
Photo credit : NBC 5 Dallas – Fort Worth
2020年11月の大統領選後に4つの激戦州の選挙結果の認証を停止するよう米国最高裁に請願書を提出し、一躍全国に知られるようになったテキサス州の司法長官、ケン・パクストン(中央)は9日間続いた同州上院議会での弾劾裁判で、多数派である共和党によって16日に無罪釈放された。投票は大幅に党派ラインに割れた。パクストンに対する同州上院での無罪は何を意味するだろうか?
パクストンに対する弾劾調査が開始された理由は、長官としての職務の悪用である。5月27日のAP通信によると、テキサス州の下院議会はなんとパクストンに対して20の弾劾条項を発行した。その原因となった彼の行動は、差し押さえ訴訟への介入の試み、不動産開発業者ネイト・ポールに有利な法的意見を不適切に提供し、職員に対する解雇や嫌がらせ、内部告発者の妨害などが含まれる。贈収賄容疑は、ポールが法的援助と引き換えにパクストンと不倫関係にあった女性を雇用し、パクストンの自宅の改築費をポールが支払ったとされるスキャンダル浮上の発端である。その他の罪状は、州捜査官に対する虚偽を含むパクストンの2015年の重罪証券詐欺事件にまで遡っており、これは現在も係争中である。
彼は、今年5月に下院議会での弾劾調査が開始されて以来、司法長官の役務から除去され、テキサス州の知事グレッグ・アボットは、一時的に別の長官を任命していた。パクストンは16日、9日間続いた同州の上院議会での裁判の最後に、投票によって共和党に無罪放免された。テキサス州の上院共和党は19人、民主党は12人であり、その中で男性は23人、女性は8人の合計31人で構成されている。今年5月に下院議会の議場で行われた弾劾決議の投票では121対23票で可決した。しかし、16日の上院議会での投票は、20の弾劾条項毎に行われ、最も多かった投票結果は有罪が14票(共和党2、民主党12)、無罪が16票(共和党16、民主党0)であった。最後に「弾劾条項を却下する動議」での投票では19票(共和党18、民主党1)が賛成票に、11人が反対票に投票したことで、多数派の共和党によってパクストンは無罪となった。弾劾条項の全てに賛成票を投じた共和党議員はわずか2名であった。過半数の投票数に達した弾劾条項はなかったことから、無罪は党派的に容易であった印象がある。上院議会の大多数の共和党議員らは、彼の背後で彼を有罪にしないために団結したと言われている。
もっとも驚いたことは、無罪になったと同時に、パクストンは司法長官の職務に戻ることが可能になるということである。職権を乱用するような人物が司法長官であることに同州の住民らは何を感じるだろうか?また、2015年に就任する前に証券詐欺罪で2015年から起訴され、無罪を主張した彼の訴訟はさまざまな手続き上の問題があり、裁判には至ることはなかった。また、2020年には、パクストンの事務所の複数の補佐官が彼を「贈収賄、職権乱用」で告発した為、議会は今年、弾劾手続きを開始したという経緯がある。
共和党の状況は完全に民主党の対処とは異なることに注目する必要がある。その一例は、民主党は上院または下院の中に、マイナーなセクハラまたは他の疑惑が報告された時点で、同党の議員に甘い態度を示さない。その一例は、コメディアン、作家、俳優であり、2009年からミネソタ州を代表する上院民主党議員であったアル・フランケンが、過去に性的違法行為があったとする疑惑を受け、2018年1月2日に辞任したことである。彼は、事実とは話が異なるとしてその疑惑を否定し、上院倫理委員会で説明する機会を求めたが、当時少数派リーダーであったチャック・シューマーはフランケンに対し、ある期限内に辞任を発表しない場合、非難され、委員会の任務から除外されると伝えた。2017年12月7日、フランケンは上院議員を辞任すると発表し、彼に対する告発の一部は「単に真実ではない」と述べ、「まったく異なる」記憶があると言った。辞任演説の中で、彼は自身の立場を共和党の政治家と比較し、特にトランプ大統領は、2016年の選挙の1カ月前に公開されたアクセス・ハリウッドのテープで、女性に対する嫌がらせや性的虐待の多くの疑惑があるにもかかわらず、大統領が留任していることを指摘した。
ケン・パクストンは、多大な法的問題で告訴されるという腐敗の顕著な共和党の政治家の一人である。弾劾裁判で2回無罪となったトランプと同様に、パクストンは上院共和党によって16日に無罪となった。フランケンは、この三人の共和党員に比較するとマイナーな疑惑によって、同党のリーダーや仲間によって辞職に追い込まれるという党内からの厳しい対応に直面した。フランケンは最初の例ではなく、民主党の誰かにスキャンダルの疑惑が浮上すると、必ず民主党議員らは辞職を促す声を高めるパターンがある。全てがそうであるかは不明であるが、正義感と潔癖性に対する両党の姿勢は大きく異なる傾向があることは事実である。共和党の場合、複数のスキャンダルで悪名高き人物が異様にも選出されている。パクストンは2022年11月の再選で、民主党のロシェル・ガーザを破り、司法長官として3期目を獲得した。保守派州のテキサスでは、夥しいスキャンダルに満ちた人物が非常に簡単に職務に戻ることを可能にしている。それは、次の再選または知事選にも立候補することが可能になることを意味する。共和党有権者はなぜ、法的に問題のある個人を司法長官に選出することに抵抗を示さないのだろうか?なぜ、大多数の共和党有権者は、4回告訴されたトランプをまだ支持しているのだろうか? 腐敗したリーダーが政界を腐敗の沼にしているのは、保守派の有権者にも責任があると言える。