の時点で同地域への飛行便を予定していた44社の航空会社が、4月までの全便の運航をキャンセルした。中でも深刻な打撃を受けたのがエア・インディアである。同社が運航する中東とインドを結ぶ長距離便36便のうち、16便が23日に欠航となった。こうした混乱を受け、旅行計画の中止を余儀なくされる旅行者も出ている。
状況が多様であるアジアの航空会社
アジアの他地域や南太平洋地域において、状況は更に異なる。一部の大手航空会社は順調に経営を維持しており、これまでペルシャ湾岸地域の航空会社を利用していた旅行者を取り込むことで、むしろ航空券の販売数を伸ばしているケースさえある。中国南方航空は、少なくとも1便の運航縮小に踏み切った。同社は先週、広州とオーストラリアのダーウィンを結ぶ週3便の直行便の運航を廃止すると発表した。この路線を利用予定だった乗客については、オーストラリアのシドニー経由の乗り継ぎ便へと振り替える対応をとる。韓国の小規模航空会社であるエアプサンも先週、フィリピン、ベトナム、グアム方面への4月分の飛行便を削減したという。フィリピンの格安航空会社(LCC)であるセブ・パシフィック航空も23日、来月中旬より5路線の運航を休止し、さらに10路線の運航頻度を減らすと発表した。
苦戦を強いられている航空会社
この紛争の影響で、燃料費の急騰、需要の低迷、そして飛行時間の長期化により、航空会社は湾岸地域上空の飛行を回避せざるを得なくなっており、その結果、航空機が消費する燃料の量が大幅に増加している。 さらに一部の地域では、ジェット燃料の供給不足が極めて深刻化しており、空港によっては、割り当てによる燃料の配給制限を実施する事態にまで至っている。苦戦に直面している航空会社の一部は運航計画の見直しを進めている。ニュージーランド航空は、燃料の節約が必要であるとして、今後2ヶ月間にわたり需要の低い路線の削減に着手すると発表した。同社の広報担当者は「可能な限り手頃な運賃を維持しつつ、燃料を最大限に効率よく使用するため、一部のフライトを統合・調整することにいたしました」と説明している。欧州では、多くの航空会社が、先物契約などの上限設定手法を用いてジェット燃料の調達価格を固定したことで、運賃の大幅な引き上げを回避できたと述べている。しかし、欧州の航空会社幹部でさえ、先週開催されたイベントにおいて、もし戦争が数ヶ月に及ぶなら、航空券価格引き上げを余儀なくされる可能性があるとの見解を示した。
現在のところ好調である航空会社
米国内の航空会社はこの紛争による影響を比較的免れている。多くの米国人は依然として高い運賃を支払えるだけの可処分所得を保持しており、概して旅行を継続している。欧州においても需要は堅調であり、多くの航空会社が事前に割安な燃料価格を確保していたことも、状況を支える要因となっている。オーストラリア最大の航空会社であるカンタス航空は、欧州発着便への需要が好調に推移していると発表した。同社が声明の中で明らかにしたところによると、パースとロンドン、およびパリを結ぶ飛行便の搭乗率は今月90%を超えており、これは平時の水準を約15ポイント上回る数値だという。Airlines for Europeのイベントにおいて、エールフランス-KLMグループの最高経営責任者(CEO)ベンジャミン・スミスは、アジアおよびアフリカ方面へのフライト需要が「極めて堅調」であると述べた。ルフトハンザ・グループのCEOカーステン・シュポールは、ルフトハンザグループ傘下の各社は、こうした需要の高まりに対応するため、アジア発着便を数十増便したという。同氏は、それらの増便分は予約受付開始からわずか数日のうちに完売したと語った。
最後に、現在のところ、全ての航空会社が苦境に直面している訳ではないようだ。欧州、中東、アジアは、それぞれ状況は異なっている。また、この紛争は旅行のパターンにも変化をもたらしている。多くの人々が中東経由の飛行便を避けるようになった結果、需要が増加し、好調な航空会社もあれば、燃料を節約するために苦戦している航空企業もある。しかし、総体的には賢い措置で、冷静に対応している状況があることを示唆している。米国の航空会社は、他地域の航空会社とは異なり、燃料費の固定又は上限設定を積極的に行わないのが一般的である。そのため、各社の経営幹部らは、燃料費の高騰分を運賃に転嫁し、旅行者に負担してもらうことで対応していると言う。全米の空港では、春休み時期の現在、混雑が見られるが、多少航空券価格が値上げ又は燃料費を追加されても妥協する姿勢があることを示唆している。米国の航空会社と米国民は、トランプ大統領がこの対イラク戦争を長期化しないと信じている可能性もあるかもしれない。なぜなら、トランプ氏が紛争を終えるためにイランとの交渉を行っていると発表した翌日の23日早期に、株式市場は高騰した。しかし、24日、サウジアラビアは、戦争を続けるようトランプ大統領に呼びかけたと報告されている。一部の航空会社は、紛争が早期に終結しない場合、全ての状況が悪化する可能性が高くなるとの懸念を表明している。恐らく、世界的に、他の多国籍企業や一般国民も同様であると思われる。