アルツハイマー病のあれこれ

健康な脳(左)Photo credit : Mayo Clinic

アルツハイマー病(AD)は最も一般的な認知症であり、全症例の約65%を占める。最も強力なリスク因子は加齢であるが、遺伝的因子もまた極めて重要な役割を果たしていることを示す膨大な証拠があるとされている。加えて、人種によってもリスクの違いがある。どのような人が認知症のリスクがあり、どのような活動リズムがリスクを減少させるのだろうか?

ADの病理学:アルツハイマー・ジャーナルが2026年3月30日に掲載した研究は、細胞外のアミロイドベータ(Aβ: アルツハイマー病患者の脳に見られるアミロイド斑の主成分)プラークおよび細胞内の神経原線維変化によって特徴づけられる。さらに、ADにおいては、ミクログリア(中枢神経系における特殊化した免疫細胞)やアストロサイト(脳および脊髄に存在する星形のグリア細胞であり、ニューロンの支持、血流の調節、イオンバランスの維持、そして血液脳関門の形成などの役割を担う)の活性化を伴う神経炎症の早期変化、シナプス機能障害、脳血管の変化、ならびにミトコンドリアや脂質代謝の機能障害などが報告されている。最も確立された遺伝的リスク因子は、アポリポタンパク質(APOE:血液や脳内を介してコレステロールや脂肪を輸送するタンパク質の生成を指示する遺伝子)のε4アレルである。Apo-E(哺乳類の体内の脂質代謝に関与するタンパク質)は脳内における脂質の輸送および代謝に不可欠であり、これらのプロセスは神経細胞の機能と恒常性を維持する上で重要である。

人種によって異なる発症リスクの違い:アフリカ系の人々は、ヨーロッパ系の人々と比較してADを発症する確率が2倍近く高いが、一方でAPOE ε4のリスク関連性は、アフリカおよびサハラ南のアフリカ集団においては相対的に低いことが示されている。この事実は、祖先に特異的な別のリスク因子が、ADへの感受性に影響を及ぼしている可能性を示唆している。ヨーロッパ系集団においてはABCA7(細胞膜を介して主にリン脂質を細胞外へ輸送する役割を担う、膜結合型輸送タンパク質をコードする遺伝子)の一般的な遺伝子多型(バリアント)がADと関連しているが、アフリカ系集団においては、より稀で且つその集団に特異的な多型の方がより強い影響を及ぼすことが示されている。アフリカ系集団に特有の所見として、研究者らはABCA7遺伝子内に44塩基対(2つの窒素塩基からなる単位)の欠失を同定し、これがADと有意に関連していることを明らかにした。

アジア系の人々についてはどうだろうか?WebMDが伝えたところによると、「アジア系」とは、その人種的・民族的ルーツをアジア大陸にたどることができるすべての人々に言及している。これには、中国、インド、日本、韓国、マレーシア、タイ、ベトナムなど、極東、東南アジア、およびインド亜大陸に位置する国々の出身者が含まれている。「アルツハイマー病は通常、静かに発症する。会話の途中で言葉に詰まったり、名前や場所を忘れたり、あるいは車の鍵を置き忘れるといったことが頻繁に起きたりする可能性がある。研究によると、アジア系の地域社会では一般的に、混乱、物忘れ、うっかりミスといった行動を、加齢に伴う「正常な変化」、時には「避けられないこと」として片付けてしまう傾向があるという。事実、アジア系アメリカ人の半数以上は、記憶力の低下や思考・学習能力の急激な衰えを、加齢に伴う正常な現象だと考えている。しかし、場合によっては、これらがアルツハイマー病の初期の警告サインである可能性もあるという。

アルツハイマー病(AD)とアジア系の人々との関連について、研究は何を示唆している? アジア系アメリカ人は、米国において最も急速に人口が増加している人種・民族グループであり、その数は2,200万人を超えている。一般的に、研究データは、アジア系アメリカ人がアルツハイマー病を発症する確率は、他の人種や民族の人々と比較して低い傾向を示している。65歳以上のアジア系の人々が占める症例の割合は、全体の10分の1未満であるにもかかわらず、アジア系アメリカ人の半数近くが、自身や家族がアルツハイマー病や認知症になることを懸念している。アルツハイマー病の症例数が増加する中で、専門家たちは、アジア系アメリカ人の間における同疾患の患者数が、2030年までに3倍に増加すると予測している。このグループは、アルツハイマー病の症状を加齢に伴うものであると信じている傾向があり、自身がこの病気を発症した場合の備えや計画を立てていた人は、全体のわずか10人に1人程度である。この事実により、病気の初期サインを見逃しやすく、治療の開始が遅れ、病気の予後が悪化してしまうリスクがあるという。この研究は、アジア系人口の高齢化と増加が進むにつれ、アルツハイマー病の症例数も増加していく可能性が高いことを示しているという。

脳機能性の健康と睡眠は何らかの関連性があることは知られている。ジョンズ・ホプキンス大学ブルーンバーグ公衆衛生大学院精神衛生学部の教授であり、この分野に関連する研究の筆頭著者でもあるアダム・スピラ博士はMedical News Todayに「睡眠障害が脳の健康状態の悪化と関連していることは知られていますが、休息と活動のリズムが、経時的な脳構造の変化と具体的にどのように結びついているのかについては、まだほとんど解明されていません」と説明した。「私たちは、MRIを用いて脳容積を測定することで、こうした関連性についてより深く理解したいと考えました」と述べている。ダニエル・キャロウ博士は「我々の研究結果は、休息と活動のリズム(RAR)が分断されにくく、より一貫している人々ほど、脳の特定の領域の体積が大きく保たれ、経時的な扁桃体の萎縮も少ない傾向にあることを示しています。重要な点として、今回の縦断的な調査結果は、リズムの乱れが脳構造の変化に先行して生じている可能性を示唆しており、分断的あるいは一貫性の低いRARが神経変性の一因となっている可能性を提起するものです」と述べている。

アルツハイマー病(AD)は最も一般的な認知症のタイプであり、全症例の60〜70%を占めるとされている。WHOによると、認知症は、脳に影響を及ぼす様々な疾患や外傷によって引き起こされる。2021年には、世界で5,700万人が認知症を患っており、毎年、新たに1,000万人近くが認知症と診断されている。その60%以上が低・中所得国に暮らしており、認知症は世界全体で7番目に多い死因となっている。特に女性は、直接的および間接的に、認知症による影響を不均衡に受けている。認知症の発症リスクを高める要因には、(1)年齢(65歳以上の人びにより多く見らる)、(2)高血圧 、(3) 高血糖(糖尿病)、(4) 過体重または肥満 、(5) 喫煙 、(6) 過度な飲酒 、(7)運動不足、(8)社会的孤立、(9) うつ病などが挙げられる。

要するに、アルツハイマー病も、食生活、運動、睡眠を含むライフスタイルの向上により、リスクを低下する可能性があることを示唆している。脳の健康と睡眠は一部関連している可能性もあるため、脳機能に関連するADは、ある程度生活パターンの変化によって予防することが可能なことを示唆している。そして、重要なことは休息と活動のリズム(RAR)がより一貫している人々ほど、アルツハイマーにはなりにくいという。つまり、日中は活動的に過ごし、夜間は活動が低く安定している生活の場合、アルツハイマー病(AD)やその他の認知症を発症する可能性も低いという証拠があるという。

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