前代未聞の大統領による彼の政府への訴訟

Critics call the compensation plan a political slush fund bankrolled by taxpayer money

The New York Times : May 18, 2026

この記事は、2016年大統領選の候補者ドナルド・トランプ氏が就任後も納税申告書を提供することはなかった起源に関連している。今年1月にトランプ大統領と彼の子息達が告訴した「トランプ対内国歳入庁(IRS)」の訴訟をトランプ氏は2026年5月18日の今日、引き下げたことについて述べている。その訴訟引き下げは納税者の税金から巨額の和解金を条件にしたものであり、その資金を2021年1月6日に米国議事堂を襲撃し、逮捕され、トランプ氏が2025年1月に就任した直後に恩赦を与えた1,600人に賠償金として支払うと述べている政権に対して、多数の民主党議員らが今日訴訟を提起した。この記事は「法制度を巧みに迂回する政権による驚くべき技法」について概略的に説明している。

トランプ政権は5月18日、バイデン司法省から標的にされたと主張する人々への補償を目的として、17億7,600万ドル規模の基金を設立すると発表した。これは、納税者(taxpayer)の​​資金を自身の盟友や支持者へと流し込むため(to funnel)の、潜在的なパイプライン(potential pipeline)を作り出すものとなる可能性がある。批評家たちから政治的な裏金(a political slush fund)であると激しく非難されたこの極めて異例な計画(the highly unusual plan)は、トランプ大統領が内国歳入庁(IRS)に対し、少なくとも100億ドルの支払いを求めていた訴訟を取り下げた直後に打ち出された。これは明らかに、納税者の​​資金を盟友や支持者に流すための基金を整える過程において、判事による監視を回避しようとする試み(effort to skirt oversight by the judge)であると見られる。

その金額自体に象徴的な意味合いが込められたこの基金(The fund, with its symbolic dollar value)について、同省の報道官は声明の中で、「政府権力の武器化と法戦による攻撃(weaponization and lawfare)の被害に遭ったと主張する人々の訴えを聞き入れ、救済請求(redress claims)を講じるための体系的なプロセスを提供する」ことを目的としていると説明した。 トッド・ブランシュ司法長官代行は「政府の機構(The machinery of government)が、いかなるアメリカ人に対しても武器として使われるようなことがあってはならない。過去に行われた不正を正し、二度とこのような事態が起きないよう確実にすることこそが、当省の意図するところである。今回の和解の一環として、我々は法戦や政府権力の武器化の被害者たちが自らの訴えを届け、救済を求めるための、法に則ったプロセスを構築するものである」と述べた。 訴訟の却下および基金の創設(The dismissal of the lawsuit and creation of the fund)は、トランプ氏が自らの支配下にある政府機関から数十億ドルもの損害賠償金を得ようとした一連の異例な試み(an extraordinary attempt)における最新の法的展開(the latest legal turn)である。

トランプ氏による訴訟の取り下げは、法制度を巧みに迂回する驚くべき裏技(a remarkable end-run around the legal system)であった。これにより、フロリダ州南部地区連邦裁判所で本件の審理を監督してきたキャスリーン・ウィリアムズ判事は、正式な和解合意(a formal settlement agreement)を承認するという本来の役割を事実上剥奪されること(effectively stripping)となった。訴訟を全面的に取り下げることで、トランプ氏は実質的に、司法による監視を一切受けないまま実質的に、政権当局者との合意形成に向けた自由な裁量を与えた(essentially freed his hand to reach a deal with administration officials)のである。判事は以前から、トランプ氏の訴訟を自らの判断で却下することを検討していた。その理由は、訴状を提出したトランプ氏個人の弁護団と、それに対して反論を行うべき政府側の弁護団の双方をトランプ氏が事実上支配しているという状況にあるからである。

判事は、現時点ではまだ本件に関する出廷や書面の提出を行っていない(has yet to make an appearance or filing in the case)司法省に対し、またトランプ氏の弁護団に対しても、5月20日までに裁判所へ報告書を提出するよう命じていた。その目的は、両者が実際に対立しているのか、それとも双方にとって都合の良い結果を導き出すために共謀しているのではないか、(were colluding to achieve a mutually agreeable outcome)という点を説明させることにあった。18日に提出された書面の中で、トランプ氏の弁護団は、今回の訴訟取り下げによって「当該訴訟に対し、いかなる司法的分析も適切ではない」と主張した。トランプ氏による訴訟の核心(suit stems)は、2019年に同氏の納税申告書がニューヨーク・タイムス紙に流出した一件に端を発している。トランプ氏、その2人の息子、そして同氏の同族企業は、かつての業務委託先従業員(a former contractor)が納税情報をタイムス紙やプロパブリカに流出させるのを防ぐため、内国歳入庁(IRS)はもっと対策を講じるべきであった(should have done more to prevent)と主張している。

連邦法は、自身の納税情報が流出した場合に個人がIRSを提訴することを認めているものの、法曹界の専門家(legal experts)らはトランプ氏の訴訟に明らかな欠陥(clear flaws in Mr.Trump’s lawsuit)があると指摘していた。また、司法省はこれまで、大統領職にない一般の原告が提起した同様の訴訟において、政府側の弁護を行ってきた実績がある。 トランプ氏の弁護団がウィリアムズ判事に対し、訴訟を取り下げる意向(their intention to dismiss the suit)を伝えてからわずか数分後、民主党議員93人が裁判所に申立書を提出した(93 Democratic lawmakers filed court papers)。その中で議員らは、司法省がトランプ氏と「共謀(colluded)」したとして非難し、判事に対し、自らの判断で本件を棄却するよう求めた。「米国史上、現職の大統領(a sitting president)が自ら率いる政府に対し、金銭的な和解(a monetary settlement)を求めたことなど一度もない。ましてや、数十億ドルもの巨額の納税者資金を要求するなど、前代未聞のことである」と、議員側の弁護団は申立書の中で記している。 議員らが提出した書面は、トランプ氏の動きが唐突な形で通常の裁判手続きを寸断した(short-circuited normal court business)ことで、いかに混乱させたかを如実に物語っていた(suggested how jarringly)。大統領側の弁護団は、トランプ氏自らの判断で訴訟を取り下げるという先手を打つことで、和解の成立を阻止しようとする議員らの動きを事実上封じた(hamstringing their ability to stop a settlement from going through)状況になっているという。

最後に、「その金額自体に象徴的な意味合いが込められた」とのタイムスの解説は、和解金とされる17億7,600万ドルの数値が1776年の独立宣言の年にちなんでいるという意味である。トランプ大統領は2016年の選挙キャンペーンから2017年に就任した後も納税申告書を提出することはなかったことで広範に知られている。IRSが監査中であるため、提供できないとするものであったが、監査中も公開可能であるとして反論されたにも関わらず、トランプ氏は拒否し続けた。しかし、2018年、IRSの請負業者であったチャズ・リトルジョンは、個人情報が秘匿されていない15年分に及ぶ、確定申告書を密かに不正入手し、2019年にニューヨーク・タイムス紙に提供したのである。同年、米国下院歳入委員会は財務省および内国歳入庁に対し、トランプ氏個人のものおよび事業に関する過去6年分の納税申告書の提出を要請するため、召喚状を発付した。2020年9月、タイムス紙は流出資料の内容を詳述する一連の記事の第一弾を掲載し、トランプ氏が2016年と2017年のいずれの年も連邦所得税としてわずか750ドルしか納めていなかったこと、さらに過去15年間のうち10年間は​​、収入を上回る損失が生じたと申告することで、所得税を一切納めていなかったことを初めて明らかにした。その後、3年間にわたる法廷闘争が繰り広げられたが、2022年11月、米国最高裁は、トランプ氏に対し、米国下院歳入委員会の要請に従う必要があると判定した。

2026年1月29日、トランプ大統領と彼の二人の子息トランプ・ジュニアとエリック・トランプおよびトランプ・オルガニゼーションは、IRSと財務省に対して、フロリダ州南部地区連邦地方裁判所に訴訟を提起した。「トランプ対内国歳入庁」と呼ばれる訴訟で、原告(トランプ側)は「名誉および金銭的な損害」ならびに「公衆の面前での恥辱」を被ったと主張した。この訴訟は、2019年に、トランプ氏の納税申告書に関連する大統領の機密情報がニューヨーク・タイムス紙に流出した事件を受けて、当時のIRSと財務省が適切に保全・保護する義務を怠ったと主張し、100億ドルの損害賠償を求めたものである。つまり、政権を運営する大統領は、彼自身の政権を告訴した前代未聞の訴訟となっていた。なぜなら、トランプ大統領が法廷で争うIRSと財務省は、彼自身が最高責任者を務めている為、利益相反や汚職の可能性をめぐる問題も提起されていた。本件に関して、元IRSの職員や税務専門家によるグループは2月に法廷助言書を提出し、トランプ氏による「共謀的な訴訟行為は、裁判所を不当な手続きに巻き込む恐れがあり、司法プロセスの健全性を脅かすものである」との懸念を示した。非営利団体CREW(ワシントンにおける責任と倫理のための市民)は、トランプ氏との和解は、米国憲法に定められた「国内報酬条項」に違反すると指摘した。今年1月下旬に、トランプ氏と彼の同族企業がIRSと財務省に対して訴訟を提起した後、二人の元憲法学者である米国上院議員エリザベス・ウォーレン氏とジェイミー・ラスキン下院議員を含む、議会民主党のリーダー達は、この訴訟の動きに注目していた。彼らは、大統領および副大統領、その近親者、および関連する信託や団体が、米国政府との和解合意に基づき金銭等を受け取ることを禁じる「大統領による納税者資金の略奪禁止法案を4月に提出した。

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