数百のFEMA職員が議会に宛てた前代未聞の書簡は何を示唆?

Photo credit : Center for Disaster Philanthropy

FEMA staff warn Trump officials’ actions risk a Katrina-level disaster

The Washington Post : 2025年8月25日

この記事はトランプ政権の大勢のFEMA(連邦緊急事態管理庁)職員が同庁の指導部と現職幹部の経験不足によって、緊急事態への効果的な対応能力を阻害し、ハリケーン・カトリーナ級の災害を引き起こす可能性があると主張し、署名した書簡を議員およびその他の関係者に送ったことについて説明している。

署名した約190人の大多数は匿名を利用し、フルネームで署名した人たちは36人であるという。異議申し立て書(the letter of dissent)の中で、職員らは、1月以降、国土安全保障省のクリスティ・ノーム長官、FEMAの長官代行を務めるデイビッド・リチャードソン、そして前長官のキャメロン・ハミルトンといったFEMA「の業務を管理する法的資格と権限を持たない(lack the legal qualifications and authority)指導者の下で業務を遂行してきたと主張している。異議申し立て書は、このことが緊急事態やその他の業務、特に国家安全保障業務を効果的に管理する能力を蝕み阻害している(has eroded and hindered)と述べている。

米国史上最悪の災害の一である(one of the worst disasters in the nation’s history)ハリケーン・カトリーナは、地方自治体、州政府、連邦政府の失策も一因である。そのために、議会はFEMAの権限と責任を強化する(to give FEMA more power and responsibility)ポスト・カトリーナ緊急改革法を可決した。この法律により、FEMAは地域社会の災害への備えを強化し、災害からの復興を支援することが可能となった。しかし、この書簡は、トランプ政権が上院で承認され資格を有する緊急事態管理者を指揮官に据えず(by not having a Senate-confirmed and qualified emergency manger at the helm)、災害軽減、災害復旧、訓練、地域プログラムを大幅に削減し、新たな経費制限政策により職員の意思決定能力を阻害することで(by thwarting officials’ ability to make decisions)、ハリケーン・カトリーナ以前の時代に逆戻りしようとしていると警告している。

この書簡は、連邦議員らに対し、FEMAを国土安全保障省の干渉から守り、FEMA職員を「政治的動機による解雇(politically motivated firings)」から守り、監視を強化し(conduct more oversight)、最終的に(ultimately)FEMAを国土安全保障省から分離して、行政部門内の独立した閣僚級機関(an independent cabinet-level agency)として設立することを要求している。「我々が共有する国家への献身(our shared commitment to our country)、我々の就任宣誓(our oaths of office)、そして災害前、災害中、災害後に人々を支援するという使命は、議会とアメリカ国民に対し、現政権の決定がもたらす連鎖的な影響(the cascading effects)について警告せざるを得ない(compel us to warn)」と職員らは記し、「我々が今後も合法的に個々の就任宣誓を守り、我々の使命に従い、国家に奉仕し続けることができるように」彼らは警鐘を鳴らしている(they are sounding the alarm)と書いた。

連邦政府の調査は、カトリーナ発生時、国土安全保障省長官が「連邦政府各省庁の多様な活動を調整するのに苦労(had difficulty coordinating the disparate activities)し、被災地の状況だけでなく、連邦政府、州政府、地方自治体による継続的な対応活動についても、リアルタイムで正確な状況把握(accurate situational awareness)が欠如していた」と指摘した。7月にテキサス州で発生した致命的な洪水でも、ノーム長官は予算制限(budget restrictions)をした後に、対応チームは迅速に行動できなかった(teams could not move as quickly)ため、幾つかの同様の問題が発生(some of those same issues played out)した。8月24日の夕方、36人はフルネームで署名し、約150人は匿名で署名した職員たちは書簡の中で、今回の災害は「現政権が進めてきたプロセスと意思決定の非効率性、非効果性、そして危険性を証明した」と述べた。

ちょうど20年前の2005年8月23日にルイジアナ州南東部に上陸したハリケーン・カトリーナは極めて強力で壊滅的な歴史上最大の被害をもたらした。ニューオーリンズとその周辺地域では、このハリケーンで約1,400人が死亡し、推定1,250億ドルの損害をもたらした。大西洋流域で発生した熱帯低気圧の中では、カトリーナはハリケーン・ハービーと並んで最も被害額の大きい台風であった。アメリカ合衆国本土に上陸した大西洋ハリケーンの中で4番目に強いハリケーンでもあったと言われている。ニューオーリンズの80%と近隣の広い地域が洪水によって浸水した。強制避難命令にもかかわらず、ニューオーリンズ市内には約10万人から15万人が残ったと推定されている。当時の大統領ジョージW・ブッシュは、対応が遅れたことや、ハリケーン後の視察をヘリコプターの空上から行い、被災地の人々に直接会って、慰めの言葉を伝えることはなかったとして、ブッシュ政権の初期対応の遅さと冷淡さに対して激しく批判されたと言われている。空上視察は、地元の人々を疎遠したというイメジーを与えた。その後、ブッシュは、再度被災地に戻り被害者に会ったが、彼に対する公的イメージへのダメージは既に悪くなっていた。それは、後任の大統領にとって教訓となり、バラク・オバマ大統領は、被災地訪問、復興作業など迅速な行動を取ることに努力したとされている。

現在FEMAを巡る環境は20年前とは大幅に異なることを示唆している。たとえば、トランプ政権はFEMAを廃止するという計画を発表した。トランプ大統領は6月中旬に、大統領執務室でのスピーチで、FEMAを2025年の12月までに廃止し、連邦政府は州に提供する復興資金を減少するので、災害に対する準備や復興活動は州が責任を追うべきであると述べた。しかし、その廃止計画は、一部共和党州も反対しているため、まだ廃止されておらず、7月4日に発生したテキサス州での洪水でFEMAは救済活動を支援したと報告された。つまり、アメリカ人は、ハリケーン、山火事、竜巻、洪水などの災害で家を失った場合、個人的に解決するべきであり、今後は連邦政府の資金に依存することはできないと示唆した。しかし、気候変動の影響によりこれらの災害の頻度と規模が拡大し、損害のコストも大幅に増加していると言われている。これは20年前とは大きく異なり、益々FEMAの存在が重要になっている中で、連邦政府の援助資金が削減または廃止された場合、州政府は、そのようなコスト増に対処できない可能性が高くなるため、書簡を送ったFEMAの職員らは、想像に絶する葛藤に直面し、法的にFEMAを解体できるのは議会だけであることから、手遅れになる前に議会に助けを求めたことを示唆している。

FEMAは、1979年にジミー・カーター大統領の大統領令により正式に設立され、2003年3月1日、FEMAは国土安全保障省(DHS)の傘下となった。約190人のFEMAの職人が表明している懸念は、DHSの長官に指名されたクリスティ・ノームも経験と知識が不足しており、災害のリアルタイムで正確な状況把握が欠如」していている状況があるという。被災地への対処については、ブッシュ政権も失策があったように、歴史はFEMAが責任の重い仕事であることを示唆している。しかし、米史上、被災地の人々に対する連邦援助を放棄または軽減することを意味する発言をした大統領は過去に存在しない。これは、過去の米国の歴史とは異なり、あまりにも非人道的であるとの誤解と非難を招くかもしれない。幸い、大統領はそれを強固に推進していないものの、その可能性があるとして、約190人のFEMA職員が、議会に書簡を送り、FEMAを国土安全保障省から引き離し、「独立した閣僚級機関」として設立するよう求めたことは前代未聞の展開である。議会共和党がこれをどのように解釈するかで、その行動は異なるが、米国上院議会はFEMAに対する監督権があるため、約190人のFEMA職員が災害に対する実行能力に歯止めがかけられているという主張を米国の安全性と気候変動対策と並行して、議会が重視するなら、何らかの方法で、書簡に記載されている深刻な要請を真剣に考慮する可能性があると推測する。

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