昨年5月1日、オバマ政権が、「ネイビーシールズ・チーム・シックス」と呼ばれる6人の特殊部隊を使ってオサマ・ビンラディンを捕獲し、殺害したことはまだ記憶に新しい人も多いだろう。当時オバマ大統領は、詳細を公表しないと述べたが、オバマ政権は、ハリウッドの映画監督に映画製作を許可し、この成功シーンを世間に公表するため、その映画化計画は今年1月にはもうすでに始まっていた、というから驚きだ。しかも政府側は、アカデミー監督賞受賞者で、この映画の監督であるキャサリン・ビグローとそのスクリーン・ライターに特殊部隊に接近することも許可しているという。昨日、映画製作に関して、メールも含めて双方間の打ち合わなどの情報が公開されたとのことだ。
ペンタゴンとCIAは、今年1月以降、国防総省が極秘になっている情報を映画製作チームに提供するのではないかという疑いを抱いていた。保守派のウォッチドッグ・グループのジュディシァル・ウォッチは、ビンラディンを殺害に至った当時の詳細な計画、及び、6人の特殊部隊、その指揮官に関する情報を含む機密情報が提供されることに難色を示している。通信に使われた複数のメールで、歴史上前例のないCIAの極秘施設や秘密書類が保存されている地下貯蔵室に映画製作者らが立ち入ることなどの危険性を指摘し、映画は一般に公開されるといずれ世界は、当時何が起こったのか、その真相を知ることになり、もちろん敵も知ることになると安全保障の面で危惧している。
また、極秘情報を暴露するジャーナリスト、特に軍隊などの内部告発者は、歴史上かってないほど頻繁に逮捕されている一方で、極秘であるべきはずの政府の設備が、どうして映画関係者のみアクセスできるのか疑問視されている。映画には、実際、オサマ・ビンラディン殺害に関与した、特殊部隊のリーダーや個々の隊員の名前は公開されることはなく、ジャーナリストに提供されていない機密の情報は、映画製作部隊にも提供されていない、との反論もあるようだ。映画は10月、選挙前に上映されるという。選挙時期のタイミングの良さを考えると、有権者の心理を捉える作戦で、オバマ政権の政治的アピールを狙ったものと疑われても仕方がないだろう。
それより、同じ時期の1月、国防長官、レオン・パネッタは、ビンラディンの殺害成功の背景に、ビンラディンの居所を突き止めことに多大な協力をしたパキスタンの医者、シャキール・アフリディの存在があったことを表明した。アフリディは、ビンラディンの住居からDNA鑑定を入手するため、虚偽のB型肝炎ワクチン接種キャンペーンを行ったことで、パキスタン当局に投獄されていたが、本日、彼は33年の刑を宣告された。アフリディとその医療チームは、ビンラディンの住居からDNAサンプルを入手することは出来なったが、CIAに情報を提供したことがかなり成果につながったようだ。このようなパキスタンの医者の協力なくして、ビンラディンを突き止めることはほぼ不可能であったかもしれないが、そのような裏の真実が映画のシナリオに含まれているのか不明であり、また、映画製作の過程が国の安全保障に関わるような問題であるかどうかは疑わしい。