激戦州一部の民主党地域でトランプが勝利した理由

After backing Trump, low-income voters hope he doesn’t slash their benefits        Washington Post  2024年12月26日

この記事は、今年11月5日の総選挙で、ペンシルベニア州の一部地域の有権者は1956年以来初めて共和党大統領を選出したことを示した。低所得の有権者は通常、民主党に投票する。彼らが受理しているフード・スタンプのような福祉政策は民主党大統領下で推進され保護されているためである。しかし、今年、一部の民主党有権者は、共和党候補者のドナルド・トランプに投票した。多様な福祉プログラムも含めて、政府最大の削減は第二期トランプ政権下の主な特徴であるにも関わらず、彼らは次期大統領トランプが、福祉政策を削減しないと信じている。これは、最も重要な激戦州で現実に矛盾する投票パターンがあったことを示唆している。

ペンシルベニア州ニューキャッスルに住む片親の母(single mother)であるロリ・モスラは、トラックを修理するお金がないので、自転車で食料品店に行くという。彼女と17 歳の息子はダイニング・ルームで寝るほど狭いアパートに住んでいる。毎月 1,200 ドルのフード・スタンプと社会保障給付金(Social Security benefits)を受け取っているが、不足している生活費を節約するため、牛乳を買うかトイレット・ペーパーを買うかで迷うことがよくあると言う。アパートに月375ドル支払っているモスラは「特にこの街の人々はこれまで以上に苦労しています」と言った。彼女は、増え続ける請求書のために「この1年間、これまで以上に祈った」と語った。パートタイムの税理士である55歳のモスラは、今秋民主党を離れ、このような節約(penny-pinching)を余儀なくされる経済状況に対して、ドナルド・トランプに投票した。先日の午後、モスラは 「トランプは金持ちだけではなく、すべての人のニーズに敏感です。トランプは彼が当選した理由が貧しい人々のおかげだとわかっていると思う。だからトランプは私たちを助けるためにもっと努力するだろう」と語った。

59歳のスティーブ・ティリアは、彼と息子を支えるために、社会保障障害手当として毎月1,600ドル、フード・スタンプとして300ドルを受け取っている。軽度の脳卒中を患って働けなくなったというティリアは、今でもニューキャッスルの街中を、SUVのバンパーにトランプの旗をつけて運転している。ティリアは「政府のプログラムを削減するのではなく、プログラムを運営するために必要な人員を削減するのです。彼らは職員を削減していますが、それによって実際に私たちが受けられるプログラムの量が増える可能性があります」と語った。つまり、トランプと共和党の指導者たちは、給付金を削減するのではなく、政府の「無駄を省く」ことで支出を減らすだろうと確信しているという。ティリアの隣人であるドーン・シモンズは、社会保障給付金として月に900ドル、フード・スタンプとして月に171ドルを受け取っている。彼は、トランプの決定は今後数年間で給付金の増額につながる可能性もあると語った。なぜなら、トランプは「米国民を第一に考える」計画だからだ。マスクは自身のソーシャル・メディア・プラットフォームXで、政府の無駄遣いと見なす例を取り上げており、時には誤解を招く情報を流しているにも関わらず、ニューキャッスルの有権者らは、トランプの閣僚人事やマスクの政府効率化計画を広く支持していると述べた。

ペンシルベニア州ニューキャッスル市は、かつて鉄鋼と鉄道の中心地(former steel and railroad hub)であったが、現在ペンシルベニア州の平均所得は最も低く、住民4人に1人以上が貧困状況である。トランプは11月にこの市で、約400票差で勝利し、約70年ぶりに共和党大統領候補として勝利した。トランプに信頼を寄せている(in putting their faith)のはニューキャッスルの最貧困層住民だけではない。ネットワークの出口調査で、トランプは全国の低所得層有権者に対する民主党の優位性を打ち消したという。年収50,000ドル未満の世帯の有権者の50%がトランプに投票したのに対し、カマラ・ハリス副大統領に投票した率は48%であった。ジョー・バイデン大統領は2020年に、これらの有権者から11%ポイントの差で勝利した。ヒラリー・クリントンは2016年に12ポイント、バラク・オバマ前大統領は2012年に22ポイントの差で楽勝した。

2024年の選挙では、投票パターンに顕著な変化があったことを示唆している。トランプに投票した低所得層のアメリカ人は、閣僚候補や共和党議員らが連邦政府支出の削減を求めているにもかかわらず、トランプが自分たちの給付金をそのまま維持してくれることを期待していると述べている。トランプは実際にはプロジェクト2025の一環として、政府の年間予算を2兆ドル削減することを目指している非政府諮問委員会の政府効率化局(DOGE)にイーロン・マスクとビベック・ラマスワミの二人の富豪者を配置することになっている。一部の専門家は、この削減は給付プログラムの削減によってのみ達成できると指摘している。共和党の議会指導者とトランプ大統領の顧問らは、メディケイド、フード・スタンプ、その他の連邦政府援助の大幅な削減を検討している。

このような状況を見ているニューキャッスルの住民を支援する社会福祉機関、ローレンス郡コミュニティ・アクション・パートナーシップの最高経営責任者トム・スコットは「誰もが極度の警戒状態」に置かれていると述べ、「どのプログラムが支出削減(spending reductions)の対象となるかわからないので、心配しなければならない」と警告した。スコットは3,200万ドルの予算の半分以上は連邦政府の援助(federal aid)によるものであると語った。連邦政府の援助は、ニューキャッスルの子供たちに食事を与える上で重要である。生徒の約90%は低所得家庭の出身で、無料の学校給食の対象(qualify for free school lunches)であり、その多くは週末に食べ物を持ち帰るという。ニューキャッスル地区の学区長グレッグ・パラディナは「ここは非常に不況のひどい地域(a very depressed area)なので、もし資金がなくなるとしたら、私はそんなことは聞いていないが、もしなくなるとしたら、私たちは非常に深刻な問題に直面するでしょう」と語った。一方、政権移行チームの広報担当者アンナ・ケリーは「あらゆる背景を持つアメリカ人がトランプ大統領を選んだのは、医療費を削減し、医療制度への不法移民の経済的負担を終わらせ(end the financial drain of illegal immigrants)、メディケイド、メディケア、社会保障に頼るアメリカ国民を引き続き世話できるようにするという彼の計画のためである」と述べた。

長年の民主党であるモスラのような有権者の中には、当初トランプに投票するかどうかで悩んだという人もいる。彼らは民主党が貧困層を最も助ける可能性が高いと考えており、中絶などの問題で共和党とは意見が合わなかった。しかし、モスラは、トランプが自分のような米国人を第一に考え、経済的な見通しを改善してくれるという結論に何度も戻ったという。モスラは、自分の専門分野でフルタイムの仕事を見つけることができず、共和党に所属政党を変える予定だと述べた。しかし、共和党の政治家が政府支出の削減について話すのを聞くと不安になるという。モスラは、会話の一部で 「私たちはあなたを政権に就かせるのを手伝いました。どうか私たちの面倒を見てください。最も弱い立場の人々を助けるものを削減しないでください」と、まるでトランプに話しかけているかのように語った。

最後に、農業地域の商業中心地であるニューキャッスルは、1798 年に設立され、ペンシルベニア州ピッツバーグの北西端にあるローレンス郡の都市にあり、同州とオハイオ州の州境近くにあるオハイオ州ヤングスタウンの南東約 17 マイルに位置している。2020年の国勢調査では、この都市の人口は約22,000人であった。1900年代初期までにニューキャッスルは国内で最も急速に成長している都市の1つであり、アメリカ最大のブリキ板工場が建設されたことで、同市は世界のブリキ板の中心地となった。長年民主党の有権者が多いニューキャッスルは、現在貧困者が多い都市となった。ここでは2024年11月5日の選挙でトランプがわずか400票の差で勝利した。共和党の大統領候補が勝利したのは1956年の大統領選で、有権者が民主党候補者のアドレー・スティーブンソンに対して、共和党候補者のドワイト・アイゼンハワーを僅差で勝利させて以来である。つまり、それ以来、共和党大統領が選出されたことはない。経済的理由に基づき、稀な決定として、彼らが現在受けているプログラムを全て保護する可能性があった民主党候補者のカマラ・ハリスに投票せず、トランプが彼らの経済向上に役立つと信じ、同氏に投票した有権者が正しかったか又は後悔する状況を見るかどうかは、トランプの最初の2年間で明白になるはずである。この記事は、ペンシルベニア州ニューキャッスルで起きたことが他の激戦州でも起きた可能性があることを示唆している。2024年の選挙前の頻繁な世論調査は、民主党寄りの3州の激戦州で、接戦ながらもハリスが有利であることを示唆していたが、選挙結果は完全に異なっていた。

 2020年2024年
 バイデントランプハリストランプ
ペンシルベニア50.10%48.84%48.66%50.37%
ミシガン50.62%47.84%48.31%49.73%
ウィスコンシン49.45%48.82%48.74%49.60%

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