ベラルーシ鉄道労働者の驚異的なウクライナへの援助は何を示唆?

2019年12月:アレクサンドル・ルカシェンコ(左) By Global Security Review

ベラルーシの鉄道労働者は、ロシアがウクライナを侵略した2日後から、ロシアのキエフに対する攻撃を阻止するため、平和的にウクライナを援助していたという驚きの事実が判明している。彼らの活動は、なぞとされたロシア戦闘車約40マイルのコンボイの行き詰まりと、ロシアがキエフを占領できなかった主な直接的および間接的な一因であった。この驚きの展開は、重要な教訓があることを示唆している。

ロシアがウクライナを侵略した後、ベラルーシでは何万人もの市民がロシアのウクライナでの戦争に反対するプロテストを展開した。ベラルーシ政府は親ロシア派であるが、戦争を望んでいない一般国民はそうではなかった。また、ロシアが2月24日にウクライナを侵略した後、まもなく、約40マイル(64 Km)の距離に相当するロシア軍の戦闘車のコンボイ(護送団)は、前進していないことを米国国防総省のサテライトが明らかにした。それは一ヶ月が経過する頃も同じ状況であり、米国のメディアは非常にミステリーであると報告していた。ロシアから輸送された食料や燃料は、ロシアからベラルーシを経由してウクライナ軍に鉄道で運送されるはずであったが、平和的なベラルーシの鉄道労働者は、ロシアからの輸送を密かにボイコットしていたのである。ロシア軍のコンボイは、待っていた物資が届かない為、全てが計画どおりに進まなかった。ベラルーシの鉄道労働者は、キエフに対するロシアの攻撃を阻止するためにウクライナの人々を援助したからである。

この状況は24日ワシントン・ポストが詳細に報告している。ポストによると、ロシアは、ウクライナへの攻撃を開始した時、供給と補強のために地域の広範な鉄道網に依存することを意図していた。ロシア人はベラルーシの鉄道労働者がその妨害工作を行うことを全く予測していなかった。2月の侵略の初期から、ウクライナ人を援助したグループは、鉄道労働者、ハッカー、反体制派の治安部隊による秘密ネットワークである。彼らは、ベラルーシを経由してロシアとウクライナを結ぶ鉄道リンクを無効化または妨害し、ロシアの供給ラインをボイコットした。ロシアの準備不足と戦術的ミスおよびウクライナの激しい抵抗に加えて、ロシア軍は食糧、燃料、弾薬なしで最前線で立ち往生し、結局、キエフを占領できなかった為、4月から海路のある東側に移動する結果になった。

ロンドンに本拠を置くロイヤル・ユナイテッド・サービス研究所のエミリー・フェリスは、特にベラルーシからの独立したメディアの報道がないため、最初のキエフの北側近辺で見られたロシアの戦略の混乱がどれだけベラルーシの鉄道労働者の妨害行為に起因しており、ロシア人による兵站計画がどれほど不十分であるかを判断するのは困難であると述べている。彼女は、自動信号がなければ、列車はゆっくりと這うようになり、一度に線路を走行する列車の数は厳しく制限されていた可能性があると述べた。バイポールと呼ばれる治安部隊グループを率いるワルシャワに住む元治安当局者のアレクサンダー・アザロフ中佐は、鉄道労働者、治安部隊、サイバー専門家を代表する3つの主要なグループが関与していると述べた。3番目のサイバー・グループは2020年以来、ベラルーシ政府に対して、幾つかのサイバー攻撃を行ってきた亡命者であるベラルーシのIT専門家で構成されている。彼らは、最初に活動を開始し、ロシア軍が国境を越える前の侵略に至るまでの数日間で、鉄道のコンピューター・ネットワークをハッキングし、鉄道の交通を混乱させた。

現在ポーランドを拠点とし、地域社会のリーダーである元鉄道職員のセルゲイ・ボイテコビッチは、侵略が始まってから2日後の2月26日から、信号キャビネットに対する5回の妨害を続け、列車の交通はほぼ完全に停止したと述べている。2月28日までに、ベラルーシからキエフに向かっていたロシアのトラックと戦車による40マイルのコンボイの衛星写真が表面に現れ始めた。 一週間以内に、車両は燃料を使い果たし、故障し、コンボイは完全に機能不全に陥った。統一または集中化されたリーダーが存在しないこれら3つのグループで構成されたベラルーシの鉄道労働者は「何日も、列車の動きを麻痺させ、ロシア人は道路で軍隊に補給を試みることを余儀なくされ、キエフの北にある悪名高いロシア軍のコンボイを失速させる」ことに貢献したのである。2020年にベラルーシを揺るがした反政府プロテストの期間中、逮捕の脅威下で、ポーランドに逃げたベラルーシの活動家および労働組合員のユーリー・ラヴァヴォイは「彼らの妨害は、ロシアの侵略への効果的な対応を策定するための時間をウクライナ軍に与えた」と述べた。

リトアニアに亡命しているベラルーシのジャーナリスト、ハンナ・リウバコワは「ウクライナ侵略に備えて数万人のロシア軍がベラルーシに配備されたことで、2020年のベラルーシ大統領アレクサンドル・ルカシェンコに対する抗議活動の期間に形成された広範な国内の反対と再燃したネットワークが築かれた」と述べた。リウバコワは、ベラルーシの鉄道労働者が平和的に行動することを望んでいたとし、「私たちはロシア軍やベラルーシの列車の運転手を殺したくありませんでした。私たちは彼らを止めるために平和的な方法を使いました」と言った。しかし、全てが順調に運んだわけではない。ベラルーシ当局は妨害工作員を追い詰めるための激しい努力を開始し、内務省は、鉄道インフラの損害をテロ行為であると宣言し、懲役20年の犯罪を布告した。手当たり次第に数十人の鉄道労働者を拘留し、少なくとも11人のベラルーシ人を拘留しているという。治安警察は4月初旬、ボブルイスクの町の近くで3人の妨害工作員とされる人物を捕らえ、膝を撃った直後に、国営テレビは、出血している男性の映像を放送した。彼らは、膝を包帯で巻かれており、逮捕に抵抗しながら撃たれたと主張した。ロシアの戦争に反対したベラルーシの鉄道労働者を代表する反政府派のリーダーであるスヴェトラーナ・ティハノフスカヤのスポークスマンは、彼らの阻止がロシアをドンバス地域の東側に移動させた要因であると述べた。彼は、「ロシア人がキエフを取ることを諦めたという事実は、ロシア人が期待したほど、ベラルーシは安全でないと感じたので、私たちの仕事の結果であると信じています。何千人ものロシア軍は食糧や燃料を受け取っておらず、時間通りに装備を取得しませんでした。」と言った。

ベラルーシの鉄道労働者による供給ルートの妨害に至る以前に、幾つかの兆候があった。⑴  ソビエト連邦の1991年の崩壊後、ベラルーシはロシアのわずかな同盟国の一つであると言われていた。そして、今年3月中旬までに、大多数のメディアと専門家はベラルーシがウクライナに軍隊を配備し、モスクワがキエフを占領するためにロシア軍に加勢するとの懸念を表明または予測していた。しかし、ベラルーシ軍の階級内には反乱寸前の混沌があり、一部の上級将校は辞任し、海外に逃亡した。⑵ 少なくとも、国民は平和を望んでいた。ロシア軍がウクライナに侵略した3日後の27日からベラルーシの幾つかの場所では、市民によるプロテストが展開され、群衆は「ウクライナに栄光あれ」、「戦争に反対」と唱えた。そして、プロテストの波は、ウクライナで多数の市民が死亡している状況が判明した3月には世界中に拡大した。⑶  元ソビエト連邦の国さえロシアに援助を提供していない。ロシアは、残虐な戦争で破壊行為を続けているウクライナに加えて、アルメニア、ベラルーシ、ジョージア、カザフスタン、キルギスタン、モルドバ、シリア、タジキスタンに軍事基地と施設を保持している。それらの大部分は旧ソビエト共和国に属していた国であるが、これらの国がロシア軍を援助しているという情報はない。加えて、最も親ロシア派であると言われているベラルーシ政府さえ、プーチンを援助するため軍事的援助を提供しているという兆候はない。また、元ソビエト連邦の一部であった他の隣接国も、ロシア軍に軍事物資を供給することさえない。優れた傍受技術を持つ米国がそのような協力を発見した場合、厳しい制裁に直面するからである。

要するに、プーチンはソビエト連邦時代の壮大なパワーに憧れ、その超大国の栄光の日々を取り戻すため、ウクライナはロシアが創造した国であるとの虚偽の主張に基づき、占領を開始し、ちょうど二か月が経過した。加えて、市民を殺害していることが発覚して以来、戦争犯罪の証拠が公開されている中で、多数の西側諸国が武器や必需品をウクライナに送っている状況は前代未聞である。現在、報道されている様々な状況は、ソビエト連邦が存在していた時代とは異なり、世界は大幅に変わったことを明白に示している。例えば、2020年のベラルーシの大規模なプロテストは、ソビエト連邦崩壊の1991年以後に生まれた若い世代が、独立した主権国の市民として育っているため、彼らの国にロシアの軍事基地を保持することさえ歓迎していないことを示唆している。ロシアは2020年、ベラルーシに侵入し、占領する計画があったことをウクライナ国防省が4月21日に発表した。ロシアの大統領ウラジーミル・プーチンは、上記の3つの現実を無視し、ベラルーシの大統領アレクサンドル・ルカシェンコの友好に依存し、ベラルーシの国民を大幅に過小評価していた。つまり、ベラルーシの鉄道労働者グループがロシアから輸送された物資の供給を阻止するとは想像にも及ばなかったことを示唆している。これらの多大な失敗は、これまでの発覚の中で最も劇的な教訓になる可能性がある。

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