歴史的法律が近代政治に応用される例

Photo credit : Native Americans

西部における居住可能な地域の入植は、アメリカの経済、政治、文化に多大な影響を及ぼしました。1860年代に制定されたホームステッド法は開拓地で自営農業が拡大した最も重要な措置でしたが、西部開拓地では入植者の人口が増加したため、インディアンを含む原住民は彼らの資源が奪われました。現政権は、約160年以上前に制定されたホームステッド法も含めて、歴史的な法律を政策に応用する傾向があります。

ホームステッド法(自営農地法)は1862年5月、当時にエイブラハム・リンカーン大統領が署名した法律です。これは、米国市民権の取得を目指す成人に連邦政府所有地160エーカーの土地を無償で提供するものでした。完全な所有権を得るためには、申請者は少額の申請手数料を支払い、少なくとも5年間にその土地を農地として耕作することを要求したものでした。つまり、この法律は、西部の広大な土地を個々の入植者に条件付きで分配することを可能にしたのです。ホームステッド法は複数のバージョンがあります。その一例である1866年の南部ホームステッド法は、連邦への忠誠を誓った南部住民や解放奴隷に公有地への入植を条件に土地の分配を認可しました。これらの法律は更に、土地の開墾と農業生産を促進する結果になりました。

アメリカの西部入植の進展に寄与した主な要因には、人口の増加、産業技術の発展、そして豊富な天然資源の利用可能性が挙げられます。西部への拡大は多くの入植者を惹きつけ、彼らは急速にその地域を開拓しました。最初の入植者たちは、金、銀、産業用にも利用可能なその他の鉱物の採掘で成功を収めました。加えて、農民も重要な役割を果たしました。南北戦争以前の1830年から1850年までの間に、多くの政治家は、西部にある広大な公有地が独立自営農民に利用可能となり、それが増加することを望んでいました。一方、南部のリーダーたちは、西部の領土が奴隷制度反対派の入植者で溢れ、奴隷制の拡大を阻止しようとする動きが強化されることを懸念し、反対していました。また、不動産価値が下落し、労働力が西部に流出することを恐れた北部の議員達からの反対により、法案の成立は困難な側面もありました。

ホームステッド法は、南北戦争が自営農民の社会的・経済的地位を揺るがしつつあったその時期に成立しました。この法律は、家族経営の農民による入植を促すために無償で土地を提供し、人口増加に伴う安価な労働力の大量供給により、西部の経済拡大を促進しました。その一方で、ホームステッド法は、牧畜や農業のために土地を利用する目的で、先住民が生活の糧としていた土地の多くが連邦政府に併合され、入植者に売却されたため、先住民の資源を枯渇させる結果となりました。多くの先住民は土地から追い出され、数百万頭ものバッファローが殺戮されました。こうした状況は、有刺鉄線や様々な農業機械といった新たな発明を生み出すことにもつながりました。

南北戦争が終わる頃には、農業社会から工業社会への転換が進んでいました。鉄道網の整備により、鉄鋼業や石油産業が急速に成長しました。鉄道による輸送の改善は、国内市場の拡大を可能にしました。また、大量生産を可能にした新技術によって、より少ない労働力で多くの資材や製品を生産できるようになりました。 技術面に加え、豊富な森林資源は輸出用の余剰木材をもたらしました。さらに、石炭や鉄鉱石の鉱山、石油、金、銀といった資源が莫大な富を生み出しました。ホームステッド法によって、連邦政府は1862年中頃から1930代初期までの間に米国全土地の10%を私有地として払い下げました。ホームステッド制度は1976年に廃止されましたが、アラスカ州では1986年まで存続しました。

しかし、歴史を無視できない別の例があります。トランプ政権は歴史的法律を自身の政策に結びつける傾向があるからです。2025年1月20日就任以来、最も顕著な例は、ほぼ全ての世界的な貿易相手国に対する関税でした。しかし、米国最高裁は2026年2月20日、6対3の判決で、関税を課すために1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)を行使することは違法であるとして、トランプ氏の関税を無効としました。トランプ政権は、現代の公有地政策の歴史的モデルとして、1862年のホームステッド法を挙げています。同政権は、住宅建設や住宅供給不足の解消を目指し、連邦政府機関である土地管理局が管理する広大な公有地を民間人や開発業者に譲渡するホームステッディング2.0 (Homesteading 2.0)と称する構想を提起しました。

本構想は、300万戸の新規住宅を供給し、米国の経済的及び技術的活力を促進することを目的としています。土地管理局に対し、西部州にまたがる開発可能な土地850平方マイルを売却するよう提案するものです。アイダホ、アリゾナ、ワイオミング、オレゴン、カリフォルニア、コロラド、ニューメキシコ、ネバダ、ユタ、モンタナは全米でも住宅の取得が特に困難な州であるとされています。連邦有地の売却は議会の承認を必要とするため、法制上の障壁に直面しているものの、一部の投資家、建設、及び開発事業者らは、プロジェクトに強い支持を表明しています。一方、トランプ氏は、住宅コストの引き下げと供給拡大を目指す超党派による包括的な改革法である21世紀住宅への道(ROAD to Housing)法への署名を拒否しました。その拒否は、両院両党の圧倒的支持によって採決したこの法案とは全く無関係な有権者が米国市民であることを証明することを求めるSAVE America法案が上院で可決されなかったことへの抗議でした。しかし、同法案は自動的に成立したという皮肉な状況を見ています。

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