米国生誕市民権は米国憲法の基本

Photo credit : UVA Today – The University of Virginia

米国で生まれたすべての人々は米国市民であると謳っている米国憲法修正第14条は1868年7月9日に批准された。トランプ大統領は2025年1月20日の就任直後に、155年以上、誰も挑戦したことのないこの憲法の解釈を再定義するための大統領令に署名した。その大統領令に対する幾つかの訴訟が提起された為、米国最高裁は4月1日にその審理を行う予定である。学者や法専門家の間では、大多数がその大統領令に疑問を提起し、生誕市民権は米国憲法の基本であることを示唆している。

2025年1月20日にドナルド・トランプ大統領が署名した公式文書である大統領令の文頭には「合衆国内で出生し、または帰化し、且つその管轄権に服するすべての者は、合衆国およびその居住する州の市民である」との合衆国憲法修正第14条の最初の一行が引用されている。そして、「修正第14条が、合衆国内で出生したすべての人に対して無条件に市民権を付与するものとして解釈されたことは一度もない。修正第14条は、合衆国内で出生したものの『その管轄権に服さない』人々を、出生による市民権(生誕市民権に基づく市民権)の対象から常に除外してきた」と述べている。そして、大統領の「政策」、つまり大統領令として、(1)「当該者の出生時において、その母親が米国に不法に滞在しており、且つその父親が米国市民または合法的永住者でなかった場合、または (2)「 当該者の出生時において、その母親の米国滞在が合法的ではあるが一時的なものであり、且つその父親が米国市民または合法的永住者でなかった場合」米国市民権を認定することはできないとしている。

これらは、生誕市民権の条項に関するトランプ大統領の解釈を再度定義するよう命令しているため、憲法学者らの注目に値する論議の一部であり、今回、米国最高裁は生誕市民権の条項に関連するこの論争的な行政命令に対して、直接的に審理を行うと決定したのである。この大統領の問題点は、米国で生まれ、これまで米国市民であった人々が強制送還の対象になった場合、どの国に強制送還するのか、両親の一人がメキシコからの不法移民であった場合、メキシコに送還するのかという疑問も提起するが、そのような危機に直面した個人を代表した多数州の司法長官らが、大統領令に挑戦している。そして、4月2日に行われる米国最高裁の審理は、長くても半年後には最終判定に至ることになる。最高裁の審理は、2025年に提起された以下の裁判に基づいている。

(1)「バーバラ対ドナルド・トランプ」は、市民権が脅かされる恐れのある親や子供たちを代表してニューハンプシャー州のアメリカ自由人権協会が提起した訴訟であり、2025年12月に米国最高裁判所が審理を受理した主要な訴訟である。これは、普遍的差止命令を発令する権限を有するか否かを争点としたものである。生誕市民権の問題を直接的に扱ったものではないが、トランプ大統領が発令した大統領令の執行を阻止するために判定された、一連の普遍的差止命令を巡るものであった。(2)州主導の訴訟では、アリゾナ、イリノイ、ワシントン、オレゴンの各州が生誕市民権に基づく市民権を保護するために、連合訴訟を提起した。更に、マサチューセッツ州、カリフォルニア、ニューヨーク、およびその他18州が別途に訴訟を提起した。裁判官はいずれも大統領令を差し止める判定を2025年7月に下した。

(3)「トランプ対CASA社」の裁判は、下級裁判所の裁判官がトランプ氏の大統領令を全国的に阻止するための「普遍的差止命令」を発令する権限があるか否かを争点とした米国最高裁判所の判例である。最高裁は2025年6月27日、6対3の多数決により、原告に対して「完全な救済」を提供するために必要不可欠な場合を除き、普遍的差止命令の発令は司法権の範囲を逸脱するものであるとの判決を下した。この時点で、最高裁は生誕市民権に関する問題に関与していなかった。連邦下級裁判所は、訴訟手続が進行中の間、大統領令の全国的な執行を阻止するため、普遍的な暫定的差止命令を発令していた。これらの法的背景がある中で、学者らはどのような判定を最高裁に望んでいるだろうか?

ニューヨーク・タイムスは幾人かの法律専門家の意見を紹介している。以下は憲法に従うよう促す一人の意見である。2016年2月他界した「アントニン・スカリア判事の元判事補佐官であり法学教授のマイケル・ラムジーは、2020年に初めて市民権に関する問題を検討し、トランプ氏が政権に復帰した後も、近著Birthright Citizenship Re-Examined(生誕市民権による市民権の再検討)の中で再びこの問題を取り上げた。スカリア判事や現職の最高裁判事の一部と同様に、ラムジー教授もまた自らを「オリジナル主義者(憲法制定時の原意を重視する立場)」であるとみなしている。「同氏は、第14修正条項の起草をめぐる議会論争において、トランプ氏の主張を支持し得るような議員の発言が存在することを一部の新たな研究が指摘しているものの、それらの発言は曖昧なものであったと結論付けたと述べた。その上で同氏は、最高裁判事らはむしろ、憲法の条文そのもの、すなわち米国で生まれた新生児に対して市民権を広く付与しているその文言にこそ、焦点を合わせ続けるべきであるとの見解を示した。」

次の3人は大統領令に同意しない意見を提供している。ジョージ・W・ブッシュ政権下で政府高官弁護士を務めたカリフォルニア大学バークレー校法学部のジョン・ユー教授は「トランプ氏が最初にそのことについて語り始めたとき、多くの人々は『正気ではない』と考えました。しかし、その後の数年間に、より多くの『真面目な人々』が、これを真剣に受け止めるようになっています」と語った。保守派の元連邦判事であり、スタンフォード大学法学教授でもあるマイケル・マコーネル氏は、「トランプ氏の立場に同調した一部の『原典主義者』について、『真摯な学者』であるとし、彼らの見解には『一考を要するものがある』と評した。しかし、最終的には、裁判所はトランプ氏の大統領令がその権限を逸脱していると結論づけ、彼に対して不利な判決を下すべきであると同氏は考えている」という。Democracy Defenders Fund(民主主義擁護基金)の上級弁護士、タリン・ウィルガス・ナル氏は「かつては極右の周縁的な思想に過ぎなかった理論や考えが、現政権に採用され、政策として実行に移されているのです。政権がこうした極端な行動をとっているからといって、それが主流の行動になるわけではありません。また、それによって合法となるわけでもないのです」と述べた。

大統領令に同意する一人の意見では、ジョージタウン大学法学部の教授ランディ・バーネットと共同で、ニューヨーク・タイムス紙にTrump Might Have a Case on Birthright Citizenship(トランプ氏、生誕市民権に基づく市民権をめぐり主張が通る可能性)と題する論考を寄稿しており、このテーマに関する論文を最近執筆したミネソタ大学法学部のイラン・ワーマン教授は、「私たちは、この問題が決して自明の理などではなく、従来の通説が正しくない可能性があり、またトランプ大統領令には世間が認識している以上に説得力があることを確信させるに足るだけの資料を目にしてきました」と述べた。

要するに、5人の法専門家のうち、トランプ氏の大統領令に明白に同意しているのは一人だけである。基本的に4人は、これまで約157年間、米国が憲法修正第14条を支持してきた歴史に疑問を提起し、大統領令で、その解釈と定義を変えようとした前例はないことを示唆している。この状況を見ると、米国最高裁は、トランプ大統領が第一期の政権当時から重視していた生誕市民権の定義の再検討を求めた大統領令の合法性を却下する可能性がある。不法移民の両親から生まれた子供も米国市民になるという憲法は、不法移民にとっては実に都合の良い法律であるとして、過去に、憲法改正を呼びかける声も稀にあった。しかし、大統領令で憲法に挑戦した大統領は過去には存在しなかった。憲法修正第14条はアメリカ合衆国で生まれた子供は米国市民であることを保証しているため、訴訟を提起した個人及びグループは、大統領令は、憲法違反であるとして、トランプ大統領を訴えたため、米国最高裁はこの論議を聞くことに同意した。長年、この憲法については法的専門家や憲法学者は一般的に同意しているため、憲法改正の動きさえなかったが、不法移民の取り締まりを最も重要な政策として取り組んでいるトランプ氏の大統領令は「当たって砕けろ」的な挑戦に見えた。

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