6月4日から5日未明にかけて行われた米国上院議会のマラソン投票は全て失敗に終わった。約18億ドルの基金が司法省の長官代行を務めるトッド・ブランシュ氏に設置された直後から、論争的となった。その「対兵器化基金」は、司法省の職権の乱用による犠牲になったと主張する2026年1月6日の暴徒らに支払われるための基金であることが判明した。その後、上院共和党の大多数は激怒の声を上げた。しかし、マラソン投票では、スラッシュ・ファンド(裏金基金)とも呼ばれるこの「対兵器化基金」の廃止が含まれている法案も可決に至らず、予想外の結果となった。
司法省(DOJ)の長官代行を務めるトッド・ブランシュ氏は2回の米国下院歳出委員会の公聴会で、公式に約18億ドルの「対兵器化基金」は永久に廃止したと繰り返し宣言した為、それを成文化するために「対兵器化基金」の廃止が含まれた修正法案は、ほぼ全て共和党多数派が却下した。この結果、この基金廃止を法律で制定する可能性は中間選挙前の現在、ほぼ消えたことになる。全ての修正案に対する投票には60票が必要であり、47人全ての民主党議員が投票に参加した場合、少なくとも13人の共和党上院議員が賛成票に投じる必要があったが、結果的に大多数の共和党議員らは、11月の総選挙前にトランプ氏に恨まれるような結果になる投票を避けた事を示唆した。修正案は主に民主党が主導したものであるが、共和党のベテラン議員リンジィ・グレイアム氏やマイク・リー氏なども修正案を提起したが、それも可決しなかった。また、「対兵器化基金」を殺害された警察官の家族に提供するとのビル・キァサディ共和党議員の修正案は、その基金が逆に暴徒らに流れる危険性があるとして、大幅に却下された。民主党議員らは、司法省が18億ドル規模の基金を設置することを恒久的に禁止する修正案の採決を強行したが、基金使用の変更を望んでいる共和党議員らの反対に直面した。また、投票所での市民権証明書の提示を義務付けるなど、選挙制度を大幅に改革する「米国救済法」を移民関連の歳出法案に加えた共和党の試みも採決しなかった。
約18億ドルの「対兵器化基金」と、ブランシュ氏が宣言した内国歳入庁(IRS)の税務調査に対する広範な保護措置をトランプ大統領に与えることを阻止した民主党の修正案には、共和党議員らが反対した。ブランシュ氏は、裏金基金又は「対兵器化基金」の廃止の発表と同時に、トランプ氏と彼の家族に対する税務調査を免れる措置を保護すると明言した。ご承知のように、トランプ氏に対する納税申告書に関しては、彼は大統領候補としての慣例を破り、納税申告書の公開を拒否した2016年の最初の大統領選当時に遡る複雑な問題が裏金基金と絡んでいた。2020年、ニューヨーク・タイムス紙は一連の記事を掲載し、トランプ氏が長年にわたり連邦所得税をほとんど、支払っていなかった実態を明らかにした。つまり、共和党議員の大多数は、その保護措置を終えるという民主党の修正案に反対票を投じたのである。
大統領とその家族が税金に関連する調査から免れることは、莫大な価値があるとされる大統領の公的利益の記録が暗闇に葬られることになるが、それでも所属政党である共和党議員は見て見ぬ振りをした事を意味する。2022年にトランプ・オルガニゼーションがニューヨークで脱税の罪で有罪判決を受けた時、トランプ氏とその家族は、租税回避を躊躇なく行ってきたことを明白にした。トランプ自身も、納税申告書を提出しないことで非難を受けたが、同氏は逆に「自身を賢く見せている」と自慢した。DOJの長官代行が、IRSの税務調査を免れるという宣言は、前代未聞の行動である。DOJとIRSは管轄が異なり、実際にはそれぞれ独立した組織であるため、先月下旬に、元憲法学者の下院民主党議員ジェイミー・ラスキン氏がブランシュ氏にはそのような権限はないと報告したばかりである。
さらに、上院議員らが論議した移民関連法案はバジット・リコンシリエィションと呼ばれる予算調整手続きを利用していた。この手続き下では単純過半数の支持で可決する可能性があったものの、多くの修正案が上院の厳格な規定に適合しないとして却下された。結局、上院議会は12件以上のマラソン投票で、ほぼ全て失敗に終わった。そして、マラソン投票が終わった数時間後に行われた移民関連法案だけの投票では、単純過半数の52対47票の党派ラインで可決した。昨年、ミネアポリスで米国市民であるレネー・グッド氏とアレックス・プレッティ氏を銃殺する結果となったICEに対して、民主党議員らは彼らに資金を提供することを阻止していたが、この投票でも民主党議員らは全員反対した。
上院議会の長時間によるマラソン投票は何を示唆しているか?(1)上院共和党議員らは、完全に裏金基金を廃止することを成文化するより、それを別の目的に利用する考えがあったことを示唆した。(2)トランプ氏が同じ政権の機関であるIRSから金銭的利益を得ようとする異例の試みに対する共和党の態度はあやふやで、特に強い意見はないこと示唆した。(3)共和党議員らは、トランプ氏個人の税金問題に関しては、ブランシュ氏が宣言したIRSからの調査を免除するという措置を支持していることを示唆した。(4)選挙キャンペーンで富豪者から多額の闇金を受理している多くの共和党議員らは、トランプ氏の税金の問題に関与することを避けたことを示唆した。(5)超党派の合意に至るまで、完全な準備が整っておらず、足並みが揃っていなかったことを示唆した。つまり、民主党主導型の修正案に喜んで協力する上院共和党は13人以下であることを示唆した。
最後に、トランプ氏が約18億ドルの裏金基金を得た根本的な理由は、IRSの元職員が納税申告書を無断流出したために、トランプ氏がIRSに対して告訴したものであり、その訴訟は税務上の解釈をめぐる紛争ではなかった。故に、脱税調査からの免責措置を決定するのは、司法長官代理でなく、IRSであると元憲法学者のラスキン氏は最近明白にしている。しかし、トランプ氏と元彼の個人弁護士であった司法長官代行ブランシュ氏はIRSと協議し、訴訟を撤回する代わりに約18億ドルの「対兵器化基金」を設置することで、トランプの選挙転覆の努力に協力した暴徒らに支払う事を可能にする措置を採用した。これは誰の目にも顕著な腐敗であるにも関わらず、大多数の上院共和党議員らは、いざ投票となると、その腐敗の根本的構造に立ち向かう姿勢を示さなかった。また、財務省の長官は、公聴会で重要な質問に答えていない為、IRSが近年開始した幾つかのトランプ氏に関する監査が現在も継続中であるかどうか、ブランシュ氏が述べているように、実際に「対兵器化基金」の設置が永久に廃止されたかどうか現時点では不明である。歴代大統領がDOJやIRSとこれほど特殊な関係を持つことも前代未聞の腐敗の性質を示している。DOJを含む政権ほぼ全てのトップ官僚はトランプ氏の忠誠者である。これらの上院共和党議員らは、元憲法学者が先月29日に、「対兵器化基金」は多数の憲法および法律に違反していると宣言したにも関わらず、それを完全に除去するための何の解決策も対抗力もなく、無力である事を改めて示唆している。