トランプ政権の人員削減、予算削減、プログラムの廃止、ワクチン推進の鈍化により、今後4年間、米国および一部の貧困国の人々の健康維持の努力は衰退の方向に向かう可能性がある。それは、保健福祉省だけではなく、水と空気の清浄化に関連する環境保護庁でも同様の動きがあるため、自身の健康を管理する上で、多くの人々にとって困難な時代に直面する危険性がある。保健福祉省 (HHS)は1953 年 4 月 11 日に保健教育福祉省として設立された。現在、HHS傘下の主な運営機関は、国立衛生研究所 (NIH)、疾病対策予防センター(CDC)、および食品医薬品局 (FDA)である。
そして、これらの機関にはさらに部署がある。例えば、歴史的に古いNIHは1887 年に設立され、現在米国保健福祉省の一部門であるNIHにはエイズ研究、女性の健康研究、疾病予防、性的少数派研究、部族健康研究、プログラム評価&パフォーマンスを含む合計12 の部門に分かれている。1906年 6月に設立されたFDAは、HHSの連邦機関として、食品安全/応用栄養センター、医薬品評価研究センター、医療機器/放射線保健センター、腫瘍学研究センター、薬事規制局、臨床政策/プログラム局を含めて、合計17の部署が存在する。また、1946年7月に設立されたCDC下には、国立予防接種部門、呼吸器疾患センター 、人獣共通感染症センター 、グローバル移民保健部門、HIV/エイズ部門、ウイルス性肝炎性感染症、結核予防、発達障害センター、グローバル保健センター、国立環境衛生有害物質センターを含む合計15の機関がある。
数々の健康上の役目を果たすCDCとNIH及びFDAが傘下に置かれている巨大な医療機関の保健福祉省の長官であるロバート・ケネディ・ジュニアは、ワクチンが自閉症の原因であるとの医学的に証明されていない陰謀論を拡大した人物として広範に知られている。そして、CDCのディレクターとして11月に次期大統領トランプに指名された元下院議員のデイブ・ウェルドンは科学的に根拠がないとされているワクチンと自閉症の因果関係を支持しており、彼は上院議会の承認を得ていない。FDAのディレクターとしてトランプが11月に指名したイギリス系アメリカ人の外科医、教授、医療評論家であるマーティ・マカリ博士は広範なワクチン接種義務化と特定の学校に対するワクチン規制に反対していた。彼もまだ上院議会の承認を受けていない。NIHのディレクターとして、同じく2024年11月に指名された米国の医師科学者であるジェイ・タチャリヤは、COVID-19の蔓延を引き起こした重症急性呼吸器症候群コロナウイルスの深刻さに疑問を提起した。同氏もまだ上院議会で認可されていない。
そして先週、科学者らは、国立衛生研究所がHIV感染に利用されている予防薬のPrEPの助成金を打ち切ったと発表した。ニューヨーク・タイムスが19日に伝えたところによると、トランプ大統領は2017年1月から 2021年1月までの最初の任期中、2019年の一般教書演説で、最も緊急のニーズがある57の管轄区域に焦点を当て、2030年までに米国でのHIVの流行を終わらせるという画期的な取り組みを発表し、支援団体を含めて広く称賛され、肯定的な効果があった。バイデン政権で引き継がれたこの計画により、2022年までに、全国の青少年と若年成人の新規感染者数は30%減少し、他ほとんどのグループでも約10%減少した。
今年、第二期目のトランプ政権によるHIVに対する姿勢は、HIV感染と戦った過去の姿勢とは全く逆である。資金提供が打ち切られたことを知らされた科学者らは、国立衛生研究所が19日、HIV感染を阻止できる予防薬に関連する助成金を停止したと語った。連邦当局者は、保健福祉省が疾病対策センターのHIV予防部門を閉鎖し、その活動の一部を別の機関に移管することも検討しているという。CDCは従来、HIV の予防、流行の検出と対応、注射器の交換、緊急治療室での検査の拡大、教育と啓発のために州や地域に資金を提供していた。HIV の新規診断の約 4 分の 1 は、CDC の資金によって行われていた。ハーバード大学医学部のジュリア・マーカス准教授は、「米国でHIV予防インフラ全体が崩壊する方向に向かっている」ようであると述べ、「崩壊すれば、HIVは再び流行するだろう」と警告し、2日間で3つの連邦政府研究助成金を失ったと述べた。トランプ大統領の就任初日に設置されたイーロン・マスクによる政府効率化局(DOGE)は、USAIDとして知られている世界の貧困国を医療および衛生の側面で援助している米国国際開発庁をほぼ解体した。同時に助成金の提供が停止され、臨床試験を含むHIV予防の取り組みは世界の多くの地域で中止されている。その為、著名な大学で何年もかけて何百万ドルもかかるプロジェクトは運営不可能になっている。一部の研究は、HIV感染リスクが最も高い性転換の人々に関連している。他の研究は子供や黒人女性など、十分な医療サービスを受ける可能性が低いグループのHIV予防療法を促進する分野に関連していた。
加えて、17日に下院科学宇宙技術委員会の民主党議員らが確認した文書は、環境保護庁(EPA)が、化学者、生物学者、毒物学者、その他の科学者を最大 1,155 人解雇することで、科学部門を廃止する計画があることを明らかにした。これもDOGEの連邦職員に対する大規模な人員削減の一環である。環境保護庁長官のリー・ゼルディンは、同庁の予算の 65% を削減すると述べている。これは大幅な削減となり、専門家らは「浄水と廃水の改善、大気質のモニター、有毒な工業地帯の浄化、その他同庁の任務に支障をきたす可能性がある」と指摘している。ホワイトハウスに21日に提出されたEPAの計画では、同庁最大の部署である研究開発局を解散し、そこで職員の最大75%を解雇することを目指している。下院科学委員会の民主党員に協力している職員がニューヨーク・タイムスに伝えた情報によると、残りの職員はEPA内の別の部署に配属され、「監視を強化し、政権の優先事項に合わせる」という。連邦当局者によると、保健福祉省は更に、疾病対策予防センターのHIV予防部門を閉鎖し、その活動の一部を別の機関に移管することを検討している。
最後に、国立衛生研究所(NIH)、疾病対策予防センター(CDC)、および食品医薬品局(FDA)は長年米国民の健康と衛生管理を促進するための臨床結果や、医療科学者の研究および専門家の意見を提供する重要な役割を果たしてきた。そして、多くの生命を救う中核的機能を維持するための資金が提供されてきたが、二期目のトランプ政権は、それらの補助金の大幅な削減も計画している。これらはすべて議会によって認可されたものであるため、特に、国際的健康衛生に貢献してきたUSAIDの大幅な解体と連邦資金凍結は、トランプ大統領就任の1ヶ月後に、複数の連邦判事がその凍結を阻止するという判決を下したが、HHS下のNIH、CDC、FDAの3つの重要な機関の活動は低迷しているようである。最悪にも、保健福祉省は裁判所の命令を無視するよう職員に圧力をかけ続けており、その命令に抵抗した職員は解雇するか辞職に追い込まれていると報告されている。トランプ政権はほぼ全ての省、局、部門の人員削減を行い、現在教育省も含めて幾つかの部門を廃止する計画を進めているが、唯一拡大する部門は商務省でイーロン・マスクのスペースXのスターリンク衛星インターネット・サービスはバイデン政権時代にはほとんど利用されていなかった連邦政府の数百億ドルの地方ブロードバンドが大幅に推進されるという。トランプの顧問となった億万長者は、倫理違反による利益相反で益々裕福になると言う。マスクに対する超党派の一般国民による怒りがエスカレートしている中で、20日に開催された「寡頭政治と戦う」合同集会では、リベラルな米国上院議員バーニー・サンダースと進歩派の米国下院議員アレクサンドリア・オカシオ・コーテツは、大統領キャンペーンのレベルである約34,000人が参加し、注目を浴びたようである。現在のトランプ政権の過激な動きを止めるための抗議活動は益々白熱している。