ギャバードの辞職には別の深刻な理由がある?

Photo credit : The Economist

2026年5月22日の全ての主要メディアのトップ・ニュースは国家情報機関のデイレクターであるトルシー・ギャバード氏が辞職を発表した事である。トランプ政権の二期目は、なぜか女性のみが解雇または辞職の理由により政権を離れている。ギャバードはそのような4番目の女性官僚となる。大統領に宛てた手紙には、辞職の理由として、夫が稀な骨肉腫を患っていると診断されたためであるとしている。彼女は一年4ヶ月間、職務上の様々な問題を抱えていた。国家情報機関のディレクターとして指名されていながら、一度も重要な大統領チームの主要メンバーとはみなされていなかった。加えて、最近の内部事情では、彼女の辞職は時間の問題となる状況があった。

彼女の辞職の発表は2026年5月22日午前中の時点で、A P通信、ロイター、NPR、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムスなど、主要メディアのトップ・ニュースとなっている。トランプ大統領の二期目の政権は、一年4ヶ月で4人の最高地位にある女性のみが解雇されるか又は辞職している。最初に解雇が命じられたのは最大規模の国土安全保障省の長官であったクリスティ・ノーム、次に米国司法長官のパム・ボンディ、労働省長官ロリ・チャベス=デレマー、そして今日、国家情報局ディレクターのトルシー・ギャバードは6月30日に辞職すると発表した。ギャバード氏がトランプ大統領に宛てた手紙の冒頭には、1年4ヶ月間、ディレクターとして、米国情報局をリードする機会を与えてくれた大統領への感謝を表明している。そして彼女は夫が稀な形態の骨肉腫であると診断されたため、今後数週間又は数か月間、重大な葛藤に直面するため、夫の側で彼を支えるために辞職しなくてはならならないと書いている。

トランプ大統領は、彼女の辞職を受けて、ギャバード氏の副官であるアーロン・ルーカス氏が、国家情報長官代行を務めると発表した。アーロン・ルーカス氏は適切な経歴がある人物であるため、最初から未経験のギャバード氏が国家情報局のディレクターとしてルーカス氏の上に位置したこと自体が不自然な人事配置であったように見えた。アーロン・ルーカス 氏(1971年5月生まれ) は、米国 ニュージャージー州トムズリバーで生まれ、テキサスA&M大学で学士号を取得し、 ジョージ・ワシントン大学で修士号を取得した。ルーカス氏は第一期目のトランプ政権下で、国家安全保障会議(NSC)において、欧州・ロシア担当副上級部長を務めた。トランプ氏の最後の任期となる2020年後半から2021年1月20日までの短期間、国家情報長官室に出向し、当時のリチャード・グレネル国家情報長官代行の首席補佐官を務めた。ギャバード長官が6月30日に退任した後に、ルーカス氏は、国家情報長官代行に就任する予定である。

ギャバード氏の辞職発表は、今日非常に注目されている。辞職の理由は夫の骨肉腫という重篤な病気以外にも、事実上、職場でのトラブルが多数あるという。ニューヨーク・タイムスの報道によると、「ギャバード氏は、トランプ政権下において、物議を醸すことの多い人物であった。トランプ氏が国家安全保障に関わる重要な決定を下す際、彼女がその場に居合わせることは極めて稀であり、政権内部や連邦議会の議員たちの間では、大統領チームの主要メンバーとはみなされていなかった。彼女が困難に直面し始めたのは、昨年行われた極めて激しい承認公聴会を経て、辛うじてその職への就任が承認された直後のことであった。複数の共和党上院議員が民主党議員に同調し、元情報機関契約職員のエドワード・スノーデンや、シリアの元独裁者バッシャール・アル=アサドを擁護した過去の言動など、彼女の過去の見解について執拗な追及を行った」のである。

そして、「政権内における彼女の地位低下はここ数ヶ月でより顕著なものとなった。イランへの攻撃計画や、1月に実行されたベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領拘束に向けた軍事作戦の立案過程において、情報関連事項に関して最も強い発言力を持つ人物として台頭したのは、CIA長官のジョン・ラトクリフ氏であった。トランプ氏の側近たちが会合を開いた際も、情報分析の結果を報告したのはギャバード氏ではなく、ラトクリフ氏だった」という。さらに、CIAと国家情報長官室との間には緊張があった。ギャバード氏の「在任期間中、一部情報機関の当局者は政治的な業績とみなした行為の数々をめぐり、緊張が高まった。彼女は、海外赴任への起用が決まっていたCIAの上級幹部からセキュリティ・クリアランス(機密情報へのアクセス権限)を剥奪した。また、CIAの生粋のベテラン幹部達を自身の執務室内の役職から除外した」のである。

更に、「ギャバード氏は、対外諜報活動に対する最終的な監督権限を自身のオフィスが持つべきか否かをめぐり、FBIと対立していた。この分野については、長年にわたりFBIが主たる責任を担ってきた経緯がある。さらにFBI幹部らは、国家テロ対策センターの元所長でありギャバード氏の側近でもあるジョー・ケント氏が、保守派活動家チャーリー・カーク氏殺害事件の調査に乗り出したことに不快感を抱いていた。 ケント氏は3月、イランとの戦争に対する反対を理由に辞任した。また、別の盟友であるアマリリス・ケネディ氏も今月、ギャバード氏の事務所における職務に加え、ホワイトハウスでの役職からも退くことを発表した。こうした相次ぐ離職はギャバード氏自身も近日以内に辞職することになるとの憶測を呼んだ」という。

最後に、トランプ大統領が二期目に、国土安全保障省、米国司法省、労働省、国家情報機関など、非常に重要な部署に女性を指名したことは驚きであった。そして、これらの人物は、すべて、米国上院議会での認可プロセスという難関をクリアした。国土安全保障省の長官クリスティ・ノームは、彼女が率いるICEを含む職員による銃殺によって、合計3人の米国市民が殺害された後、外部からの怒りの圧力によって大統領が3月5日に解雇する結果となった。元司法長官ポム・ボンディに対する4月2日のトランプ氏の解雇は、フロリダ州司法長官であった彼女にとって、政敵を法的手段で報復するというトランプ氏の願望に応えることが容易ではなかったため、大統領と彼女との間で緊張が募り解雇されたようである。ロリ・チャベス=デレマー米国労働長官は、2026年4月20日に省の資金の不正使用や一連の不正行為の疑惑により、数ヶ月間内部調査を受け辞任した。国家情報機関のディレクターとして6月30日に辞職することになるトルシー・ギャバード氏は、夫が重篤な病気であるという個人的な理由だけでなく、内部からの密かな苦情により、辞職に追い込まれた可能性があるが、この4人の女性官僚の中では、最も謎めいており、最も論争的な人物である。これまでのところ、トランプ政権のトップ官僚で解雇または辞職した高官らはこれまでのところ、規模の大きい国土安全保障省を除き、後継者となる長官が指名されることはなく、現役の副長官や副官らが代行という形で指名されている。特に、第一期目にトランプ政権下で、国家情報関連の浅い経験がある人物を代行として選択する場合、米国上院議会による認可プロセスを省略できるという利便性もある。忠誠者のみを採用しても、その選択基準には限界がある事を示唆している。

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