今年の中間選挙ほど緊張を煽る選挙はありません。それは、議会の支配権が米国上院及び下院の両院で共和党から民主党に変わる可能性があるからです。両党にとって極めて重大であることから、2026年11月3日の選挙は民主主義がテストされる歴史的に重大なものとなります。
今年トランプ政権は、共和党に有利な地区割の推進、郵便投票の制限、AIを利用した政敵に対する虚偽の広告、選挙前から一部州の米国上院選挙結果を覆すことを示唆した先制行為など、様々な角度から、選挙の公正性を脅かしてきました。一方、州の選挙管理当局は、選挙のサイバー・セキュリテイ攻撃及び不必要な投票場での政府職員による監視などの可能性に備えるため、訓練などを通して、混沌を防ぐための努力をしてきたと数回報告されました。
そして、民主主義と憲法を保護する連邦裁判所の判事らは、党派に関係なく、連邦政府の挑戦に度々直面しました。米国最高裁は2026年9月14日の判定で、地方裁判所による暫定差止命令を支持し、郵便局は郵便投票用紙を配達しなくてはならないとの判定を下したため、郵便投票は11月3日の選挙に全く影響を及ぼす危機は解消しました。郵便投票を行う多くの州では、有権者は一週間が残された今週前半の期間が最後の安全な投函になるはずです。加えて、トランプ大統領は2026年2月から選挙を国有化することを頻繁に求めました。そして彼と彼の政権の同盟者は、選挙の管理は各州にあるものの、歴史上初めて、連邦政府で管理しようとしました。それは2025年の2月以降から、50州全てに対して投票登録者の名簿を提供するよう求め、それに反対した州を告訴するという前代未聞の大統領令に対する裁判が相次ぎました。連邦政府は、各州の選挙を管理及び監督するという法的権限がないからです。
大統領は選挙を連邦の管理下に置くことができないのです。以前も述べたように、憲法第1条第4節(選挙条項)で選挙の「時期、場所、方法」を規定する権限は、各州の議会に与えられています。連邦議会はそれらの規則を「変更」することはできますが、選挙を管理・運営するための独立した権限はない」のです。他の理由は、「分散型の選挙運営」にあります。Institute/or Responsive Governmentの解説によると、「米国の選挙制度は世界で最も分散化が進んだシステムの一つであり、8,000以上の地方自治体(管轄区域)が関与しています。前述の法的な理由に加え、現実問題としても、連邦政府が選挙運営を掌握することは不可能です。この構造は「欠陥」ではなく、むしろ意図された「特徴」であり、重要な保護機能を提供しています。更に「サイバー脅威に対する強靭性」に関連しています。「全国統一のシステムを構築すると、そこに障害の単一の弱点が生まれてしまいます。従って、権限や運用を州別に分散させることで、悪意ある者が一度のハッキングで全米の選挙結果を覆すことは、事実上不可能になる」からです。
トランプ氏は2020年の大統領選に敗北した後、大規模な選挙詐欺があったと主張し、今年7月にも国民向けのスピーチで再度、強調しました。AP通信が2021年12月14日に発表したところによると、「ドナルド・トランプ前大統領が異議を唱えた6つの激戦州における、あらゆる不正投票の疑い事例をAP通信が調査したところ、その数は475件未満であることが判明した。この程度の数では、2020年大統領選挙の結果を左右することはなかったはずです。 民主党候補のジョー・バイデン氏は、アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ペンシルベニア、ウィスコンシンの各州を制し、計79人の選挙人を獲得しました。これらの州における同氏の得票差は、投じられた計2,550万票のうち311,257票でした。問題とされた票数は、同氏がこれらの州で勝利した際の得票差のわずか0.15%に過ぎない」と報告されました。
| ジョー・バイデン | ドナルド・トランプ | |
| 党派 | 民主党 | 共和党 |
| 出身州 | デラウエア | フロリダ |
| 副大統領 | カマラ・ハリス | マイク・ペンス |
| 選挙人数 | 306 | 232 |
| 人気投票数 | 81,283,501 | 74,223,975 |
| 投票率 | 51.3% | 46.8% |
この投票数と選挙人数の大幅な差があったにも関わらず、トランプ氏は、証拠を提供することはなく、不正選挙によって敗北したと長年主張し続けています。2026年11月3日の中間選挙を意識した大統領の国民に向けたスピーチは、7月17日にホワイトハウスのイースト・ルームで行われました。それは2020年の選挙結果を再度否定し、選挙の公平性に疑問を抱かせ、今年の選挙も同様であると主張し、自身は敗北者ではないと示唆しました。このスピーチは、2025年から投票を制限しようとする政権の行動がトランプ氏の言動と一貫性があり、彼の党が多数派を失う場合、選挙は不正に基づくため合法的な選挙結果ではないと主張するためであることを示唆しました。2026年の中間選挙の正当性に疑いを撒き散らす行為は、共和党が敗北することを見込んでおり、その敗北の理由は不正選挙が要因であると主張するためです。一部の著名なジャーナリストは、トランプ氏が敗北することを極度に嫌い、敗北を認めない態度は「傷ついた自尊心を癒すため」であると言います。執拗な敗北の否定は、平和的な政権移行を困難にするだけでなく、権力への固執につながり、結果的には民主主義を崩壊に導く危険性があります。選挙結果の否定は、特に独裁的及び権威主義国の指導者によって行われるものです。2022年6月16日の公聴会で証言した元連邦判事マイケル・ラテッグ氏は、民主主義の危機を懸念したほぼ最初の主要人物でした。ですから、選挙まで1週間が迫っている中で、今年の選挙は再度、民主主義が試されると一部の批評家は大分以前から述べています。2021年1月6日の大統領の行動に法的結果が伴わない場合、最初の選挙転覆行為は、二回目のためのリハーサルになってしまうという懸念が当時から既に浮上していたのです。