納税者の恩を仇で返す米国の金融業界

近年、米国金融機関の電話センター業界のアウトソーシングは、フィリッピンが主流になっている。「バンク・オブ・アメリカ、おまえもか」と言いたくなるが、米国で大手の銀行は、ほぼすべて、電話サービス業務をフィリッピンの電話センター産業に委託または、アウトソーシングしている。バンク・オブ・アメリカ(BOA)は大手銀行の中でその最後の銀行になる。

5月29日の『マザー・ジョンズ』誌によると、BOAは数年前、連邦政府による450億ドルの資金援助を受けたばかりだが、昨年秋、「30,000人の職員を解雇して、海外の労働者を雇う」ことを発表した。これでは、納税者に対する恩を仇で返すようなものだ。BOAは、主に顧客サービス部門をフィリッピンの電話センターに移転することになる。この国の1世帯あたりの年間平均収入は4,700ドルであり、アウトソーシングは、ビジネス観点から言えばかなりの労働費削減につながることが予測できる。一方、米国内の金融関連の電話センター産業は、過去4年間ですでに50万人の雇用を失っていて、職員は常に解雇の危険に晒されている。

コンピューター会社なども電話対応による顧客サービス部門、トラブル発生、技術的質問など、顧客に応対する電話サービス・センターを早くから、海外、特にインドにアウトソーシングしている。購入したコンピューターに関連する問題や質問が生じた場合、電話を掛けた際、応対した相手は、インド系のアクセントが強い英語を話し、インドのどこかに存在する電話センターで働く技術者だったりすることが頻繁にある。高度な語学力のある職員が起用されるはずであるが、特に米国に住む外国人には、彼等の英語の発音はわかりにくいというマイナス面がある。ましてや、銀行とのコミュニケーションは、コンピューターのトラブルとは異なり、財務に関する機密性の高い個人情報であるため、安全性に関する問題が最も懸念されている。

すでに米国の大手企業は、1990年代の後半から数百万という製造部門の仕事をアウトソーシンングしていて、数百万の仕事が失われている。グローバル経済のダウンサイジング(downsizing)が、どれほど、米国の経済に打撃を与えているか計り知れない。米国の失業率がなかなか改善しないばかりか、企業がアウトソーシングによる労働費削減で得た恩恵を国内の消費者は直接受けていない。オバマ大統領は1月24日の一般教書演説で、海外に製造部門をアウトソーシングする企業への優遇を中止し、国内に仕事を生み出す企業に報酬を与えるための税制改革の必要性を訴えた。その後、海外から工場を国内に戻す企業もあったが、カリフォルニア大学バークレー校の複数の経済学者による研究チームは、「2000年から2015年までは、毎月17,000のサービス業が海外にアウトソーシングする」と推定している。

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