
2026年6月30日 米国最高裁判所前 Photo credit : ABC News
米国最高裁は2026年6月30日、合衆国憲法修正第14条に定められた生誕市民権を保持した。この結論は、3人のリベラル判事と独立系の役目を果たすエイミー・コニー・バレットおよび幾分穏健派のブレッド・カヴァナフ判事に加えて、多数派意見を代表した主席判事ジョン・ロバーツの6人の判事らが、この歴史的な憲法を擁護した為である。トランプ大統領は、2025年1月20日の就任直後に、不法に滞在している外国人の間に生まれた子供達は米国市民ではないとする大統領令を発令した。ご承知のとおり、それ以来、複数の個人および団体による訴訟が相次ぎ、最終的に最高裁は4月1日にトランプ大統領が参加した中で審理を行った。この日の論議では、ほぼ全ての最高裁判事が憲法修正第14条を保持するとの印象を受けたが、今日の評決では6対3で意見が対立した。
米国最高裁が30日に公開した194ページに及ぶ意見書の中で、ロバーツ判事は多数派の意見を代表した。リベラル派のケンタンジ・ブラウン・ジャクソン判事およびソニア・ソトマイヨォア判事らが補足意見を書いた。更に、補足意見を書いたカヴァナフ判事は、最初にトランプ大統領の「大統領令第14160号は、 不法滞在または一時的に国内に滞在する外国籍市民の子に対する出生地主義に基づく市民権の例外を新たに定めています。本日、最高裁判所は、この大統領令が 憲法修正第14条に違反すると判断しました。私は、最高裁判所の憲法判断に敬意を表しつつも、 異議を唱えます。私の見解では、この大統領令は 憲法修正第14条に違反していません。しかし、この大統領令は、 連邦法である8 U.S.C. §1401(a)に違反しています。議会は、憲法修正第14条に合致する形で、この法律を改正するか又は、不法滞在または一時的に国内に滞在する外国籍市民の子に対する出生地主義に基づく市民権の例外を定める新たな法律を制定することができます。しかし、議会はまだそうしていません」と述べている。更に、この意見書は「トーマス判事が、長年にわたり人種を区別しない『カラーブラインド』憲法のあり方を支持してきたにもかかわらず、驚くべきことに、現在では市民権条項が『ドレッド・スコットのような解放奴隷』のみを対象とした、人種を意識した救済措置であったと示唆している」との事情も明白にした。
多数派意見を代表したジョン・ロバーツ主席判事は、トランプ大統領の大統領令が法的紛争を引き起こした原因であるが故に、最初に大統領令を引用した。例えば、「2025年1月20日、トランプ大統領は『米国市民権の意義と価値の保護』と題する大統領令第14160号を発令した。同令は、米国に不法または一時的に滞在する者から生まれた子供は、米国の『管轄権に服する』者には該当しないと規定している。したがって、修正第14条や、同条と同様の文言を用いている移民国籍法の下では、市民権を取得する資格がないとしている。 数名の親が訴訟を提起した。その一部は自己の権利として、また他の一部は子供の権利として、子供の名義で訴えを起こしたのである。彼らは、当該大統領令が修正第14条および移民国籍法に違反すると主張し、連邦地方裁判所もその主張を認めた」と書いている。そして、本件の「争点は、米国に不法または一時的に滞在している親から生まれた子供に対し、合衆国憲法が市民権を保障しているか否かという点にある。修正第14条は次のように規定している。合衆国で出生し、または帰化したすべての者は、合衆国およびその居住する州の市民である」と述べている。
更に、ロバーツ判事は、歴史的観点から、米国の市民権は「英国のコモン・ロー(慣習法)に端を発する。独立戦争以前、英国の植民地入植者たちは、大英帝国の他のすべての住民と同様に、君主の臣民とみなされていた。その概念は、国王の命令によって生じたものではなく、君主と人民との関係をコモン・ローがどのように捉えていたかに由来する。国王は領土内で生まれた者たちに対して保護の義務を負っていた。 そして、その保護の代償として、領土内で生まれた者たちは国王に対して、忠誠の義務を負っていた。そのような忠誠を伴って生まれた子供は、『生来の臣民』とされた。 外国人の母親が英国に入国し、出産し、翌日には子供を連れて出国したとしても、その子供は英国の臣民であり続けた。なぜか?それは、たとえ国王の領土内での滞在がどれほど一時的かつ不確実なものであったとしても、その子供は、出生時に自身を保護した君主に対して黙示的な忠誠を負っていたからである」として、一時的に米国に滞在した個人から生まれた子供も米国市民であると説明している。
加えて、トランプ政権は2025年1月20日以降、不法移民を国外追放することに多大な資源とエネルギーを費やしてきたが、ロバーツ判事は、「追放の対象となる親から領土内で生まれた子供に対しても、同様の原則が適用された。例えば、その領内で生まれたジプシーの子供たちは、当時の英国法がジプシーの人々に対して、投獄や死刑の罰則をもって領内への立ち入りを避けるよう命じていたにもかかわらず、生まれながらの臣民とみなされていた。 出生地主義、すなわち土地の権利として知られるこのコモン・ロー上の市民権の法理は、アメリカ独立後もすべての州において支配的であり、相互の『忠誠』と『保護』を重視し続けた。 コモン・ローは人種や皮膚の色を理由とした区別を設けなかった」と述べている。しかし、同判事は、米国の歴史の中で最も暗い奴隷制において、「南部の多くの州が黒人アメリカ人への市民権付与を拒否しようとし、南北戦争が近づくにつれ、その目的を達成するために公然とコモン・ローの法理を退けた。南部在住の約50万人の自由黒人たちは、事実上、よそ者同然の扱いを受けた」と述べ、コモン・ローの法理が放棄された歴史に触れている。
ロバーツ判事は、「合衆国憲法は、この国のすべての人間を、その肌の色、階級、出身地のいかんにかかわらず、『人民』とみなしている」と説明した。 その後、1866年に制定された「公民権法は『合衆国で出生し、かつ外国の管轄権に服さないすべての者(ただし、課税対象とならないインディアンを除く)は、ここに……合衆国の市民とする』と宣言した。 子供は合衆国の『管轄権に服して』いなければならず、その点は、外国公使の家族とは異なる。米国の地で生まれ、米国の法に服する子供は、米国市民とされたのである」と書いている。
更に、トランプ氏の大統領令の一部に対し、ロバーツ判事は「大統領令に頻出する『母、父、適法な、一時的な』といった言葉は、同条項には含まれていない。その理由は単純である。それらの言葉は重要ではなかったからである」と述べている。また、「ある人が、たとえ一時的に滞在しているだけであっても、その人が物理的に存在している国の政府の『管轄権に服する』かどうかという点にある。 答えは『服する』である。ただし、大使などのよく知られた例外に該当する場合を除く。マーシャル首席判事が『スクーナー・エクスチェンジ』事件で示した理由に基づけば、合衆国は一時的な訪問者に対して『完全かつ十分な権限』、すなわち『絶対的かつ完全な管轄権』を行使するのである」と書いている。ロバーツ判事は「市民権とは、当時も今も変わらず、権利を享受する権利、すなわち政治的共同体に自由に参画する権利を意味する。合衆国憲法修正第14条の起草者たちは、この約束を『この地に自由の身として生まれたすべての者』にまで拡大した。我々は今日においても、その約束を守り続けている。ニューハンプシャー地区連邦地方裁判所の判決を支持する」と文末に書いた。
最後に、2026年6月30日、「トランプ対バーバラ」の訴訟の判決において、多数派の意見を代表したジョン・ロバーツ判事は、1898 年の「米国対ウォン・キム・アーク」判決について、数回言及し、合法的書類のない中国人移民から生まれた彼は、イギリスのコモン・ローを基本にした憲法修正第 14 条の市民権条項において、アーク氏が米国市民として認められた最初の歴史的判例を繰り返し引用した。つまり、ロバーツ判事はこの判例を利用して、不法滞在者または一時滞在者、ビザ保持者の子供の生誕市民権を終えることを目的とした大統領令を打破したのである。同判事は彼の意見書の中で、米国領土での出生地市民権主義は基本原則であるとするコモン・ローの重要性を強調したのである。ロバーツ判事は、憲法修正第14条には親の法的地位や一時的な地位に関する要件は含まれていないことを明確にし、米国最高裁の最初の判決であるウォン・キム・アーク評決以来、128年間、米国で生まれたほぼすべての子供に生誕市民権が確実に維持され続けたことを力説した。