
ビル・キャシディ Photo credit : WSJ
昨日行われた米国上院議会共和党の予備選で、三期目の再選に挑戦していた医師である最も著名な共和党上院議員ビル・キャシディ氏は惨敗した。完全な共和党州で彼が敗北する理由は少なくとも二つある。彼の敗北は何を意味しているだろうか?
2026年5月16日(土曜日)に実施されたルイジアナ州の予備選では、比較的穏健であるビル・キャシディ氏は、トランプ大統領に後援された同州の第5区を代表する米国下院共和党議員ジュリア・レットロー氏(約178,900: 44.8%)、二番目に票が多かったジョン・フレミング(約113,400: 28.3%)より低い(約99,500: 24.8%)投票率で惨敗した。土曜日の夜、トランプ氏はソーシャル・メディアでの投稿で、「自分を当選させてくれた人物に対する彼の不義理は、今や伝説の一部となった。そして、彼の政治キャリアが『終わった』のを目にするのは、実に痛快なことだ!」と述べ、キャシディ氏の敗北を祝った。レットロー(1981年生まれ)氏は南フロリダ大学で博士号を取得している女性であり、彼女の夫は米国下院議席に就任する前の2020年12月に新型コロナウイルス感染症による合併症で死亡したルーク・レットローの未亡人である。
キャシディ氏は、2021年1月6日の米国議事堂での暴動前に、ホワイトハイスの近辺で集会を先導し、2020年の大統領選に勝利したジョー・バイデン氏の勝利認可プロセスを阻止し、選挙結果を転覆するために議会に行進し、戦うよう扇動したとされたトランプ大統領に対する議会弾劾を支持した一人である。当時、民主党多数派の下院議会は、弾劾調査を行い、2021年2月には、米国上院議会で弾劾裁判が行われ、7人の上院共和党議員らは有罪に投票した。ビル・キャシディ氏は、この7人の中の一人であった。米国下院議会では10人の共和党議員が、弾劾に賛成票を投じた。ジョージW・ブッシュ政権下で副大統領であったディック・チェイニーの娘であるリズ・チェイニー共和党議員は、トランプ大統領の政策の90%以上を支持していた完全な保守派であったが、議事堂での事件後、徹底したトランプ氏の批判者となった。彼女は、下院特別委員会のメンバーの一人として、トランプ氏に対する調査に関与したことから、トランプ氏の標的となり、2022年の広範なワイオミング地区での予備選で敗北した。そして、弾劾に同意した他9人のほとんどは再選に敗北するか又は辞職し、現在米国下院議会で生存しているのは2名のみである。
トランプ氏は16日、コロラド州の米国下院共和党議員ローレン・ボーバード氏も、ターゲットにしていることを示唆した。彼女は、エプスタイン・ファイル公開を推奨しているケンタッキー州第4区を代表する米国下院議員トーマス・マッシー氏の努力を応援している。これに対し、トランプ氏は、ルイジアナ州で予備選が行われた16日に、ソーシャル・メディアでの投稿で「私は以前からボーバート氏を支持してきたが、もし適切な人物が現れれば、その支持を撤回し、良き代替候補を支持することを光栄に思う」と書いた。ボーバート氏は彼女自身が引き続き「MAGA支持者」であると主張している。マッシー氏は17日、ABCニュースのインタビューで、「私の状況は少しばかり異なります」と述べ、16日には4人の連邦議員が選挙遊説に同行してくれたと述べ、「それに加え、私のウェブサイトには、草の根レベルの数万人に及ぶ寄付者の方々から、数百万ドルもの資金が寄せられています」と述べた。彼は、勝利の鍵を握るのは有権者であると示唆した。
今年の予備選の選挙サイクルでは、政敵への報復が現役大統領の重要な方針であることを益々明白にしている。そして、これまでのところ、全てではないが、トランプ氏に支持された共和党員が大統領の標的を打破している。これは、完全な共和党州で起きており、キャシディ氏が敗北したルイジアナ州もその一つであり、深い赤州では、大多数の有権者は彼らの党の大統領が標的にした再選候補者より、大統領が後押しする候補者に投票する可能性があることを示唆している。しかし、キャシディ氏は、それだけが理由で敗北した訳ではないと思われる。2025年に保健福祉省(HHS)の長官として、トランプ氏に指名されたロバート・ケネディ・ジュニアは反ワクチン主義者であることから、米国上院議会での認可プロセスに苦戦した。なぜなら、ワクチン接種が大幅に認可されなくなるとして、医療業界、科学者、民主党議員、およびケネディ氏の家族の一部は、彼が米国で最大の組織であるHHSには不適格であるとして猛烈に反対していた。重篤なウイルス感染が再び台頭した時に、米国民は健康の危機に直面するとの懸念がピークに達していた当時、最後の決定の鍵を握っていたキャシディ議員は、ワクチン承認の理事会での会合をこれまでと同様に阻止せず、遅らせないとの約束に基づき、論争的なケネディ氏に投票したのである。
しかし、現在、ケネディが支配するFDAおよびCDCはあらゆる種類のワクチン入手や推奨を制限しているとされる。ケネディ氏の支配下で、医療および科学業界からは猛烈な反発が続いており、要職にある人物の辞任や頻繁な法廷闘争を招いている。これは、キャシディ氏が敗北した別の理由の可能性もあり、トランプ氏の政策に反対した議員、弾劾に賛成票を投じた米国上院および下院議会の共和党議員に対する報復攻撃が全てではない。キャシディ氏は敗北を認める演説の中で、「我々の国は、たった一人の個人によって成り立っているものではありません。もし誰かがそのことを理解せず、権力の行使を通して他者を支配しようとするのであれば、その人物は結局のところ、私利私欲のために動いているに過ぎないのです」と述べた。現在、大統領の支持率はかなり低い。消費価格が高騰する要因となっている対イラン戦争は大幅に支持されておらず、トランプ氏の経済および外交政策は非常に人気がないのである。
17日の今日CBSニュースが公開した世論調査では、現在の米国経済が良いと答えた率はわずか29%である。個人の財政について懸念していると答えた率は2025年5月の72%から現在76%に増加した。加えて、ニューヨーク・タイムスがまとめた5月の複数機関の全ての世論調査は、議会選挙に関する一般的な質問で、「2026年の選挙が、ある日に実施されたとしたら、有権者がどの政党の候補者を支持するか、また、選挙後に議会の主導権をどの政党に握ってほしいと望むかについて、質問したところ、全ての機関の調査結果は、民主党と答えた率は共和党と回答した率を顕著な差で超過した。
| 機関名 | 調査期間 | 民主党 | 共和党 |
| YouGov | 5/9 ~ 5/11 | 45% | 40% |
| Ipsos | 5/8 ~ 5/11 | 41% | 35% |
| Atlas Intel | 5/4 ~ 5/7 | 55% | 40% |
| Gygnal | 5/6 ~ 5/7 | 49% | 42% |
| RMG リサーチ | 5/4 ~ 5/6 | 50% | 41% |
最後に、なぜ、キャシディ氏が予備選で地滑りの敗北をしたか?ケネディ氏は、2025年2月12日の投票で、52対48票で認可されたのである。ミッチ・マコーネル以外の上院共和党は全員、賛成票を投じたが、ロバート・ケネディ氏をHHS長官として認可するための投票で、米国上院の共和党議員のうち数人は、医師であるビル・キャシディの決定に委ねていた。なぜなら、同氏は、医師の経歴があり、保健委員会で重要な役割を果たしていた為、キャシディ氏はケネディから小児予防接種プログラムを保護するという約束を受けた後に、支持を決定したため、その後、サウス・キャロライナ州のベテラン共和党議員リンジー・グレイアムを含む数名も賛成票を投じた為、キャシディ氏には多大な責任があった。しかし、HHS長官として就任した後も、彼の行動は、益々論争的となり、紛争が続いている為、トランプ氏がキャサディ氏の対抗者を支持する前から、同氏の16日の敗北は予測可能であった現実と上記のような世論に注目する必要がある。